2013 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍融解性ウイルスを用いた扁平上皮癌に対する免疫療法
Project/Area Number |
24390453
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
由良 義明 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (00136277)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 腫瘍融解性ウイルス療法 / 変異型単純ヘルペスウイルス1型 / 扁平上皮癌 / 腫瘍免疫 / 超音波照射 |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍融解性ウイルス療法は複製可能型ウイルスを癌細胞に感染させ、細胞変性効果で腫瘍を破壊する治療法である。これまでに神経毒性がなくしかもヒト口腔扁平上皮癌 (SCC)で細胞融合を形成する変異型単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)RH2を作製し、ヒトSCCに対する抗腫瘍活性を明らかにした。初年度は近交系マウスを用い、SCCVII細胞を皮下接種して背部の両側に腫瘍を形成し、片側にRH2の投与することで、反対側腫瘍の増殖も抑制されることを明らかにした。さらに、RH2を腫瘍内に投与したマウスの脾臓リンパ球がSCCVII細胞に細胞傷害性を示すことも明らかとなった。腫瘍の微小環境下では細胞外基質によって、ウイルスの周辺細胞へ伝播が阻害される。そのため、次年度では低出力超音波による音響穿孔法(ソノポレーション)を用いて、細胞膜に一過性の小孔を形成してウイルスを積極的に取り込ませる研究を行った。ソノポレーションでは造影剤となるマイクロバブル(MB)を存在させると効果が格段に向上する。SAS細胞にRH2を接種し、周波数1 MHz、出力1W/cm2、duty cycle 20%、10秒間の超音波照射を行い、細胞内に侵入したウイルスによって形成されるプラックを算定したところ、超音波単独で対照の3.4倍、MBを加えた場合4.5倍までプラック数は増加した。RH2をMBとともに腫瘍に投与し超音波照射を行ったところ、ウイルス抗原発現細胞が増え、感染性ウイルス量も増加した。さらに、RH2による腫瘍抑制効果も向上した。したがって、超音波照射は口腔癌の腫瘍融解性ウイルス療法において抗腫瘍効果の増強のために有用と考えられた。この手法を用いると感受性の低いマウスSCCVII細胞の系でも感染効率の向上が期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
口腔癌に対する腫瘍融解性ウイルス治療の用いる神経毒性を欠失し細胞融合能を持つRH2の抗腫瘍効果につき、近交系マウスの扁平上皮癌の腫瘍免疫の実験系を確立した。次年度では、ヒト口腔癌モデルで、低出力超音波照射を併用することで感染効率を向上させることを明らかにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
近年、癌ペプチドワクチンを用いた臨床研究が報告されているが、その効果は限定的である。口腔癌病巣にRH2を投与することで直接的な腫瘍の融解と腫瘍免疫の増強を図りたいと考える。次年度は最終年にあたるが、免疫細胞の同定に加えて新たな視点で検討を加えたい。これは、最近、化学療法でimmunogenic cell death(ICD)の概念が提示され、ウイルス療法にも当てはまる例が報告されているからである。口腔癌に対する腫瘍融解性ウイルス療法の腫瘍免疫の活性化にこのICDが関与することを明らかにしたい。
|
Causes of Carryover |
HSV-1RH2を投与した腫瘍でウイルス増殖に伴って生じる細胞変性ならびに感染腫瘍細胞で発現するウイルス抗原を免疫組織化学染色した組織像を解析し、記録するために解像度の高い正立顕微鏡と撮影装置が必要となった。発注したが、機器の調達上時間を要することが分かり、購入費には補助金を繰り越して充てることとなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した補助金を用いて、正立顕微鏡と撮影装置を予定した年度当初に購入し設置することができた。
|
Research Products
(10 results)