2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24401027
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 長門 國學院大學, 文学部, 教授 (90306902)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 古代史 / 日本史 / 東アジア / 比較・交流史 / 仏教 |
Research Abstract |
本研究は、東アジア諸国との交流のなかで、7~10世紀の古代日本が仏教を受容する過程を総合的に検討するものであるが、平成24年度は12月23日から30日にかけて、大韓民国に所在する古代禅宗寺院の調査を実施した。調査では、李鎔賢氏(研究協力者・国立春川博物館)の協力を得て、9~10世紀前半に建てられた禅宗寺院の代表とされる「九山禅門」のうち、(1)鳳林山鳳林寺址(昌原)、(2)桐裏山泰安寺(谷城)、(3)迦智山宝林寺(長興)、(4)実相山実相寺(南原)、(5)聖住山聖住寺址(保寧)の5ヵ所において、諸寺院の縁起や開祖について刻した碑文の実測、碑石・碑字の状態確認と拓本や既存する釈文との比較検討をおこなった。また関連する石碑・石塔を所蔵する韓国中央国立博物館(ソウル)、三神山双渓寺(河東)でも同様の調査をおこない、通度寺、弥勒寺、王興寺、陵山里寺、無量寺、法興寺などでも景観調査を実施した。具体的には、真鏡大師宝月凌空碑(鳳林寺)・真鑑禅師大空塔碑(双渓寺)・広慈大師碑・寂忍禅師碑(泰安寺)・普照禅師霊塔碑(宝林寺)・秀徹和尚楞伽宝月塔碑(実相寺)・朗慧和尚碑(聖住寺)を調査し、朝鮮古代における禅宗史のはじまりを明らかにするうえで必要な基礎的な情報を得ることができた。 釜山・ソウルにおいて、古代仏教史・アジア交流史を専門とする金福順(慶州東亜大学)・李永植(仁済大学)・韓圭哲(慶星大学)・趙明済(新羅大学)・金文経(元崇実大学)・李基東(元東国大学)の諸氏と面会し、近年考古学調査によって確認された寺院址に関する最新の研究情報の提供をうけ、9世紀前後の禅宗の展開に関する知見の交換を行った。調査を通じて、達磨に始まる中国の禅宗の系脈意識と新羅における師弟関係を軸にした系脈意識の双方を保持しながら社会・門弟に受け入れられていた事実を確認することができたことは、今後、同時期に廃滅する大小の禅宗諸寺院、および僧侶の動向を信仰・思想状況を含めて、禅宗浸透の国際的・社会的背景を分析していくためにも有益な成果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、本研究の母体である「入唐求法巡礼行記研究会」としてははじめて、9~10世紀に唐から禅宗を導入した新羅仏教の寺院(跡)を踏査し、その導入の経緯を金石文の調査などによって実地に検討することができた。また『入唐求法巡礼行記』の校訂作業も進んでおり、その公開に向けて検討会を開催した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25・26年度については、平成13年度から続けてきた入唐僧円仁の巡礼行程をたどる現地調査を実施し、あわせて『入唐求法巡礼行記』の校訂作業をおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品費・消耗品費として図書や地図、HDDやメモリー類等を購入する。旅費として中国での現地調査にかかる経費を、謝金として現地調査の事前作業、および『入唐求法巡礼行記』の校訂作業にかかる経費を、その他としてホームページの維持・管理にかかる経費をそれぞれ計上する。
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Research Products
(4 results)