2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24401027
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 長門 國學院大學, 文学部, 教授 (90306902)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 古代史 / 日本史 / 東アジア / 比較・交流史 / 仏教 |
Research Abstract |
本研究は、東アジア諸国との交流のなかで、7~10世紀の古代日本が仏教を受容する過程を総合的に検討するものであるが、平成25年度は12月22日から29日にかけて、中国山西省南部における入唐僧円仁の行程調査を実施した。調査では呂梁市孝義市の王屯村から、運城市永済市の蒲津渡址までの行程を確認した。 本年度の調査は、現地での聞き込みや古地図の分析により、円仁がたどった交通路や村落地名の復元を試みるものであった。その結果、現在は消失してしまった村跡や旧道を確認し、特に黄河沿岸の地域では広大な河岸段丘地帯を調査し、黄河の浸食作用で陥没してしまった地点に、円仁らの行程ルートを復元することができた。また、臨汾市襄汾県汾城鎮、運城市万栄県宝井村・新絳県泉掌村においては、かつての県城跡を確認することができた。なかでも汾城鎮の太平県故城では、城壁や城門、城廓に附属する鼓楼や塔、廟堂とともに、金代の橋や元代の紀年銘を有する撞鐘、「南関」「北関」などの地名が遺存しており、県城の形態をきわめて具体的に復元することが可能であることがわかった。 今回の調査でも、史跡・遺跡群が開発や老朽化によって急速に消滅・破壊されている現実を再確認することができた。これらの文化財は、ここ数年の内に完全に姿を消してしまう可能性があるため、今回の調査でそれらを調査・記録できたことは、円仁など入唐僧の行程を復元するとともに、古代東アジア地域における仏教を介した交流史を検討するうえで、貴重な資料となるだろう。本研究課題の重要性および緊急性が、改めて確認される所以である。 現地調査終了後には、陝西省西安市の西北大学仏教研究所において、同研究所長・李利安氏らとともに「中日仏教交往学術講談会」を開催した。この交流会を通して、現地研究者の関心の所在や研究状況の確認をおこなうことができ、今後の調査・研究に資する知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画では、臨汾~長安までの中国現地調査予定のうち、2/3ほどの河中節度府まで完了している。また『入唐求法巡礼行記』の校訂作業も順調に進行しており、ほぼ1ヶ月に1度のペースで定期的に検討会を実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、前年度に引き続き、入唐僧円仁の巡礼行程の現地調査を実施する。あわせて年度末にシンポジウムを開催し、3年間の調査・研究活動により蓄積された成果を公開する。並行して『入唐求法巡礼行記』の校訂作業をおこない、ホームページ上での公開を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費への支出がなかったこと、最終年度である次年度にシンポジウムを計画しているため、結果的に支出を抑えるようになったことなどが要因である。 シンポジウムには中国・韓国からも研究者を招聘する予定なので、その交通費および宿泊費に使用したい。
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