2014 Fiscal Year Annual Research Report
移民のメディア生産とメディア利用に関する国際比較 - 在外ブラジル人と在伯日系人
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24402033
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
イシ アンジェロ 武蔵大学, 社会学部, 教授 (20386353)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白水 繁彦 駒澤大学, グローバル・メディア・スタディーズ学部, 教授 (80095942)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ディアスポラ / エスニックメディア / 移民 / 在外ブラジル人 / メディア・サポーター / 架橋アクター / コミュニティリーダー / メディア・イベント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は各国のブラジル系移民によるメディアの生産と利用の国際比較を主目的としているが、本年度は研究のまとめに向けた補足調査と研究の成果発表を並行して進めた。まず成果発表については、イシが人選や企画に関わった在日ブラジル人の「架橋アクター」によるメディア論に関するグループインタビューを元に、白水が論文を執筆した。そこでは、コミュニティのリーダーがイベントの告知などの際にメディアを利用して恩恵を得ている一方で、迷惑や被害も受けていること、エスニックメディアの側は専門的な教育を受けた日本語能力の高いレポーターを配すべきことなどの諸問題が論じられた。またイシは在外ブラジル系メディアの国際比較に関する試論を国際ワークショップで発表した。たとえばデジタル時代ながらも各国で紙媒体が奮闘しているという共通点など、本研究で得られた知見を披露した。 補足調査としては、イシは世界最大規模の「メディア・イベント」であり、エスニシティとの関連も深いW杯のブラジル大会をエスニック・メディアがどのように報じたか、そして現地の日系コミュニティリーダーが同イベントをめぐっていかに日本とブラジルを「架橋」したかを調査した。現地での聞き取り調査をとおして、「日本」を世界に売り出すという趣旨でサンパウロで開業したnakata net cafeの広報戦略や、クイアバで日本のサッカー協会へのサポートを行ったクイアバ日系人協会の貢献について知見を得た。サンパウロの日系移民紙の関係者への聞き取りから、移民社会のリーダーとエスニックメディアが日本側の関係者にとって貴重な情報源として機能したことが確認できた。他方、白水はオーストラリアでブラジル映画祭の手掛け人やブラジル系メディア記者に聞き取りを行い、ブラジル人向けエスニック・メディアは紙媒体がここ数年で激減し、SNSによる情報交換が取ってかわっている現状等を把握した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、在外ブラジル系メディアの全体像は把握できた。ブラジルにおける日系メディアの動向や課題も明らかになってきた。当初の計画で掲げたとおり、メディアの送り手のみならず、限定的ながらも利用者の研究にも着手できた。コミュニティリーダーでもあるいわゆる「架橋エージェント」のグループインタビューの分析をとおして、メディアの「評論」に止まらず、その改善に向けた「提言」も抽出できた。 一方、これまでの調査では、仮説どおり、あるいは予想以上に、各国・各地域における媒体の状況がめまぐるしく変動している事実が浮き彫りになった。よって、最終的なまとめに向けて、とりわけ創刊・廃刊の実態を含めた最新の動向をさらに把握・精査する必要性を痛感している。 以上のとおり、調査データは予想以上に収集でき、その整理と分析はさらに時間を要するという状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、在外ブラジル系メディアおよびブラジルの日系メディアについて、各媒体の最新状況を把握するための補足調査、資料の整理(紙媒体の表紙のデジタル化等)に取り組む。他方、本研究の成果発表(国際学会・シンポジウム等での発表、論文や報告書等)を複数行う。その際、学会のみならず、これまでの調査協力者に対する還元にも心がける。
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Causes of Carryover |
本研究の最終的なまとめに向けて、各国・各地域における在外ブラジル系移民によるメディア(とりわけ紙媒体)の創刊・廃刊を含めた最新の動向を把握・精査する必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
各媒体の創刊・廃刊の最新状況とその背景を把握するための補足調査、資料の整理(一部の紙媒体の表紙のデジタル化等)、本研究の成果発表(国際学会での発表等)を行うために使用。
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Research Products
(10 results)