2013 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯氷河とその流出水が形成する水質・生態環境とそれに対する気候変動の影響評価
Project/Area Number |
24404015
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
梅田 信 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10447138)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 和典 日本大学, 工学部, 准教授 (30292519)
中川 書子 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70360899)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 気候変動 / 水循環 |
Research Abstract |
「氷河は気候メーター」と言われるように,氷河およびそれを取り巻く環境は,気候変動の影響を強く受けやすい.特に本研究の対象地域(ボリビア国ラパス)には,熱帯氷河という地理的特徴,および半乾燥地域で水資源の多くを氷河の融解水に依存しているという水工学的な特徴がある.そのような背景を受け,氷河流域からの流出水の水質形成に対する温暖化の影響評価を,本研究の主要な目的とする.本年度は,対象流域内の湿地生態系と水環境に関する検討を中心に検討を進めた。氷河の下流部で特徴的に分布していると考えられる湿地内においては,植生(主として河道内の沈水植物)の現存量や成分分析を行い,渓流底質や水質との関連について検討した。また氷河直下流から下流に存在する人工湖までの約10kmの範囲における水質(主要イオンの濃度および水温)の形成過程についても解析を行った。雪氷生態系については,氷河最下流部で得られた水試料からのやや間接的な解析により,氷河における有機物生産に関して考察を行った。本研究対象地では,雨季と乾季という二つの季節で大きく変化があり,雨季に涵養と流出が進むという熱帯氷河の特徴がある。それに伴って,水文条件および水環境条件も季節変動が生じていることが判明した。また河道内および人工湖(トゥニ貯水池)における水温形成について,観測データにもとづいてモデリングも併用し解析を行ったところ,低緯度,高標高という地理的条件から短波放射の影響が,水温形成に対して大きく効いていることが分かった。水温は,温暖化により最も直接的に変動が生じうる水環境要素であり,水質および生態系に対しても最も基盤的な環境条件であると言えるため,詳細な水温形成過程の把握ができたことは,気候変動の影響評価に対して有用な成果が得られたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,対象流域内において湿地生態系の分析検討および河川内の水温,水質形成過程関して十分な検討を実施することができ,成果も得られつつある。雪氷生態系に関しては,十分にデータが得られていない点もあるが,検討を進めているところである。また環境モデリングについては,概略的な段階ではあるが,構築を進めている。このような点から,計画に照らし合わせておおむね順調な進捗であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ボリビア当地の研究協力者の協力も得ながら現地データ,試料の取得を行っているが,現場条件が過酷であることも影響し,十全なものを得ることが難しい研究対象である。そこで,引き続き現地データの収集を継続的に努力をすることに加え,これまでに得られている情報を十分に解析して,研究を遂行することも重要であると考えている。流域内の現地調査データの解析より詳細に実施し,環境モデルの構築および将来予測手法の検討へと展開していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に遂行したことに伴い生じた未使用額であると考えている。 次年度は,本研究の最終年であることから,研究分担者との打合せ旅費などに使用し,研究のさらなる進展ととりまとめに向けて活用する計画を考えている。
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Research Products
(7 results)