Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小崎 隆治 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (00144345)
伊ケ崎 健大 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (70582021)
川本 純 京都大学, 化学研究科, 助教 (90511238)
三原 久明 立命館大学, 生命科学部, 准教授 (30324693)
角野 貴信 鳥取環境大学, 環境学部, 講師 (50511234)
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Research Abstract |
中国内蒙古自治区ホロンバイル草原土壌における炭素・窒素循環機構の解明を目的とし,2012年夏に当該地域を調査し,草原土壌および退化土壌試料を採取した。今回採取された低温適応性の土壌細菌は,いずれもPseudomonas属細菌に属することがわかった。また,リボソームタンパク質生産パターンに基づく系統解析から,今回単離された低温菌群は,退化土壌から単離された菌株のみで構成されるクラスター,80%程度を草原土壌に由来する低温菌群で構成されるクラスター,退化土壌由来と草原土壌由来の低温菌群が約50%ずつ含む3つのクラスターに大別されることがわかった。これらの結果は,草原土壌と退化土壌では微生物相が異なることを示しており,それぞれに特徴的に生産されるタンパク質,およびそれらをコードする遺伝子を同定することで,草原土壌の診断,および退化度合いを評価する指標となる可能性を示唆している。 また,ホロンバイル草原において牧畜や観光活動が土壌呼吸量に与える影響を評価するために,土壌呼吸量を密閉チャンバー法にて測定した。土壌呼吸量は対照区>採草区>放牧区となり,根呼吸を含む土壌呼吸量では採草区で対照区の92%,放牧区で対照区の69%となった。根呼吸を含まない土壌呼吸量でも採草区で対照区の96%,放牧区で対照区の66%と,似た傾向を示した。以上より,採草利用ではほとんど土壌呼吸量に影響がみられないものの,放牧利用では土壌呼吸量が顕著に低下することが分かった。観光地A(利用圧:高)では利用区で非利用区に比べて土壌呼吸量が低くなったものの,観光地B(利用圧:低)ではその傾向はみられなかった。これらのことから,利用圧の低い観光利用は土壌呼吸量に大きく影響しないことが明らかとなった。今後は,一年間に土壌へ投入される地上部および地下部のバイオマス量の解析を進め,牧畜および観光活動が草原生態系での炭素収支に与える影響を評価する。
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