2012 Fiscal Year Annual Research Report
アジア地域における飲用井戸水汚染の現状把握と発癌予防対策
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24406002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加藤 昌志 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10281073)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 湖州恵 中部大学, 生命健康科学部, 准教授 (80345884)
山ノ下 理 中部大学, 生命健康科学部, 講師 (50424924)
後藤 友二 東邦大学, 理学部, 講師 (70362522)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 元素 / 発癌毒性 / 飲用水 / 井戸水 / 浄化剤 |
Research Abstract |
【背景・目的】地球温暖化により干ばつ地域の拡大を介した水の量的不均衡を是正し、安定的な飲用水の「量」を確保のために、井戸水(地下水)の飲用利用の重要性がますます重要になってくる。しかし、飲用井戸水の汚染状況すら十分に把握されていない地域も少なくない。一方、重金属をはじめとする無機物質は強い毒性を持ち、癌等のヒトの生命に関わる重大疾患を誘発するので、最優先で浄化が検討されるべきである。本研究では、飲用井戸水の無機物質汚染に焦点を当て、海外フィールドワークにより、無機物質に汚染された飲用井戸水の現状を把握し、飲用水レベルの無機物質汚染を勘案して発癌毒性を評価し、井戸水から浄化すべき無機物質を特定し、発癌性無機物質を除去可能な浄化剤を開発し、現地の井戸水から有害無機物質を除去できることを証明する、ことを目的として研究を遂行する。 1. 井戸水に含まれる有害無機物質の現状把握:ベトナム・バングラデシュ等のアジア地域において、海外フィールドワークを行い、井戸水およびヒト検体(尿・毛髪・爪等)を採取した。 2.無機物質の発癌毒性評価:アジア地域の井戸水に含まれるレベルの低濃度ヒ素・マンガン・バリウム等の無機物質を単独でマウスに経口投与し、各組織に蓄積する濃度をICP-MSにて定量する研究を開始した。また、無機物質の発癌以外の毒性(神経毒性等)も一部検討した。さらに、無機物質が、皮膚癌における細胞増殖・細胞浸潤/転移への影響を解析し、一部の成果を発表した。加えて、従来、低濃度では発癌性が無いと考えられていた無機物質が発癌毒性を持つ可能性を発見した。 3.浄化剤の開発と海外フィールドワークによる浄化の実践:飲用井戸水に含まれるレベルの無機物質を標的とし、浄化剤の開発を開始し、一部の成果を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた研究は、ほぼ予定通りに研究が推移している。さらに、従来、低濃度では発癌性がほとんど無いと考えられていた無機物質が発癌毒性を持つ可能性を発見した。本研究では、当初予定していた研究を、計画通りに進めると同時に、想定外の新規知見に関する解析を開始しているので、おおむね順調と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度の研究成果を踏まえ、下記のような計画で、飲用井戸水の無機物質汚染に焦点を当て、無機物質に汚染された飲用井戸水の現状を把握し、飲用水に含まれるレベルの無機物質汚染における発癌毒性を評価し、井戸水から浄化すべき無機物質を特定し、発癌性無機物質を除去可能な浄化剤を開発する研究を遂行する。 A. 井戸水に含まれる無機物質の現状把握:アジア地域において採取した井戸水およびヒト検体を対象とし、ICP-MSを用いて無機物質(元素)濃度を測定する。また、ヒ素については、LC-ICP-MSにより、無機ヒ素・AB・MMA・DMA等の化学型を分析する。 B. 複数の無機物質汚染を勘案した発癌毒性評価:井戸水に含まれるレベルの複数の無機物質をマウスに経口投与し、皮膚・脳・肝臓等の組織に蓄積される濃度を定量する。同時に、発癌以外の毒性(神経毒性・皮膚毒性等)も病理組織・生理学的に調べる。また、ヒトの慢性ヒ素中毒症の症状を部分的に再現できるモデル動物を作製し、発症機構や病態を解析する。さらに、従来より発癌毒性を持つと指摘されている無機物質について、皮膚癌発症かかわる分子機構を調べるとともに、従来、低濃度では発癌性がほとんど無いと考えられていた無機物質が、発癌毒性を持つかどうかについても検討する。加えて、マウスの組織に蓄積するレベルの複数の無機物質が発癌に与える影響を試験管レベルで調べる。 C. 浄化剤の開発と海外フィールドワークによる浄化の実践:無機物質の単独汚染に対して有効な浄化剤を開発する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
低濃度では発癌毒性が低い、または、ほとんどないと考えられてきた無機物質が発癌毒性を持つ可能性がでてきた。そこで、複合曝露も勘案しつつ、元素が発癌を誘発する分子機構を解明しながら、より現地の実状に即した浄化剤の開発を推進することが、必要になった。 当初の研究計画に反し、低濃度では発癌毒性が低い、または、ほとんどないと考えられてきた無機物質が発癌毒性を持つ可能性がでてきた。この現象の真偽を見極めながら、当初の予定に沿って研究を進めるために、より多くの人材を本研究に投入する必要がある。ゆえに、次年度は、人件費として使用する研究助成金の割合を増やし、研究を推進する計画である。
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[Journal Article] Enhanced carcinogenicity by coexposure to arsenic and iron and a novel remediation system for the elements in well drinking water.2013
Author(s)
Kumasaka YM, Yamanoshita O, Shimizu S, Ohnuma S, Furuta A, Yajima I, Nizam S, Khalequzzaman M, Shekhar UH, Nakajima T, Kato M.
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Journal Title
Arch Toxicol
Volume: 87
Pages: 439-447
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Cancer-Induced Immunosuppression: IL-18-Elicited Immunoablative NK Cells.2012
Author(s)
Terme M, Ullrich E, Aymeric L, Meinhardt K, Coudert JD, Desbois M, Ghiringhelli F, Viaud S, Ryffel B, Yagita H, Chen L, Mecheri S, Kaplanski G, Prevost-Blondel A, Kato M, Schultze JL, Tartour E, Kroemer G, Degli-Esposti M, Chaput N, Zitvogel L.
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Journal Title
Cancer Res
Volume: 72
Pages: 2757-2767
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Tumor-Expressed Inducible Nitric Oxide Synthase Controls Induction of Functional Myeloid-Derived Suppressor Cells through Modulation of Vascular Endothelial Growth Factor Release.2012
Author(s)
Jayaraman P, Parikh F, Lopez-Rivera E, Hailemichael Y, Clark A, Ma G, Cannan D, Ramacher M, Kato M, Overwijk WW, Chen SH, Umansky VY, Sikora AG.
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Journal Title
J Immunol
Volume: 188
Pages: 5365-5376
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Aim of fieldwork for well drinking water2012
Author(s)
Masashi Kato
Organizer
JSPS AA Science Platform Program: The 3rd International Symposium of Environmental Health Sciences in Hanoi University of Technology, Vietnam
Place of Presentation
Hanoi University of Technology(ベトナム)
Year and Date
20120425-20120426
Invited
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