2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500030
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金田 康正 東京大学, 情報基盤センター, 教授 (90115551)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 数値計算 / 高速計算 / トランスレーター / 数値計算ライブラリー / コンパイラー / 4培長演算 / 大規模計算 / 並列計算 |
Research Abstract |
数値計算法また並列計算機の性能向上は大規模科学技術計算の発展における大きな原動力となっている。特に数値計算分野における浮動小数点数演算は計算機上で有限桁に丸められるため、よほど特殊な演算で無い限り演算ごとに誤差が発生することになる。 数値計算における有効桁は現在広く用いられている倍精度数の場合10進で約16桁である。ここで演算ごとに誤差が発生していると考えると、大規模な計算を長時間実施した場合は最終結果にある程度の誤差が含まれることは容易に想像できる。その計算誤差がどれくらい含まれるかは問題及び計算手法依存であり、理論的に求まる値と大きくかけ離れていることがしばしば生じる。 その結果、計算規模が増すに従って多くの計算量、即ち長時間に渡る計算時間を必要とし、さらに計算誤差も増大することになる。実際浮動小数点数における数値計算法の中には計算規模が増すに従って計算誤差が増大し、より多くの計算を必要としてしまうものもある。例えば線形方程式 Ax=b の解法であり、クリロフ部分空間を用いるCG法などは誤差の影響を大きく受ける。 加えて並列計算機の性能向上は衰えを知らず毎年演算性能は上昇する一方である。その為に、倍精度数よりも有効桁数が多い4倍精度数、あるいはそれ以上の精度を有する高精度演算の必要性が高まってきており、更なる演算性能向上が必要である。本研究の概略は、まずは倍精度演算を越える「4倍精度数演算のさらなる高速化と実用化」、そして「フリーソフトウェアとして成果の公開」を目的としている。 平成24年度は上記目標に合致する、4倍精度演算を簡便に記述できるとともに高度数値計算システム開発に適した新しい計算機言語の設計をほぼ終了し、実際のトランスレーターの作成を開始した。またこれまで使用してきている老朽化した成果公開用サーバー関連の設備の更新を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4培長演算の性能向上はこれまでの研究でほぼ完了していることがその後判明した。 この研究成果が実際に広く利用されるようになるには、実行時サブルーチンを陽的に呼び出すのでは無く、プログラム構文を解釈して自動でサブルーチンを呼び出す様な機能を持つコンパイラーあるいはトランスレーターが望ましい。 この観点から、数値計算に適した新しい計算機言語を設計することを研究目標に追加し、平成24年度はその観点から深く検討を行い、ほぼ終了した。 平成25年度はそのような計算機言語をFortran言語、あるいはC言語に変換するトランスレーターを作成する事にする。 この観点から、申請当初の目標からは目標がすこしずれることになったが、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
数値計算に適した新しい計算機言語のトランスレーターの完成に重点をおいた研究として当該研究を実施する。なお計画するトランスレーターは、4倍精度数変数として宣言された変数間の加減乗除算をランタイムルーチンの呼び出しで計算を実現することなく、倍精度演算を基礎にもつ基本演算の組み合わせで実現する機能を持つように設計する予定としている。(この(マクロ)展開機能により、ランタイムルーチン呼び出しよりも高速の演算が実現出来る見込みである。) なお本機能の拡張として、8倍精度あるいはそれ以上の精度を指定した変数に対する加減乗除算について、倍精度演算を基本機能として展開する機能を付加する事も考慮予定であるが、トランスレーターのデバッグがどれほど順調に推移するかという事に大きく依存する事をあらかじめ指摘しておく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度以降に作成予定の新しい計算機言語のトランスレーターの効果を実測するために、研究費を (a)学会また研究者からの情報収集の為の旅費、 (b)デスクトップパソコンに搭載可能な、(1)新旧のグラフィックボードの購入(動作すれば良いので中古部品でも可)、(2)それらグラフィックボードを搭載して計測を行うデスクトップ型パソコン(計算機部品から組み上げ)、(3)研究初年度購入したノートパソコンや、他の老朽化した他の各種サーバー用のハードディスク(部品)、能力向上、補修の為のメモリー、CPU等のパソコン部品、(4)老朽化したディスプレー、等計算機関連部品等の物品の購入、 (c)資料整理の為の、印刷用紙、インクジェット用インク、トナー、スキャナー、ソフトウェア等の購入、 他に充てる。 (d)なお状況によっては研究室学生に資料整理や計算機実験補助を依頼する状況になれば、人件費や謝金として支出する。
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