2013 Fiscal Year Research-status Report
伝統芸能の習得・継承・解明を目的とした能の舞の動作合成技術の研究
Project/Area Number |
24500238
|
Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
尾下 真樹 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (20363400)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山中 玲子 法政大学, 付置研究所, 教授 (60240058)
岩月 正見 法政大学, デザイン工学部, 教授 (50213301)
|
Keywords | コンピュータアニメーション / 動作合成 / 能楽 / 伝統芸能 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度までの研究によって明らかになった動作合成手法の課題を解決するための改良を行った。従来手法では、動作ブレンドのタイミングを元の動作データ中の足の制約条件だけにもとづいて決定していたが、その方法では、特に上半身の動作で不要な動きや急激な動きが生じるなど、不自然な合成動作が生成される場合があった。そこで、上半身・下半身のそれぞれの動作ブレンド区間に対して、最適な区間や重み関数を求めて動作ブレンドを適用するように、動作合成手法の改良を行った。本改良により、より自然な合成動作を生成できるようになった。 また、改良した動作合成手法を能の所作の動作データ(モーションキャプチャデータ)に適用し、複数の所作の動作データを合成して生成した舞の合成動作(複数の所作を連続して行う動作)と、実際の演技者が複数の所作を連続して行ったときの動作データとの比較・評価を行った。具体的には、まずは主観的な比較・評価として、両者の動作を見比べて違いを見出す検証を行った。その結果、基本的には本動作合成手法によって所作と所作の間のつなぎの動作もよく再現できるものの、能特有の動きの特徴として、実際の演技者の動作では所作と所作の間で体の向きを変えるような元の所作にはない動きが生じている、といった機械的な動作合成だけでは再現できない場合があることを確認できた。このような能の特徴を実証できたことには意義があり、今後の比較・評価による未知の特徴の解明も期待される。 本年度中の研究発表として、主に昨年度に行った研究成果をまとめた論文を、国際論文誌で発表した。また、本年度の研究成果を、国際論文誌・国際会議や国内学会へ投稿した。(投稿論文は採択され、次年度中に研究発表予定である。)また、上記の研究成果に加えて、本研究課題への応用を想定した、手の動きを使った人体動作制御・変形技術についても研究を行い、研究発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目的は、改良した動作合成手法により合成動作と実際の演技者の動きを比較・解析することで、機械的に動作合成を行うだけでは再現することのできない、能の演技の本質となる動きの特徴を解明することである。本年度の研究により、動作合成手法の改良を行い、合成動作と実際の演技者の動作との比較・解析が可能になったことで、最終目的に向かって着実に進んでいると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度であるため、当初の計画通り、合成動作と実際の演技者の動きを比較・解析することで、機械的に動作合成を行うだけでは再現することのできない、能の演技の本質となる動きの特徴を解明する予定である。 具体的には、本年度に行った主観的な評価に加えて、客観的な評価として、例えば重心軌道・速度変化・関節負荷など、動作データを数値的に解析・比較することで、合成動作と実際の演技者の動作の違いを定量的に明らかにしていく予定である。 また、本研究により明らかになった能の動作の特徴が、能楽の研究の観点から見てどのような新しい知見となりうるのか、研究分担者と協力をしながら、研究を進めていく予定である。 さらに、昨年度より開発している能の舞のアニメーション制作システムの改良として、能の舞において必要とされる歩行動作を実現するために、あらかじめ用意しておいた動作データを用いて、舞台上の任意の目標位置が指定されたときに自然な歩行動作を生成する手法を開発し、システムに組み込む予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に行った動作合成手法改良の研究成果については、本年度中の発表が間に合わず来年度の発表となったため、研究費の繰り越しを行い、来年度の発表の旅費・参加費に使用することとした。 当初の計画通り、研究打ち合わせや成果発表のための旅費、研究用パソコン等の物品購入、能の専門家やプロの演技者に協力を依頼する場合の謝礼、などに使用する計画である。 次年度は最終年度であるため、これまでの研究成果を国内外の複数の学会や、コンピュータグラフィックス分野の学会だけでなく能楽分野の学会でも研究成果を発表する予定である。そのための旅費・参加費に、研究費を使用する計画である。
|
Research Products
(4 results)