2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500255
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
北岡 哲子 東京工業大学, 学内共同利用施設等, 助教 (30447536)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 癒し工学 / 癒し刺激 / 表情認識 / 脳計測 / 感情抽出 / 感性スペクトル解析法 |
Research Abstract |
本研究は癒し工学の確立をめざし、来るべく人の心を充足させる「癒し」の本格的に生成・応用に備えるため、「癒し」のコンセプトを明確化し代表者の仮説の確認を科学的に進め、「癒し」の定量的測定法を確立することを目的としている。代表者はこれまで、主に表情と心と脳内活動の関係を中心に、被験者の癒しの構造を分析するシステムを構築し、これらの結果を用いて癒しの3次元モデルの仮説を考案してきた。 そこで、24年度は、癒し刺激に対する脳内活動を計測するアプローチとして、癒し刺激には聴覚刺激、脳波計を用いて脳内活動の計測を行い、相関マトリクスを求めることにより癒し刺激と心(主観評価)との相関関係について精度向上を図った。 また同様に、癒し刺激として視覚刺激を呈示し、視覚刺激に対する被験者の評価との相関を求め、T法を用いて解析し、被験者の癒し構造を予測するシステムの精度向上を図った。 高齢化がすすんでいる日本において認知症患者数が激増していることが社会的問題になっているが、医療機関の協力のもと、サンプルデータ数の多い認知症患者の表情や脳波、200余例を利用刷ることとし、表情や脳波の分析手法についての検証を行った。 ある刺激を呈示した際の患者の表情から疾病の有無を予測するシステム構築を試み、癒し刺激に対しても応用できることを明らかにした。同時に、認知症の患者の脳波を計測し新たな解析法により脳波から得た4感情と認知症という疾病の重症度との相関を求めることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで研究を次の[研究1]と[研究2]とに分けて行った。 [研究1:癒し計測システムの精度向上に関する研究] 癒し聴覚刺激に対する脳波計測を行い、相関マトリクスを求めることにより、音刺激と被験者の主観評価との相関関係求め、癒し分析システムを構築した。そしてそのシステムによる各人の癒し構造の予測精度向上を図った。<発表論文:脳波パラメタによる癒しの客観指標の構築>同様に、癒し視覚刺激とその癒し刺激に対する被験者の主観評価との相関を求め、T法を用い解析し、各被験者の癒し構造を予測するシステムの精度向上を図った。<発表論文:T法による「癒し度」の定量化> [研究2:「癒し刺激」と「被験者自身の表情」との関係の把握に関する画像解析研究] 平成24年度は、医療機関の協力のもと表情のサンプルデータ数の多い、認知症患者の表情200余例を利用することとし、病気の重症度と表情との相関を求める試みを行い、癒し刺激に対しても応用できることを明らかにした。また、患者の脳波計測データを解析し、患者の感情と疾病の重症度との関係を明らかにする試みを行った。この結果を用いて、患者が癒される刺激を特定すべく25年度の課題に応用することが可能である。<発表論文:(1)認知症患者の表情に現れる特徴の抽出法に関する研究(2)認知症患者の脳波計測による感情抽出とMMSEとの相関に関する研究(3)臨床的顔表情評価法C-Face(Clinical Facial Expression Scale)の認知症患者における検証> 以上により、当初計画とは異なっている部分は多少あるが、研究全体の最終目標にずれはなく、概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、ほぼ計画通りの研究成果を挙げられたが、癒し刺激に統一した脳波・表情についての相関関係を求める段階までには至らなかった。統計的に優位な結果を得るためには、脳波や表情の十分なデータが必要であるが、癒し刺激に関しては、それらを多数採集した実績が過去になく、本研究の初年度では研究連携先の病院にて採集が進められていた認知症患者のデータを利用することとした。その結果、癒し刺激に対する反応の解析は、対象者が健常である場合のみならず、疾病を伴う患者にも重要であることが認識できた。そこで、平成25年度は、癒し刺激に対する脳波や表情についてより精度の高い計測と詳細な分析を行い、癒し刺激と相関のある脳波・表情について定量的な関係を求めることに取り組みたい。具体的には、被験者を健常者だけに限定せずに視野を広げ、疾病に苦しむ患者や厳しい現代社会に適応できず悩んでいる人にも対象を広げて、データ取得を試みることとする。脳波計測に関しては、既に確立された方法があるので、初年度の成果を踏まえて解析方法に工夫を加え研究推進していく。 表情の計測に関しては、その方法未だ確立されていないため、初年度は必ずしも十分な成果を得るには至らなかったが、研究遂行の課題をいくつか明確化することができた。そこで、今年度はその課題をクリアし、飛躍的推進を図りたい。 具体的には、表情の撮影を静止画ではなく動画とすること、併せて照明方法や被験者のより自然な表情を撮るためのより繊細な撮影条件の検討を予定している。また撮影された画像から表情を形成するアクション・ユニットの解読を専門家の指導・助言のもと行ない、癒し刺激との相関を解析することを予定している。同時に健常者に対しても刺激による表情の変化を撮影しデータの蓄積を行う。また、業務用自動車のドライバーの外部刺激に対する表情変化の解析にも応用することを試みたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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