2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500255
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
北岡 哲子 東京工業大学, 男女共同参画推進センター, 助教 (30447536)
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Keywords | 癒し工学 / 癒し刺激 / 表情認識 / 脳計測 / 感情抽出 / fMRI |
Research Abstract |
本研究は「癒し工学の確立」を目指し、人の心を充足させる「癒し」の本格的な生成と心の病を持つ人の治療への応用に備えるために、「癒し」のコンセプトの明確化と定量的測定技術を確立することを目的としている。そこで、初年度は被験者に視覚ならびに聴覚による癒し刺激を与え、それらの刺激が脳に与える影響を脳波の計測により定量的に明らかにすることを試みた。これに続いて本年度は、視覚による癒し刺激を与えたときの脳に与える影響をより詳細に測定するために、fMRIを用いることとし,客観的に評価する手法の構築を目的とした。従来の感情の研究に用いられている主観評価は,個人差により曖昧かつばらつきが大きく,客観性に欠けていたが、脳深部を計測可能なfMRIを用いることにより癒しを客観的に評価することができた。すなわち、癒されるプロセスをfMRIにより解明するために、癒しおよび非癒しの単語群から,それぞれの単語に関するエピソードを作成し、実験中に想起することによって「癒される」状態と「癒されない」状態を再現することを被験者に依頼し,その時の被験者の脳の反応をfMRIで撮像した。その結果、前帯状皮質が癒しに深い関わりを持っている可能性が示唆された。また、癒される状態における脳の賦活パターン同定も行い、70%以上の識別率が得られた。それと同時に, fMRIを用いた被験者実験を解析、同定した脳の賦活パターンを実際に使用するために、視覚刺激を用いた検証実験も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主な研究手法は、当初「脳波計測」と「表情計測」により癒し効果の定性的・定量的な解明を行う予定であった。しかし、幸運にもfMRIを使用することが可能となり、これによる解明に切り替えて解析精度の大幅向上を目指す事となった。その結果、概要に既述したように癒し刺激が脳に与えるメカニズムがより明確に明らかになり、研究の最終目的に大きく近づいたと言える。すなわち、癒される状態における脳の賦活パターン同定を行い,6人の被験者の内5人の被験者に関しては,70%以上の識別率が得られた。これと同時に、視覚刺激を用いた検証実験では、視覚刺激として、癒される表情あるいは癒されない表情としてそれぞれ有名な芸術作品の表情を採用し、被験者が癒されない表情を見た時に比べて,癒される表情を見ている時に有意に賦活している脳領域の同定を試みたが、そのような領域は存在しなかった。このことから、fMRIを用いた被験者実験のみではなく、視覚刺激を用いた検証実験における被験者の反応も考慮した脳の賦活パターンの同定が必要であると考え、これら二つの実験のデータを解析することによりパターン分類を行うことが出来、目的を達成することができた。今後の課題として,被験者の増員、被験者に対する実験説明の徹底、検証実験で用いる視覚刺激の変更など必要性が明らかになり、最終年度へ向けた改善策も明らかにすることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
第1年度および第2年度において、聴覚および視覚による「癒し刺激」を被験者に与えたときの脳に与える影響を顔表情の計測、脳波の計測、fMRIを用いた脳内部の血流計測などの計測を行うことにより「癒し効果のメカニズム」の解明を行ってきた。これらの計測法にはそれぞれ利点と欠点があり、限界もあることが分かった。例えば、計測精度を重視すればfMRIが最も優位であるが、医療現場における計測などでは簡便な顔表情計測が実用的である、すなわち、これらの計測を応用する場面によって使い分ける必要があると思われる。そこで第3年度においては、第一に、癒し効果のメカニズム解明に重点をおいてこれまでの視覚と聴覚刺激に加えて触覚刺激を新たに考えてfMRIを用いた脳の働きの解明を行うことを試み、これまでの成果の検証を行うとともに癒し刺激の総合化に取り組みたいと考えている。第二に、fMRIを用いた計測などにより裏付けされた「効果がある癒し刺激」を認知症などの患者に適用し、簡便な顔表情計測による方法により「病状診断のための計測法」の開発あるいは「病状改善にための癒し刺激」の開発に取り組みたいと考えている。これらの研究成果を踏まえて、最終年度である第3年度では、癒しの定量的計測法として取りまとめ提案するとともに癒しの工学的アプローチを提唱する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学会発表が予定していたように出席できなかったので次年度使用額が生じた。 使用額が生じた分、今年度は国内外の発表に出席する費用に充てたい。
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Research Products
(5 results)