2013 Fiscal Year Research-status Report
長崎原爆記録映像のデジタル化と被爆の実相を「社会的記憶」にする記録のあり方の研究
Project/Area Number |
24500319
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Research Institution | Nagasaki Institute of Applied Science |
Principal Investigator |
大矢 正人 長崎総合科学大学, 工学部, 名誉教授 (60086410)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芝野 由和 長崎総合科学大学, 共通教育センター, 准教授 (20235592)
木村 博 長崎総合科学大学, 環境・建築学部, 教授 (20341555)
小川 保博 長崎総合科学大学, 共通教育センター, 准教授 (40169199)
木永 勝也 長崎総合科学大学, 共通教育センター, 准教授 (80221919)
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Keywords | 情報図書館学 / コンテンツ・アーカイブ / 長崎原爆被害 / 社会的記憶 |
Research Abstract |
本研究の目的は長崎原爆被害の実相を「社会的記憶」として記録し普及することであり、1、米国戦略爆撃調査団16mmフィルムをデジタル化し、原爆記録映像を幅広く活用できる形で記録し保存する、2、撮影構造物(現在滅失した建築物・橋梁を含む)・撮影場所の現地調査、被爆者の聞き取り調査を行い、調査結果と映像資料に関する研究を生かした映像解説書を作成する、3、記録映像を被爆遺構・碑めぐりなどの被爆者の証言活動に活用する、4、日本映画社の原爆記録映画の製作に参加した相原秀二氏の資料、現存する長崎原爆被害に関する資料を分析することにより、原爆記録映像を原爆被害の全体像の中に位置づけ直し、原爆記録映像の持つ今日的意味を明らかにすることである。 1について、米国戦略爆撃調査団の長崎原爆記録16mmフィルムのデジタル化未着手分と米国スタンフォード大学フーヴァー研究所所有の長崎原爆きのこ雲16mmフィルムのデジタル化を映像会社に委託して行い、記録映像のDVD、BRが完成した。2について、撮影構造物・撮影場所の現地調査を行った。本学の李桓准教授と共に、資料番号342-USAF-11010の記録映像と米国国立公文書館のショットリストを活用して、浦上地区を調査した。資料番号342-USAF-11001~11009の映像のショットリストについての研究をまとめた。「社会的記憶」に関係する「記憶」「責任論」の研究報告会を行った。3について、証言活動のための長崎原爆被害の記録映像を作成し、「長崎の証言の会」での証言活動に活用した。4について、相原秀二氏の資料の検討を行うとともに、「長崎原爆の残留放射線」の研究を進めた。理研仁科研グループが被爆当時長崎で測定した残留放射線のオリジナルデータを入手した。原爆記録映像の持つ今日的意味を明らかにするため、長崎原爆被害に関する映像解析、調査活動、資料研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は長崎原爆被害の実相を「社会的記憶」として記録し普及することを目的としている。1、長崎原爆記録映像をデジタル化し、幅広く活用できる形で記録し保存する課題については、2013年度に米国戦略爆撃調査団の長崎原爆記録16mmフィルムのデジタル化未着手分と米国スタンフォード大学フーヴァー研究所所有の長崎原爆きのこ雲16mmフィルムのデジタル化が完成した。2、現地調査、被爆者の聞き取り調査の課題については、米国戦略爆撃調査団が撮影した記録映像と米国国立公文書館のショットリストを活用して、2012年度、2013年度に浦上地区を調査した。資料番号342-USAF-11001~11009の映像のショットリストについて研究をまとめた。被爆者の聞き取りについては、記録映像上映の時に被爆者の証言を聞くことができた。3、調査活動と映像資料に関する研究を生かした映像解説書を作成する課題については、2012年度に報告書の内容と分担を決め、2013年度に「社会的記憶」に関係する「記憶」「責任論」の研究報告会を行った。 4、記録映像を被爆者の証言活動に活用する課題については、2013年度に証言活動のための長崎原爆被害の記録映像を作成し、被爆者の証言活動に活用した。5、原爆記録映像を原爆被害の全体像の中に位置づけ直し、原爆記録映像の持つ今日的意味を明らかにする課題については、2012年度、2013年度に日本映画社の原爆記録映画にある「長崎原爆の残留放射線」の研究を行い、2013年度に長崎原爆の残留放射線測定に関する資料を入手した。相原秀二氏の資料には、記録映画のロケハンでの詳細な記録、長崎原爆の物理的・人的・社会的被害に関する資料が含まれている。相原秀二氏の資料研究を進めるとともに、デジタル化した記録映像を活用して映像解析、調査活動、資料研究を引き続き行う。
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Strategy for Future Research Activity |
米国戦略爆撃調査団撮影の長崎原爆被害記録映像の研究をもとに、撮影構造物・撮影場所の現地調査や被爆者の聞き取り調査を実施する。記録映像を被爆遺構・碑めぐりなどの被爆者の証言活動に活用するため、被爆者の人たちと話し合いを行う。相原秀二氏の長崎原爆被害資料などの分析を行い、長崎原爆被害と記録映像の関連についての研究を行う。米軍側と日本側の原爆記録映像の比較研究を行う。原爆被害の実相を「社会的記憶」とするため、記録映像の保存・活用のあり方についての研究を行う。各研究員の専門性を生かして映像解説書を作成する。具体的内容として、 1、記録映像を活用して、撮影構造物・撮影場所の現地調査を行う。「長崎の証言の会」などの協力により、被爆者の聞き取り調査を行う。2、被爆遺構・碑めぐりなどの被爆者の証言活動に記録映像を活用する。 3、長崎原爆被害の実相と被爆者の実情を相原秀二氏の資料、現存する長崎原爆被害に関する資料に基づき明らかにする。長崎原爆の記録映像と原爆被害の関係を分析する。長崎原爆の残留放射線の研究、長崎原爆きのこ雲映像の分析を行う。4、米国戦略爆撃調査団と日本映画社の記録映像を比較分析し、原爆被害の中で撮影された物と撮影されなかった物を示し、米国戦略爆撃調査団の撮影目的を具体的に明らかにする。米国戦略爆撃調査団の長崎原爆記録映像のショットリストを完成する。 5、「社会的記憶」に関係する「記憶」、「責任論」などの研究、記録映像の保存・活用のあり方の研究を行う。映像解析、調査活動、資料研究を生かした映像解説書を作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該助成金が生じた状況 長崎原爆記録フィルムのデジタル化、DVD、BR作成が1400千円の予算に対し1260千円で完成できたこと、人件費・謝礼が今のところ必要なかったことが主たる理由である。 翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画 本研究は米国戦略爆撃調査団が撮影した16mmフィルムをデジタル化し、記録映像をもとに長崎原爆被害の実相を調査し、記録・保存することである。本研究の長崎原爆記録16mmフィルムのデジタル化の課題は完了したので、2014年度は長崎原爆被害と記録映像の関連の研究(映像解析、調査活動、資料研究)、記録映像の活用、各研究員の専門性を生かした記録映像解説書の作成が課題となる。そのため、映像解説書作成費、資料費、調査研究などの経費が中心となる。 内訳は 映像解説書作成費 300千円、消耗品・資料費 200千円、調査研究・打ち合わせ 200千円、調査協力謝礼 50千円であり、総経費は 750千円である。
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