2014 Fiscal Year Research-status Report
長崎原爆記録映像のデジタル化と被爆の実相を「社会的記憶」にする記録のあり方の研究
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24500319
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Research Institution | Nagasaki Institute of Applied Science |
Principal Investigator |
大矢 正人 長崎総合科学大学, 工学部, 名誉教授 (60086410)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芝野 由和 長崎総合科学大学, 工学部, 准教授 (20235592)
木村 博 甲南大学, 文学部, 教授 (20341555)
小川 保博 長崎総合科学大学, 工学部, 准教授 (40169199)
木永 勝也 長崎総合科学大学, 工学部, 准教授 (80221919)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 情報図書館学 / コンテンツ・アーカイブ / 長崎原爆被害 / 社会的記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は長崎原爆被害の実相を「社会的記憶」として記録し普及することであり、1、長崎原爆被害を撮影した米国戦略爆撃調査団16mmフィルムをデジタル化し、原爆記録映像を幅広く活用できる形で記録し保存する、2、撮影構造物・撮影場所の現地調査、被爆者の聞き取り調査を行い、調査結果と映像資料に関する研究を生かした映像解説書を作成する、3、記録映像を被爆遺構・碑めぐりなどの被爆者の証言活動に活用する、4、日本映画社の原爆記録映画の製作に参加した相原秀二氏の資料、現存する長崎原爆被害に関する資料を分析することにより、原爆記録映像を原爆被害の全体像の中に位置づけ直し、原爆記録映像の持つ今日的意味を明らかにすることである。 1について、2013年度にデジタル化した米国スタンフォード大学フーヴァー研究所の長崎原爆きのこ雲映像の解析を行い、映像を撮影した爆撃機の高度、位置を求めた。2について、本学の李恒准教授と共に、浦上川沿い地域の撮影構造物・撮影場所の現地調査を行った。米国戦略爆撃調査団の長崎原爆被害記録16mmフィルムに関するショットリストを作成した。「社会的記憶」に関係する「記憶」についての研究報告会を行った。3について、碑めぐりガイドの人たちを対象にした講演「長崎原爆記録映像を活用する」を行い、映像活用法についての意見調査を行った。4について、理研仁科研グループが被爆当時長崎で測定した残留放射線のデータ分析を行い、その結果を論文にまとめた。被爆当時長崎で残留放射線を測定した九大篠原健一氏のオリジナルデータを入手した。原爆記録映像の持つ今日的意味を明らかにするため、長崎原爆被害に関する映像解析、調査活動、資料研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は長崎原爆被害の実相を「社会的記憶」として記録し普及することを目的としている。1、長崎原爆記録映像をデジタル化し、幅広く活用できる形で記録し保存する課題については、2013年度に米国戦略爆撃調査団の長崎原爆記録16mmフィルムのデジタル化未着手分と米国スタンフォード大学フーヴァー研究所所有の長崎原爆きのこ雲16mmフィルムのデジタル化が完成した。2、現地調査、被爆者の聞き取り調査の課題については、米国戦略爆撃調査団が撮影した記録映像と米国国立公文書館のショットリストを活用して、2012、2013年度に浦上地区、2014年度に浦上川沿いを調査した。資料番号342-USAF-11001~11009の映像のショットリストについて論文にまとめた。被爆者の聞き取りについては、記録映像上映会の時に被爆者の証言を聞いた。3、調査活動と映像資料に関する研究を生かした映像解説書を作成する課題については、2012年度に報告書の内容と分担を決め、2013、2014年度に「社会的記憶」に関係する「記憶」「責任」の研究報告会を行った。 4、記録映像を被爆者の証言活動に活用する課題については、2013年度に長崎原爆被害の記録映像を作成し、被爆者の証言活動と平和学習に活用した。2014年度に碑めぐりガイドの人たちに講演を行い、映像活用法についての意見調査を行った。5、原爆記録映像を原爆被害の全体像の中に位置づけ直し、原爆記録映像の持つ今日的意味を明らかにする課題については、2012~2014年度に日本映画社の原爆記録映画にある「長崎原爆の残留放射線」の研究を行った。2013年度に理研仁科研グループが被爆当時長崎で測定した残留放射線のデータを入手した。2014年度にこの理研仁科研グループの坂田民雄資料の分析を行い、被爆当時長崎で残留放射線を測定した九大篠原健一のオリジナルデータを入手した。
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Strategy for Future Research Activity |
米国戦略爆撃調査団撮影の長崎原爆被害記録映像の研究をもとに、撮影構造物・撮影場所の現地調査や被爆者の聞き取り調査を実施する。記録映像を被爆遺構・碑めぐりなどの証言活動に活用するため、被爆者、碑めぐりガイドの人たちと話し合う。相原秀二氏の長崎原爆被害資料などの分析を行い、長崎原爆被害と記録映像の関連についての研究を行う。米軍側と日本側の原爆記録映像の比較研究を行う。被爆の実相を「社会的記憶」とするため、記録映像の活用のあり方についての研究を行う。各研究員の専門性を生かした映像解説書を作成する。具体的内容として、 1、記録映像を活用して、撮影構造物・撮影場所の現地調査を行う。「長崎の証言の会」などの協力により、被爆者の聞き取り調査を行う。2、被爆遺構・碑めぐりなどの被爆者、碑めぐりガイドの人たちの証言活動に記録映像を活用する。 3、長崎原爆被害の実相と被爆者の実情を相原秀二氏の資料、現存する長崎原爆被害に関する資料に基づき明らかにする。長崎原爆記録映像と原爆被害の関係を分析する。長崎原爆の残留放射線、長崎原爆きのこ雲映像の研究を行う。4、米国戦略爆撃調査団と日本映画社の記録映像を比較分析し、原爆被害の中で撮影された物と撮影されなかった物を示し、米国戦略爆撃調査団の撮影目的を具体的に明らかにする。米国戦略爆撃調査団の長崎原爆記録映像のショットリストを完成する。 5、「社会的記憶」に関連する「記憶」「責任」の研究、記録映像の保存・活用のあり方の研究を行う。映像解析、調査活動、資料研究を生かした映像解説書を作成する。
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Causes of Carryover |
2014年度はデジタル化した長崎原爆記録映像をもとに、原爆被害と記録映像の関連の研究、記録映像活用の研究を行い、映像解説書を作成する予定であったが、原爆被害の映像解析、原爆きのこ雲の映像解析、残留放射線の資料研究、遺構めぐりでの映像活用の研究が想定以上に処理内容が多く、加えて新しい残留放射線の資料を入手したため、映像解説書の作成を事業期間内で終えることが難しくなり、2015年度に引き続き行うこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
長崎原爆被害と記録映像の関連の研究(映像解析、調査研究、資料研究)、記録映像活用の研究を引き続き行うとともに、各研究員の専門性を生かした映像解説書を作成することとし、未使用額はその経費に充てることとする。 内訳は映像解説書作成370千円、消耗品・資料費30千円、旅費40千円であり、総経費は440千円である。
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