2013 Fiscal Year Research-status Report
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24500375
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
金子 涼輔 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40390695)
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Keywords | 神経回路形成 / GABA / 遺伝子改変マウス / 小脳 / プルキンエ細胞 / バスケット細胞 |
Research Abstract |
本年度は主に「Pcdh欠損マウスにおける個々の神経回路の形態学的解析」を行った。小脳バスケット細胞―プルキンエ細胞間の神経回路をモデル解析系とした。具体的には、プルキンエ細胞およびバスケット細胞における部位特異的Pcdh欠損マウスの作製と解析を行なった。(1)プルキンエ細胞特異的Pcdh-γ欠損マウス(Pcdh-γ flox; L7-Creマウス):バスケット細胞―プルキンエ細胞間の神経回路を形態学的に解析した。まず、平成24年度に開発成功した個々の神経回路を可視化する遺伝子改変マウスとプルキンエ細胞特異的Pcdh-γ欠損マウスとを交配させ、多重遺伝子改変マウスを作製した。その後、胎児期でのタモキシフェン投与により単一バスケット細胞を赤色蛍光タンパク質tdTomatoによって可視化した。本回路の完成後(生後21日齢)に灌流固定、切片化の後、蛍光顕微鏡を用いて観察した。プルキンエ細胞特異的Pcdh-γ欠損マウスにおいて軸索が短いバスケット細胞が見つかった。一方、細胞ごとに長さのばらつきが大きい事も判明した。今後は定量的解析手法を確立し、解析を進める。(2)バスケット細胞でのPcdh-γ欠損マウス(Pcdh-γ flox; PV-Creマウス):バスケット細胞におけるPcdh-γ欠損の影響を調べるため、PV-CreマウスとPcdh-γ floxマウスと交配した。本マウスは運動機能障害を呈し、小脳回路の異常が示唆された。現在は、バスケット細胞―プルキンエ細胞間の神経回路を形態学的に解析するべく準備を進めている。また、「個々の神経回路におけるPcdhの発現解析」を行なうため、single-cell RT-PCR法の予備実験を行い、プルキンエ細胞における高発現遺伝子(Gad67, Calbindin)の検出に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度には、昨年度に確立した個々の神経回路の可視化手法を用いて「Pcdh欠損マウスにおける個々の神経回路の形態学的解析」を計画・実行した。実験手法改良の必要性が判明したため、予備的結果に留まっている。以下にその内容を記す。(1)解析に必須となる遺伝子改変マウスの交配・繁殖が順調に進み、解析を行った。その結果、プルキンエ細胞特異的Pcdh-γ欠損マウスにおいて軸索が短いバスケット細胞を見いだした。しかし、細胞ごとの軸索長やその伸長方向のばらつきが大きい事も判明した。立体空間中における定量的解析手法の確立が必要である。(2)バスケット細胞におけるPcdh-γ欠損の影響を調べるため、PV-CreマウスとPcdh-γ floxマウスと交配した。本マウスは運動機能の異常を見出した。本結果はバスケット細胞―プルキンエ細胞間神経回路の異常を示唆するため、個々の神経回路の形態学的解析の準備を進めている。(3)「個々の神経回路におけるPcdhの発現解析」を行なうため、single-cell RT-PCR法の予備実験を行い、プルキンエ細胞における高発現遺伝子(Gad67, Calbindin)の検出に成功した。しかし、Pcdhの検出はできておらず、検出感度の改良が必要である。以上より、実施した3つの実験で仮説を支持する予備的結果を得たものの、今後の検討課題も見つかった。したがって、「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も小脳バスケット細胞―プルキンエ細胞間の神経回路をモデル解析系として、個々のニューロン識別機構の解析を進める。課題「Pcdh欠損マウスにおける個々の神経回路の形態学的解析」においては2系統のPcdh欠損マウス(プルキンエ細胞特異的Pcdh-γ欠損マウスおよびバスケット細胞でのPcdh-γ欠損マウス)の個々の神経回路の形態学的解析を行う。昨年度に判明した技術的課題「立体空間中における定量的解析手法」を確立するため、固定化脳組織抗体染色/透明化/共焦点蛍光顕微鏡/二光子蛍光顕微鏡/画像解析ソフトウェアNeurolucidaを利用する。予備検討では、scale透明化法と二光子蛍光顕微鏡の組み合わせで良好な結果が得られているため、本法を基に解析手法を確立する。課題「個々の神経回路におけるPcdhの発現解析」においては、single-cell RT-PCR法の検出感度向上法を検討する。新たに、Pcdh単一アイソフォームの発現を蛍光標識できるノックインマウスの開発に成功した。本マウス脳ではPcdh発現に類似した蛍光標識を確認している。今後は小脳バスケット細胞―プルキンエ細胞間の神経回路における蛍光パターンを解析する。ここでもscale透明化法と二光子蛍光顕微鏡の組み合わせを用いる。これらの解析により、仮説「同一Pcdhを発現するニューロン同士で神経回路を作る」を検証し、個々のニューロン識別機構の解析を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年は「Pcdh欠損マウスにおける個々の神経回路の形態学的解析」および「個々の神経回路におけるPcdhの発現解析」を実施した。特に、「Pcdh欠損マウスにおける個々の神経回路の形態学的解析」においては数多くのマウス飼育が必要となるため、そのためのマウス飼育費用に多くを予定していた。しかし、解析の結果、実験手技の改良が必要となった。したがって、本格的に解析に着手することが出来なかったため、マウス飼育費用が減少した。これに伴い、解析に必要な試薬類やプラスチック製品類の購入費用も減少した。そのために、当初予定額よりも支出が少なかった。 次年度は実験手技を確立し、本格的な解析を行なう。そのために必要なマウス飼育費用や試薬類やプラスチック製品類を購入する。また、本研究で得られた成果を学会発表や誌上発表するための経費にも使用する。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Motor dysfunction in cerebellar Purkinje cell-specific vesicular GABA transporter knockout mice.2014
Author(s)
Kayakabe M, Kakizaki T, Kaneko R, Sasaki A, Nakazato Y, Shibasaki K, Ishizaki Y, Saito H, Suzuki N, Furuya N, Yanagawa Y.
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Journal Title
Front Cell Neurosci
Volume: 7
Pages: 286
DOI
Peer Reviewed
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