2012 Fiscal Year Research-status Report
高解像度イメージング法を用いた興奮性シナプスの構造解析
Project/Area Number |
24500405
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩崎 広英 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30342752)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | コネクトーム |
Research Abstract |
脳は膨大な神経細胞が互いにシナプスを介して結合し、ネットワークを形成することで様々な機能を実現する。したがって脳の機能を理解するためには、脳がどのようなネットワークから構成されるのかを理解することが重要であるが、未だにその全貌は解明されていない。その理由の一つとしては、神経細胞は長い突起を伸ばして遠くの神経細胞と結合する一方で、シナプスは極めて微細な構造であるため、広範囲に亘る高解像度のイメージングを必要とする点が挙げられる。そこで本研究では、広範囲に亘る高解像度イメージングを実現するための技術的基盤の確立を目指している。本年度では、広範囲に亘る高解像度イメージング法の一つであるArray Tomography法を導入し、さらにこれを改良することにより、より広範囲に亘る高解像度イメージングを目指した。特に、従来は複数視野から取得した画像をつなぎ合わせる際、高解像度で取得した画像の場合にはつなぎあわせにミスを生じることが多く、結果として広範囲に亘る神経細胞ネットワークの三次元再構築には至らなかったが、本年度はこの問題点を改善することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主にArray Tomography法の導入および改良を目的として研究を行い、その結果当初通りの予定を達成することができた。しかし、当初予定していたSTORM法などの超解像度顕微鏡を用いての画像取得については、実施したものの当初期待したほどの効果を得ることはできなかった。その原因としては、Array Tomography法では試料を超薄切片化することで解像度の向上を実現するが、あまりに切片が薄いためにシナプスが分断されてしまい、その全体像を収めることが困難である点が挙げられる。今後は試料作製法の見直しと共に、超解像度イメージングについては当初の計画を見直す必要性があるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本年度に確立されたイメージング法を更に改良・発展させ、実際に神経細胞ネットワークの広範囲に亘る三次元再構築を実現するための技術的基盤の確立を目指す。Array Tomography法では、抗体染色により分子・構造を可視化するが、電子顕微鏡用樹脂に包埋された試料を用いるため、抗体が抗原分子にアクセスしづらく、その結果、使用できる抗体の種類がきわめて限られるという問題点がある。そこで今後はこの問題を解決することで、Array Tomography法の汎用性を高めていく必要性がある。また神経細胞ネットワークの三次元再構築のためには、目的とする神経ネットワークを何らかの形で標識することが必要となる。今後はこの手法についても検討を重ねる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は主としてArray Tomography法の汎用性を高めるために、試料作製法の改良を試みる。具体的には、電子顕微鏡用樹脂への包埋方法の検討を重ね、抗原性がより保たれ、かつ抗体が抗原分子にアクセスしやすくなるような手法の開発を試みる。これにより、使用できる抗体の種類が増えれば、神経細胞および神経機能素子となる分子のバリエーションが増え、より多彩な神経回路の三次元再構築および神経ネットワークの理解につながるものと考えられる。
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