2013 Fiscal Year Research-status Report
表皮バリア機能発達過程解析をモデルにしたオポッサム皮膚への遺伝子導入法の開発
Project/Area Number |
24500492
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
松崎 貴 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (90241249)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪原 節之介 島根大学, その他部局等, 名誉教授 (90101295)
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Keywords | オポッサム / 皮膚 / バリアー機能 / 器官培養 / 新生仔 |
Research Abstract |
オポッサム新生仔のバリア機能発達過程を解明するために,マウス新生仔のバリア機能解析に用いたことのある皮膚水分計のプローブをテープで覆ってオポッサム新生児のサイズに合わせ,生後1日から毎日計測を行った。新生仔は離乳まで母親の乳首をくわえ込んだまま母体から離れないため,母親をガス麻酔した状態で測定した。その結果,マウスでは生後7日から10日にかけて体表水分量が約30%から7%程度に減少し,この時期にバリア機能が発達するのに対し,オポッサムでは生後1日で既に10%以下であり,2日目以降は約8%で安定することがわかった。皮膚組織の透過電子顕微鏡観察では,生後1日と3日のサンプルで細胞形態に違いが見られ,初めは細胞層が薄く配置も不均一であったものが3日後までに整然と配置することが明らかとなった。これらの結果から,オポッサムはマウスやラットの胎児期に相当する発達段階で生まれるにも関わらず,乾燥に耐える十分なバリア機能を備えていることが推測される。 オポッサムの胎児および新生仔皮膚の発達段階を効率的に解析する方法として,皮膚器官培養系の改良を試みた。まずパイロット実験としてマウス皮膚で実験を行った。切り取ったマウス背部皮膚を滅菌してシリコーンゴム上に固定し,6枚の片刃剃刀と5枚のスペーサーを交互に挟んで固定した道具で細切り皮膚片を作成し,これを別のシリコーンゴム片に微針でとめてWilliams’ E 培地で培養した。添加する因子等を変えながら毛の伸長を指標に培養条件を検討したところ,培養4日まで伸長したものの,その後止まってしまった。特に正常皮膚と比べ,脂肪層の萎縮が顕著であった。このため,まだ何らかの因子が不足しているか,細切による抑制作用が働いていると推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新設した動物実験施設でのオポッサムの飼育・繁殖方法を確立し,安定的に新生仔を得ることができるようになった。また,新生仔を付けたまま母体を麻酔する方法を確立できた。これらの進展によって,オポッサム新生仔の表皮水分含量の測定に基づくバリア機能の発達過程を調べることができ,生後2日にはバリア機能が完成することがわかったことから,今後は出生の前後を中心に,オポッサム表皮細胞分化と構造変化を調べていく目途が付いた。また,オポッサム皮膚の器官培養方法の手がかりが得られた。一方,H25年度までの確立をめざした,オポッサムの細胞培養と皮膚細胞・組織への遺伝子導入技術は実用レベルの成果が得られていない。以上より,研究は計画よりやや遅延していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
オポッサム生後1日と3日の皮膚組織サンプルで細胞形態に違いが見られたことから,バリア機能解析を更に進めるために後期胎児の解析が必要となる。このため,まだ確立されていないオポッサムの妊娠日齢の推定方法を早急に樹立する必要がある。具体的には性ホルモン等のモニタリングを考えている。 また,細切皮膚片の器官培養条件を検討したところ,培養4日までしか毛の伸長がみられず,正常皮膚と比べて脂肪層の萎縮が顕著であったことから,脂肪細胞の増速・分化を促進するサイトカイン等の添加など,培養条件を検討する必要がある。適切な培養条件を確立した後には,オポッサム皮膚の期間培養並びに遺伝子導入によるバリア機能分化の解析を行う。遺伝子導入にはエレクトロポレーションと新規トランスフェクション試薬の導入を考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残額2778円であったため次年度に繰り越した。 繰越額を当初計画に合わせて使用する。
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