2014 Fiscal Year Research-status Report
表皮バリア機能発達過程解析をモデルにしたオポッサム皮膚への遺伝子導入法の開発
Project/Area Number |
24500492
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
松崎 貴 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (90241249)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪原 節之介 島根大学, その他部局等, 名誉教授 (90101295)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | オポッサム / 表皮バリア / 器官培養 / 透明化 / 3次元観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
オポッサム新生仔の皮膚の発達過程に関わる遺伝子の役割を探るため、皮膚の器官培養系の確立を目指した。マウス皮膚でのパイロット実験では、毛の伸長を指標に条件検討したところ、Williams’ E (WE) 培地にinsulin (In) 10ug/ml、hydrocortisone (HC) 10ng/mlを添加した場合に比べ、HC濃度を50ng/mlにした場合、1%ウシ胎児血清を追加した場合、および表皮細胞用培地であるKGM goldで培養した場合に毛の伸長期間が4日間から6日間まで延長し、このうちKGM goldで培養した場合に最も良い結果が得られた。培養中に脂肪層の萎縮を見られたことから、脂肪細胞の分化誘導因子のindomethacinあるいはdexamethasoneを1~10uM添加してみたが、毛伸長はかえって抑制され、脂肪層の萎縮も止まらなかった。次にパイロット実験で結果の良かった WE+In+HC (50ng/ml)およびKGM goldを用いて、オポッサム皮膚の器官培養を行った。しかし、オポッサムでは毛の伸長も、表皮細胞や脂肪細胞の増殖による肥厚も見られなかった。 表皮の細胞間隙構造の発達具合を三次元観察するために一昨年試みたScale 2A溶液を用いた透明化実験がうまくいかなかったことから、新たな透明化の方法としてアクリルアミドを浸透させた後、SDSで分解した脂質を電気的に除去するClarity法を試みた。その結果、成体皮膚ではなかなか透明化しないものの、胎児皮膚ではある程度透明化できることが分かった。低温下で蛍光標識抗体を浸透させた後にこの透明化技術を用いることで、細胞間隙構造の三次元観察ができる可能性が出てきたので、オポッサム表皮バリア機能の発達過程を分子レベルで解明したい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでなかなかうまくいかなかった皮膚の透明化に目途が立ったことから、蛍光抗体を用いた3次元解析に向けて進展があった。また、皮膚器官培養の条件がある程度絞り込めた。一方、オポッサムが出産後に食殺してしまうケースがあり、新生仔を用いる実験が順調に進まなかった。このため、マウスを用いたパイロット実験で条件を絞ったのちオポッサムでの実験を行ったため、オポッサム皮膚の器官培養条件の検討等が十分できなかった。その後、暗視野ビデオ録画による観察結果から、床敷材の与え方を変えるなどの改良を行い、食殺率を減少させることができた。これらの結果から、研究は計画よりやや遅れているとした。
|
Strategy for Future Research Activity |
日齢のはっきりした胎仔および新生仔を確実に得るため、ビデオ撮影による交尾行動の観察とその後の体重変化の記録から、出産日の推定ができそうなことが分かったものの、数値のバラツキが多いため、今後さらにデータを蓄積して精度を上げていく。 Clarity法を用いて細胞間隙構造の三次元観察ができる可能性が見えてきたので、研究期間を延長して方法を確立し、エレクトロポレーションによる遺伝子導入とも組み合わせて、オポッサム表皮バリア機能の発達過程の分子レベルでの解明を目指す。
|
Causes of Carryover |
オポッサムの新生仔がうまく得られなかったため研究が遅延していたが、新生仔の確保と皮膚の3次元観察に目途が立ったことから、さらに1年掛けて研究を推進することとし、予算の一部を来年度に繰り越した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として、皮膚器官培養への遺伝子導入と免疫組織染色後の3次元観察に使用する。
|