2012 Fiscal Year Research-status Report
クエン酸添加透析液の肝細胞内エネルギー貯蔵効果による透析患者運動持久力の改善
Project/Area Number |
24500662
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
大橋 篤 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 准教授 (30310585)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中井 滋 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 教授 (20345896)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 血液透析 / 生体適合性 / 酢酸添加透析液 / クエン酸添加透析液 / 骨格筋細胞 / 肝癌細胞 / グリコーゲン |
Research Abstract |
血液透析療法(HD)の透析液にpH調整剤として添加される酢酸(AA)は単球刺激など生体適合性の面で問題視されている。近年、AA添加透析液(AD)の代替としてクエン酸(CA)添加透析液(CD)が臨床応用され、HD後の疲労感抑制などQOL改善に関する報告が散見されるが科学的根拠は示されていない。我々は、CAが解糖系の律速酵素PFKを阻害し細胞に取り込まれたグルコース(Glc)がグリコーゲン産生系へ傾きHD後のエネルギー源として利用されると推測した。平成24年度は先ず、ヒト肝癌細胞 (HepG2)株を用い、5%牛胎児血清(FBS)入りE-MEM培地へ各種酸(HCA、AA、CA)を透析液の終濃度と等量添加した培地で3時間培養し、細胞内のタンパク質1mg当たりのグリコーゲン(Gly)量を測定した。その結果、AA添加株:42±3(μg/mg protein)とCA添加株:35±6はHCA添加株:15±2に比し有意(p<0.01)に高値であった。次に、ヒト骨格筋細胞(SkMC)株でHepG2と同様、透析液終濃度と等量の酸(HCA:3mEq/L、AA:3mEq/L、CA:1mEq/L)を添加した培地で3時間培養した際のGlc消費量は3群(n=5)とも0.42μmol/mg proteinで有意差は無かった。また、乳酸(LA)の産生量においても0.43μmol/mg proteinで有意差は無かった。一方、細胞内Gly量はHCA添加株が23.2±2.7(μg/mg protein)に比しAA添加株41.7±16.7、CA添加株も30.9±5.4で共に有意(p<0.05)に高値であった。以上より、各種酸の肝癌細胞および骨格筋細胞への影響として、透析液に添加される濃度レベルのAAとCAはHCAに比しグリコーゲン産生を促進するが、CAはAAに比しグリコーゲン産生能は低くい事が判明した
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は透析液のpH製剤として添加される各種酸の糖代謝に対する影響として、先ず細胞レベルでの検討を行い、肝癌細胞と骨格筋細胞株の培養条件と細胞中のグリコーゲンや乳酸の定量法を確立した。その結果、肝癌細胞株と骨格筋細胞株とも酢酸添加培養がクエン酸添加に比しグリコ―ゲン産生を向上させること結果となり、添加するpH調整剤の組成や濃度条件を検討し直す必要がある。また、各種透析液添加pH調整剤の骨格筋細胞株への影響について、DNAマイクロアレー法による遺伝子発現解析を追加したところ、一部のエネルギー代謝関連遺伝子の発現において差を認め、現在パスゥエー解析を施行中であり、その結果次第で分子生物学的検討を追加する必要がある。 次に、個体レベルの運動生理学検討として、各種酸を添加した透析液をラットの腹腔へ留置し、トレッドミルによる運動持久力能の評価系を構築することを予定したが、類似の文献を検索した結果、当初予定したトレッドミル法で疲労困憊まで運動させることは多くの問題点があるが判明し、個体レベルでの検討は次年度より開始する事とした。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度終盤よりpH調整剤の影響を評価するに当たり、骨格筋細胞株を用いた分子生物学的評価としてDNAマイクロアレー法による遺伝子発現解析に取り掛かり、各種pH調整剤のエネルギー代謝関連遺伝子に影響を与える遺伝子について、パスウェー解析を施行した。今後は、特徴的に発現する遺伝子について、例数を増やしリアルタイム(RT)-PCR法による定量評価を試みる。また、肝細胞に関しては、継代培養の観点よりヒト肝癌細胞株を用いたが、今後は正常ヒト肝細胞株を用いた検討が必要である。そこで、骨格筋細胞株と並行して正常ヒト肝細胞株についてもRT-PCR法による定量評価を試みる。 次に、個体レベルでの評価として、対象動物をラットからマウスへ変更し腹腔へ各種pH調整剤添加透析液を留置して非侵襲的な持久力評価法として流水を用いた強制水泳評価法による持久力評価法を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
透析液に添加される各種pH調整剤の生体に及ぼす影響の解析として、以下の2項目を予定している。 1)分子細胞学レベルの研究:RT-PCR法によるヒト正常骨格筋株とヒト正常肝細胞株の遺伝子発現の定量評価法を確立するため、プローブをはじめRT-PCR用酵素および試薬の購入に研究費を充てる。 2)個体レベルの研究:マウスを用いた強制水泳持久力評価を確立するため、実験動物の購入および飼育管理ならびに強制水泳評価装置の準備に研究費を充てる。
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