2012 Fiscal Year Research-status Report
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24500684
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan Women's College of Physical Education |
Principal Investigator |
加茂 美冬 日本女子体育大学, 体育学部, 教授 (30224702)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 運動単位 / 筋力調節 / 頻度変調 / 多様性 |
Research Abstract |
最大下の筋力を維持する際に,個々の運動単位(MU)の放電間隔変化は同一ではないことが報告されている.この多様性は,一見すると一定筋力維持の妨げとなると考えられる.また,運動ニューロンは筋の収縮特性に合わせて指令を送るというmuscle wisdom仮説との整合性もない.したがって,多様性を理解することは,筋力調節の神経制御機構における新しい側面を見出すことにつながる.本研究では,多様性発現の要因を検討するために2つの実験を計画した.1)運動ニューロンへの興奮入力勾配が一定筋力保持課題中の放電パターンに及ぼす影響,2)ニューロンの出力維持に必要な入力量の運動ニューロン毎の差異.平成24年度は,本実験に向けて4つの準備を行った.①被験者の採用,②実験課題へのFamiliarization, ③MU活動電位波形同定の精度の向上,④筋内埋入電極法による基礎データの収集. ①-③は,研究代表者と連携研究者の各研究室で行った.平成24年度の研究発表はMU活動レベルでの筋音に着目した内容であったが,本研究で用いる表面電極法によりMUの活動電位を導出法し解析を行っている.これらの報告と並行して①-③を行った. ④は,研究代表者が平成24年8月から7か月間, The University of Queenslandの研究室に滞在し,データを収集した.足底屈時の腓腹筋MUにおいて筋内埋入電極法を用いて実験1)を行い,大きな成果を得た.我々の仮説に従い,筋力増大の速度に依存しMUが一定筋力発揮時の放電パターンを変化させることを捉えた.この知見をまとめ,国際学会へ発表申込みをした. 同一MUの放電に焦点を当て表面電極法を適用する本実験に先立つ準備が整ったと言える
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時点で比較的長い実験準備期間が必要であると考え研究実施計画を作成していた.特に初年度は,準備期間として,被験者募集,実験技術の習得および筋内埋入電極法による基礎データの収集を行うことを予定した.そのうち,筋内埋入法による基礎データ収集は,現在,研究代表者が所属する大学には設備がないため,他の研究機関と共同で行う必要があった.今回特にそれが海外の研究機関であったため,限られた期間にデータ収集が行えるかどうか不確実な面があった.しかし,現地へ到着する前に,研究計画についての打ち合わせをメールだけではなく,国際学会等で直接会い十分行ったことにより,また,共同研究者の協力により,予定した以上にデータを収集することができた.筋内埋入電極法でたくさんのデータを収集できたことは,次年度からの表面電極法で運動単位活動電位を導出し,様々な条件での同一運動単位の放電パターンを観察する本実験に向けて非常に有益であった.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の二つの実験実施のために必要かつ重要な準備として,平成24年度に基礎的データの取得と高精度の運動単位(MU)活動解析手法の習得を連携研究者と海外研究機関の協力を得て行うことができた.この準備をもとに,平成25年度は,筋力調節における個々のMU活動の多様性の合目的性とメカニズムを明らかにするために計画した2つの課題のうち,最初の課題である「運動ニューロンへの興奮入力勾配が,続く一定筋力保持課題中の放電間隔変化パターンに及ぼす影響」に取り組む.続いて 平成26年度は,第二の課題である「ニューロンの出力維持に必要な入力量の運動ニューロン毎の差異」に取り組むとともに,研究全体のまとめを行う.第二の実験では運動ニューロンの入出力特性を明らかにするために調節対象を筋力ではなく運動ニューロンの出力とする.すなわち,被験者に運動ニューロンの放電頻度を視覚的に提示し随意的に調節させる.第二の実験課題を平成26年度前半に終え,後半は二つの実験課題の結果から研究全体のまとめを行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は基礎的データの収集と高精度の運動単位活動解析手法の習得を主に海外研究機関の協力を得て行うことができた.そのため,当該年度は計画より使用した経費が少なくなった.次年度は,基礎的データをもとに本実験を実施していくので,実験消耗品が必要となることはもとより,より高精度の実験結果を得るために必要な実験機器の補強およびメンテネンス,被験者の実験へのFamiliarizationの徹底に研究費を使用する.また,実験補助者およびデータ解析補助者への謝金も必要になる.さらに,当該年度に得た基礎データを国際学会および国内学会で発表するための旅費に使用する予定である.
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