2013 Fiscal Year Research-status Report
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24500684
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Research Institution | Japan Women's College of Physical Education |
Principal Investigator |
加茂 美冬 日本女子体育大学, 体育学部, 教授 (30224702)
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Keywords | 運動単位 / 筋力調節 / 頻度変調 / 多様性 |
Research Abstract |
最大下の一定筋力を調節するとき,個々の運動単位の活動(放電様式)は同じではなく,多様性を示すことが報告されている.本研究では,多様性の合目的性および発現のメカニズムを理解するために2つの実験課題を計画し,遂行している.初年度である平成24年度において実験手法の精度の向上および海外研究者の協力を得て筋内埋入電極法による基礎的データ収集を行った.引き続き平成25年度においては,実験課題1「運動ニューロンへの興奮入力勾配が,続く一定筋力保持課題中の放電間隔変化パターンに及ぼす影響」に関して主に以下の3点について取り組んだ.①筋内埋入電極法により収集した基礎的データについての詳細な解析,② ①で解析したデータの一部を学会発表,③ 表面電極法による実験の実施.①および②:筋内埋入電極法により記録された運動単位活動電位の解析においては,単一運動単位の同定が重要となる.そこで今回は,2つの手法を適用することにより高い精度での同定を行った.その後,活動参加閾値,放電頻度(instantaneous and smoothing)を計測し,放電様式の定性および定量解析を行った.また,発揮筋力と目標筋力間の誤差の算出も行った.それらの解析結果の一部から,一定筋力発揮初期の放電頻度変化は,運動ニューロンへの中枢あるいは末梢からのシナプス入力よりも個々のニューロンの固有の特性に強く依存して変化することが示唆された.その結果をSociety for Neuroscience (SfN) 2013にて発表した.③:同じ運動単位の活動電位を繰り返し導出することのできる表面電極法を用い,筋内埋入電極法による実験の結果から得られた知見が一つの運動単位で同様に観察できるかを確かめる実験を行った.現在,解析中である.また,SfN2013にて発表した内容について現在論文原稿の執筆を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
準備期間であった平成24年度に,被験者募集,実験技術の習得および筋内埋入電極法による基礎データの収集が十分に行えたことにより,平成25年度の計画もおおむね順調に進めることができた.一定筋力調節については,これまでに多くの研究がなされているが,本研究で計画した2つの課題のうち,今年度取り組んだ実験課題1「運動ニューロンへの興奮入力勾配が,続く一定筋力保持課題中の放電間隔変化パターンに及ぼす影響」は特殊な実験ではないがこれまでに知見がだされていない課題である.そのため,筋内埋入電極法で得た基礎的データの解析を詳細に行ったことで,新しい知見を多く得ることができた.そして,その一部を海外の共同研究者とともに国際学会で発表し,続けて,論文執筆を進める段階まできている.また,表面電極法による実験データの収集も連携研究者と協力して行い,それらの結果と筋内埋入電極法で得られた知見との関係を検討していく準備も整っている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,実験課題2「一つのα運動ニューロンの放電間隔を一定保持している間の他の運動単位の活動の時間に伴う変化」に取り組むとともに,研究全体のまとめを行う.この実験では運動ニューロンの入出力特性を明らかにするために調節対象を筋力ではなく運動ニューロンの出力とする.すなわち,被験者に運動ニューロンの放電頻度を視覚的に提示し随意的に調節させる.この実験課題の遂行のためには,新たな機器や測定テクニックが必要となるということはないが,被験者の頻度調節能力が重要なポイントとなる.被験者募集を連携研究者と協力して行い実験課題2のデータ収集を平成26年度前半に終えるようにする.後半は,実験課題2で得られた結果の学会および科学雑誌への公表,さらに実験課題1「目標筋力に達するまでの筋力増大勾配が一定筋力発揮時の運動単位放電パターンに及ぼす影響」で得られた知見と実験課題2の結果を総合して研究全体のまとめを行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度である平成24年度は基礎的データの収集と高精度の運動単位活動解析手法の習得を主に海外研究機関の協力を得て行うことができため,平成25年度への繰越金が多かった.また,当初,機器の修理,メンテネンスに経費がかかると考えていたが25年度中には必要がなかった.これらの理由から次年度使用額が生じた. 平成26年度は,主に実験課題2「一つのα運動ニューロンの放電間隔を一定保持している間の他の運動単位の活動の時間に伴う変化」に取り組んでいくことになる.したがって,実験消耗品が必要となることはもとより,より高精度の実験結果を得るために必要な実験機器の補強およびメンテネンス,被験者の実験へのFamiliarizationの徹底に研究費を使用する.また,実験補助者およびデータ解析補助者への謝金も必要になる.そして最後に,成果を発表するための費用が必要となる.得られた結果を国際学会および国内学会で発表するための旅費,英文校正を含めた論文執筆および投稿に必要な費用等である.
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