2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500689
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Research Institution | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
Principal Investigator |
崎原 ことえ 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 知的障害研究部, 研究生 (40423115)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 秀次 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (40137964)
奥住 秀之 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (70280774)
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Keywords | 適応的歩行 / 小児 / 自閉症スペクトラム障害 |
Research Abstract |
本研究では適応的歩行に関わる認知の神経基盤を明らかにすることを目的とした.本年度は,初年度に作成した視覚課題について生理学的指標へ適応する妥当性について検討するために第1~3研究を実施した. 第1研究では,コヒーレントモーションの方向弁別課題について,健常成人を対象に,複数のコヒーレント比率条件によって反応時間が線形に変化する課題提示条件を探索した.視覚課題には上下方向のコヒーレントモーションの方向弁別課題を実施し,5種類のコヒーレント条件(20%,40%,60%,80%,100%)を設定した.提示時間が150~200msおよび300~900msではコヒーレント条件間で反応時間に差が認められなかった.一方,提示時間が250msではコヒーレント条件間ですべての被験者にて正答率が80%以上を示し,反応時間は弁別が易しい条件で最も速く,5種類のコヒーレント条件間で有意な線形関係を示した.コヒーレント条件間の差を生理学的指標の時間的な差として抽出する際に適応できるのではないかと考えられる. 第2研究では,第1研究で反応時間に線形関係が認められたコヒーレントモーション提示条件を採用し,頭皮上脳波から方向弁別に伴う事象関連電位を計測した.頭頂部領野に方向弁別に特異的なN200成分が検出され,コヒーレント条件による潜時の変化が認められ,第1研究にて探索した課題条件は生理学的指標に対しても妥当であると考えられた. 第3研究では,第1研究の結果に基づいてコヒーレントモーションの方向弁別課題を心理学的指標に応用できるかを検討した.コヒーレントモーションの下向きの弁別課題と同等の課題として,棒の垂直落下に対する把持課題を実施したところ,被験者間で再現性のある課題として有用であることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では適応的歩行に関わる認知の神経基盤を明らかにすることを目的としており,本年度は第1~3研究を実施し,生理学的指標へ適応する視覚課題の確立を達成した. 第1研究では,コヒーレントモーションの方向弁別課題について,健常成人25人を対象に,複数のコヒーレント比率条件によって反応時間が線形に変化する課題提示条件を探索した.視覚課題には上下方向のコヒーレントモーションの方向弁別課題を実施し,5種類のコヒーレント条件を設定した.提示時間が150~900msでは,提示時間が250msでのみコヒーレント条件間ですべての被験者にて正答率が80%以上を示し,反応時間は有意な線形関係を示した.生理学的指標の経時的変化を抽出するための視覚課題として妥当であると考えられる. 第2研究では,第1研究での課題を用いて実際に生理学的指標の抽出に適応可能かを検討した.頭皮上脳波から方向弁別に伴う事象関連電位を計測したところ,頭頂部領野に方向弁別に特異的なN200成分が検出され,コヒーレント条件による潜時の変化が認められたことから,生理学的指標の経時的変化を抽出する際に有用であると考えられた. 第3研究では,コヒーレントモーションの方向弁別課題を心理学的指標に応用できるかを検討した.コヒーレントモーションの下向きの弁別課題と同等の課題として,棒の垂直落下に対する把持課題を実施したところ,被験者間で再現性のある課題として有用であることが示された. 初年度に研究代表者が平成25年2月までの3か月半に産休に入った影響が本年度も継続し当初の予定よりもやや遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は適応的歩行に関わる視覚情報の認知のなかで,視覚情報の認知の時間・空間的統合について継続して検討した.生理学的指標の抽出に適応できる視覚課題の確立を目的とし,成果として反応時間および脳波事象関連電位の経時的変化が抽出できる課題構築を達成した.この成果を踏まえて,本年度は,実際に健常小児への有用性を検討する(研究①).また発達障害児を対象に障害児の適応的歩行に関わる視覚情報の認知の神経基盤について明らかにすることを目的とする(研究②). また適応的歩行に関わる感覚情報の認知の神経基盤について明らかにする(研究③).感覚情報の変化をトレッドミルの速度変化として生じさせ,感覚情報の変化に対する適応的歩行の指標として,歩行動作を2次元座標計測システムを導入して評価を行う.2次元座標計測システムでは,トレッドミル上で再現された歩行動作を正確に計測するために,非拘束型の可搬型計測器を購入する.これらより得られた歩行動作から,歩行速度,歩幅,歩行周期および歩行比の指標を解析し,トレッドミルにて生じた速度変化が歩行動作に与える影響について検討する.健常成人,健常小児および発達障害児を対象とする.適応的歩行に関わる感覚情報の認知について実際の歩行動作を再現するために,自走式トレッドミルを購入する必要があり,またトレッドミル上で計測された歩行動作を2次元的に解析するためのソフトウェアを購入する.また,感覚情報処理について行動データと脳波データを同時計測するための,実験セットアップに必要な備品を購入する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は,視覚刺激課題の作成や脳波計測のために必要な物品や消耗品を,初年度に購入した範囲内にて対応することができたため,次年度に使用額が生じた. 次年度使用額は最終年度の計画に沿って,新たな実験セットアップおよび実験参加者のリクルートのために使用予定である.
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