2012 Fiscal Year Research-status Report
子育て支援職の再検討:リスク支援と予防支援における役割モデルの構築
Project/Area Number |
24500905
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
上垣内 伸子 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 教授 (90185984)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星 三和子 名古屋芸術大学, 人間発達学部, 教授 (30231004)
向井 美穂 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 准教授 (40554639)
塩崎 美穂 尚絅大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (90447574)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 子育て支援 / リスク支援 / 専門職間の連携 / 多職種協働による子育て支援 / 聞き取り調査 |
Research Abstract |
1.本研究の目的は、子育てのリスクとその予防の支援ができる支援者の養成、研修のモデルを作成することである。 2.そのため、本年度は以下の研究を行った。(1)文献研究:子育てにおける「リスク」についてこれまでの定義および子育て支援事業の中でのリスク支援の位置づけについて、保育、子ども家庭福祉、母子保健・小児保健領域の文献から探った。 (2)データ収集:リスク支援・予防支援意識の高い国内の4施設(熊本市、名古屋市、新宿区、戸田市)を抽出し実地調査を行った。①子育て支援職が意識しているリスク支援・予防支援の考え及び実践に関する聞き取り調査。②子育て支援事業の観察調査。③各施設子育て支援事業およびリスク支援・予防支援に関する資料の収集。④聞き取りおよび観察記録の起こしと整理。 3.分析結果: (1)リスクの定義:周産期における乳児の健全な発育に対するリスク要因、虐待を生じさせる要因として家庭と家族がもつリスク要因など、障害や虐待など明確な問題の背景となるリスク要因は具体的に抽出されているのに対して、子育てに困難さをもつ親子はその背景要因が複合的であり、明確な定義がしにくい。この定義のしにくさが、子育て支援現場が扱う子育てのリスクの特徴であった。「リスク」という用語を用いて表すこと自体の再検討が課題となった。 (2)子育ておけるリスク支援・予防支援を意識した子育て支援事業の特徴:4施設の調査から、母子保健・小児保健およびソーシャル・ワークの視点をもった支援の必要性が浮かび上がり、①保健所等の母子保健領域の専門機関や専門職(保健師など)との妊娠期からの継続的連携、②ソーシャルワーカーなど地域の福祉事業に関わっている福祉職との協働、③心理職による発達の査定や親面接による支援など、保育職以外の専門職の子育て支援事業への参画や連携の重要性を見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始時には、調査対象として設定した、子育ての困難さ、高ストレスでの子育てに対する支援や、予防的支援に力点を置いた支援事業を実践している施設についての情報を収集し探し出すことが難しく、年度当初に予定していた10施設ではなく、4施設への調査となった。しかしながら、どの施設も、それぞれの地域の社会文化的、歴史的特性をふまえ、施設の設立特性を活かして、特徴的な支援事業を実施しており、支援職への聞き取り調査から多くの有用な示唆を得ることができた。①妊娠期からの一貫した母子保健・小児保健事業の中でのリスク親子の早期発見・早期対応のシステムをもつ保健センターとの連携および保健師や心理職と共同した支援活動の展開、②子育て支援センターのスタッフとしてソーシャルワーカーが参画して支援内容を構成したり、地区の民生委員などソーシャルワークの視点を持った地域の人材や機関と連携することが、子どもの成長という時間経過に即しながら地域という空間全体の支援力を高めていくという支援を可能にしていた。このような調査結果の分析により、保健と福祉分野の専門性を踏まえつつリスク支援・予防支援のための支援職の専門性を追求していくという方向性が見出された。このことは、今後の調査対象や調査内容の明確化につながるものでもあるととらえた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.国内調査:聞き取り調査によって保健と福祉分野の専門性を踏まえつつリスク支援・予防支援のための支援職の専門性を追求していくという方向性が見出されたので、聞き取り対象を広げ、保健師や心理職、ソーシャルワーカーが子育て支援、特にリスク支援・予防支援に関わる際の専門性とそれによって広がる支援職の役割を検討することを目的に加えて、国内での聞き取りと観察による調査を行い、研究の進展に努めることとする。 また、25年度は地域特性に着目して調査を行う計画であるが、2~3か所の地域を対象として、子育て支援拠点と他機関や地域住民との協力・連携について、その地域の子育て支援施策やシステム全体を把握した上で検討する。 2.海外調査:海外調査については、当初計画していた保健センターと連携したイギリスのチルドレンズセンターにおける子育て支援の調査は、24年度にこのイギリスの支援方法を導入した国内の施設を調査したことで情報を得られたことから実施せず、調査対象国を保健領域との連携による子育て支援を展開するフィンランドに変更し、8月に訪問、調査を行う。 3.「リスク」の定義の再検討:子育てのリスクを「子どもの健全な成長と親の成長を阻害するもの」と定義し、その予防支援ができる支援者の養成、研修のモデルを作成することを研究目的としていた。予防支援のできる支援者の養成という目的に変更はないが、文献などを通して、子育てにおける「リスク」の定義の再検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.国内の子育て支援施設とその地域の調査の費用(旅費、宿泊費、謝礼) 2.海外の子育て施設の聞き取り、観察調査の費用(旅費、宿泊費、謝礼) 3.聞き取り調査記録の文字化、観察記録のデータ化等の資料整理に関わる費用 4.研究発表のための学会参加費(ヨーロッパ幼児教育学会(エストニア)、保育学会他)
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Research Products
(5 results)