2013 Fiscal Year Research-status Report
衰退する伝統産業と関連生活景観の観光資源化による維持・保全に関する研究
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24500911
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
藤木 庸介 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (70314557)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 香 京都嵯峨芸術大学, 芸術学部, 講師 (50510583)
向坊 恭介 立命館大学, 理工学部, 助教 (80512748)
宗本 晋作 立命館大学, 理工学部, 准教授 (20581490)
平尾 和洋 立命館大学, 理工学部, 教授 (00252479)
真板 昭夫 京都嵯峨芸術大学, 芸術学部, 教授 (80340537)
宮尾 学 滋賀県立大学, 人間文化学部, 助教 (80611475)
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Keywords | 有松絞り / 中国雲南省 / 土産物 / 観光地 / サプライヤーシステム / プロダクト |
Research Abstract |
平成25年度は、昨年度に引き続き、竹田嘉兵衛商店が所有する絞り文様の現物調査、並びに、竹田耕三氏に対するヒアリングを行い、昨年度の調査蓄積を補完した。また、当該調査結果を絞り文様画像と共にデータベース化して整理し、アーカイブの作成を行った。 尚、竹田耕三氏は昨秋に他界され、死去の直前まで行った当該ヒアリングが竹田氏に対する最後のヒアリングとなった。有松絞り研究に関する権威であり、日本を代表する絞り作家であった竹田氏の絞りに関する知見とその活動を体系的に整理したものはこれまでになく、したがって当該データベースは竹田氏の研究をアーカイブする上でも重視され得るものと言える。このことから、現在、当該データベースの出版計画がもちかけられている。 以上に加え、有松絞りプロダクト(以下「絞りプロダクト」)の主要下請け先である中国雲南省・昆明市、大理白族自治州巍山、大理市周城等の各染色工場において、絞りプロダクトの現物調査、並び流通と生産に関するヒアリングを行い、①「有松の絞り技術の伝播実態とその活用」②「現在における絞りプロダクト生産の実態」③「絞りプロダクトのサプライヤーシステムの実態」といった3点を主に明らかにした。更には、こうした絞りプロダクトが中国国内の観光地(例えば、大理旧市街地や麗江旧市街地等)で当地の土産物として販売されている実態を突き止め、これらが、①「どの様なルートで販売されているのか」②「どの様な位置づけで販売されているのか」③「どの様な対象が当該プロダクトを購入するのか」といった3点を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中国の各染色工場におけるヒアリングからは、①「有松絞りに特有の絞り技術は、中国の下請け先に殆ど定着していない」②「有松から伝播した絞り技術や文様についても、当地におけるオリジナルなものとして扱われる傾向がある」といったヒアリング結果が得られた。有松側の発注者に対するヒアリングから、中国でのこうした現象は、絞りプロダクト生産におけるサプライヤーシステムに影響を及ぼす要素である事が明らかとなった。これは、有松絞りの衰退に対する分析と、今後の有松絞りプロダクト再興を考察する上で次年度に繋がる有用な知見と言える。 また、竹田嘉兵衛商店における絞り文様アーカイブについては、「研究実績の概要」に既述したとおりであり、非常に有用な成果を挙げているといえる。 尚、本研究申請時には25年度において、「建造物の耐震性能評価・広域防災評価」を予定していた。「建築物の耐震性能評価」については、既に24年度の内に概ね終了し、論文発表済みである。ただし、「広域防災評価」については、昨年に引き続き、有松地区を対象とした「重要伝統的建造物群保存地区」選定へ向けた活動が現在のところ名古屋市によって行われており、当該活動との関連において、「広域防災評価」の実施自粛要請が名古屋市側から我々に対して行われた。こうした自粛要請が我々に対して行われること自体に疑問があるが、諸事を鑑み、大変遺憾ながら当該調査は行わない事とした。しかしこの事のみによって、本研究の目的が達成し得ぬものとは言えない事から、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は、有松絞りプロダクトな新たな展開、特に、ヨーロッパにおける展開に注視する。これはすなわち、新たな絞りプロダクトがモードとの関係において、どの様に位置づけられるかといった事象に関連し、①「開発経緯」②「特にヨーロッパといった海外におけるニーズとそのイメージ」③「ヨーロッパにおける絞りプロダクトのサプライヤーシステム」といった要素を明らかにすることにある。 以上から、絞りプロダクトに関するニーズの傾向を分析し、今後の絞りプロダクト生産に役立つ知見の獲得を目指す。 また、有松地区における歴史的な町並みや伝統的民家のイメージとその実態が、新たな絞りプロダクトの展開と関連することで創出される、「観光地としてのイメージ」について分析と考察を行い、有松における絞り産業と伝統的な生活景観を観光資源化し、これによって維持・保全を行う為の知見の獲得を目指す。 更には、研究協力者である有松における絞り職人と共同の上、有松絞りの普及と絞り技術の伝承、並びに新たな絞りプロダクトの開発を目的としたワークショップを、有松地区現地において開催する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
中国への調査渡航が、当初見込んでいた額よりも安価に行えた事による。 ヨーロッパへの調査渡航に対する費用に補填する上、英文論文執筆時のネイティブチェック等への出費に使用する。
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Research Products
(7 results)