2013 Fiscal Year Research-status Report
食べやすさ・機能性を考慮した高齢者のためのパン調理・加工品の開発研究
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24500954
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
高橋 智子 神奈川工科大学, 応用バイオ科学部, 教授 (10364861)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田山 二朗 独立行政法人国立国際医療研究センター, 医科学研究所・耳鼻咽喉科, 医長 (50221403)
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Keywords | ゲル状パン粥 / テクスチャー特性 / 脆性破断 / 延性破断 / 官能評価 / 筋電位測定 / 嚥下時筋活動時間 |
Research Abstract |
本年度は、全粉乳により調製したミルク溶液、加えて高齢者のためのエネルギー補給を考えたミルク溶液の一部をサラダ油に置換した液状食品(昨年度の添加液状食品としての蒸留水は削除)を用いた均一ゲル状パン粥を調製し、その力学的特性と官能評価、筋電位測定による食べやすさの評価を試料品温を変えて(20℃、45℃)検討した。試料の全圧縮破断試験より得られたひずみと荷重の関係において、試料品温45℃の試料、ことにサラダ油置換パン粥試料は延性破断を示し、そのテクスチャー特性は軟らかく、付着性はミルク溶液添加パン粥試料に比べ、大きい傾向を示した。試料品温20℃の試料では、2試料ともにひずみ-荷重曲線に明確な破断点を示し、その破断特性値はサラダ油置換パン粥試料がミルク溶液添加パン粥試料に比べ、有意に小さいものとなった。官能評価結果より、サラダ油置換パン粥試料はミルク溶液添加パン粥試料に比べ、いずれの試料品温においても、口中でやわらかく、べたつき感があり、口中から喉へ食塊が送り込みにくい傾向にあることが示された。いずれの試料についても被験者が口中に取り込んで嚥下開始するまでの咀嚼は、歯を用いず舌と口蓋によるものであった。嚥下時筋電位測定の結果、軟らかく、延性的なひずみ-荷重曲線を示す試料品温45℃のサラダ油置換パン粥試料の筋活動時間は、ミルク溶液添加パン粥試料に比べて有意に長いことが認められた。以上の結果より、ゲル強度が小さく、延性破断を示し、またテクスチャー特性の付着性を構成する付着時間が長い試料品温45℃のゲル状パン粥はゲル強度が大きい試料品温20℃試料に比べ、口中から喉へ送り込む際に口腔内や喉に粘着しやすいため、嚥下時の筋活動時間も長くなり、また、嚥下時に筋活動量も要することが推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に調製したペースト状パン粥にゲル化剤(ネイティブジェランガム)を添加しゲル状パン粥を調製した。昨年度はパン粥に用いる液状食品として蒸留水、ミルク溶液、ミルク溶液の10%をサラダ油に置換した3種類を用いたが、本年度は蒸留水を削除した。ゲル状ミルクパン粥試料、高齢者のためのエネルギー補充を考慮したゲル状サラダ油置換パン粥試料について、温度の異なる試料について、力学的特性として、破断特性を中心に評価を行った。また、品温20℃および45℃のゲル状パン粥の食べやすさの評価として、一対比較法による官能評価、咀嚼の状態の把握、嚥下筋電位測定を行った。その結果、エネルギー補充のためにサラダ油を添加することで、ことに、温かくして食べる試料品温45℃において、口中感覚でべたつき感があり、また、嚥下時筋電位測定の結果より筋活動時間が長くなり、食べにくくなるとことが示唆された。エネルギー補充のために液状食品の一部をサラダ油に置換したゲル状パン粥が食べにくくなるという結果より、このことを解決するべく、次年度に研究を続行する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度はゲル状サラダ油置換パン粥を食べやすくすることについて検討することを第一とする。昨年度特別養護老人ホーム管理栄養士立ち会いのもと、摂食機能が低下した高齢者に、ゲル状サラダ油置換パン粥試料にゆるいゲル状のフルーツソースをかけて食べてもらったところ、残食もなく、途中むせることもなく食べることができた。このことより、ゲル状サラダ油置換パン粥に流動性のあるゲルをかけることで、ゲル状サラダ油置換試料も食べやすくなると推測される。そこで、力学的特性(流動特性等)を把握した流動性のあるゲルを調製する。流動性のあるゲルを付加することで、ことにゲル状サラダ油置換パン粥の力学的特性(テクスチャー特性、表面摩擦特性、破断特性)がどのように変化するかを検討する。また、食べやすさの評価(官能評価、筋電位測定、研究分担者と共に行うVEなど)を検討する。加えて、食塊のテクスチャー特性の変化、また、食塊中の水分量、唾液量が食べやすさに及ぼす影響についても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度助成金の残額が発生した理由として、実験補助員の就労日数が予定したよりも少なかったためである。それにより、人件費の使用金額が予定よりも少なかったことが大きな理由である。 平成26年度は、平成25年度繰越金を含め、実験補助者に対する人件費が主となる。加えて、研究分担者研究成果発表のための旅費、研究分担者の実験のための被験者謝金、人件費等に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)