2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500981
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nayoro City University |
Principal Investigator |
山本 達朗 名寄市立大学, 保健福祉学部, 講師 (90379389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 直道 名寄市立大学, 保健福祉学部, 教授 (10341679)
山本 綾子 名寄市立大学, 保健福祉学部, その他 (80414134)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脂質栄養 / 脳発生 / 神経細胞 / グリア細胞 / 細胞移動 / 細胞分化 / 情動行動 |
Research Abstract |
本研究は、栄養学的因子である脂質栄養、特に多価不飽和脂肪酸であるn-3系の脂肪酸の脳発生における役割を検討するために行われた。研究計画としては、母胎に給餌する餌をバランスよく脂質を含む食餌とn-3系多価不飽和脂肪酸が極端に欠乏した食餌を用意し、妊娠前より給餌することにより、正常群と慢性的にn-3系多価不飽和脂肪酸を欠乏した群を作出し、脳の神経細胞およびグリア細胞の発生パターンを検討するものであった。 検討にあたっては、研究計画では初年度に遺伝子導入装置を購入し、25年度より子宮内エレクトロポレーションによる神経細胞の標識およびその発生過程の追跡を行う予定であったが、予算の都合により、これらの実験を変更し、同等の結果が得られると考えられるBrdUを用いた細胞の誕生日標識法と各種細胞マーカーの二重標識による細胞発生運命の探索を24年度研究より行うこととした。また、n-3系多価不飽和脂肪酸の欠乏母胎より生じる仔は、グリア細胞などの形態や大脳皮質中に占める興奮生および抑制生細胞の比率等に影響を与えている可能性が示されていたことから、これらの現象による生後脳機能への影響を調べるために、26年度に予定していた行動学的な所見を計画を早めて取り組むこととした。これに伴い交付された予算を考慮しANY-meze Video Tracking system(ブレインサイエンス・イデア社)を導入し、肉眼的な観察と機械を用いた客観的な観察ができる体制を整えた。これらの装置導入によりn-3系多価不飽和脂肪酸欠乏の仔の情動性の異常を見いだした。 これらの研究によって得られた成果については、2012年(日本神経科学大会)においてポスター発表した。これらの内容をまとめた論文を現在執筆中であり、2013年5月中には投稿の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示したように、本研究は形態学的手法を行い、その後行動学的検討を行う予定であったが、行動学的検討を計画より早い段階で実施した。この解析によって、n-3系多価不飽和脂肪酸の欠乏が、生後の動物の行動に与える影響について検討することができた。行動学的解析は、研究全体の三分の一を占める研究内容になっており、1年を経過した現時点では、進度に問題はないと考えている。また、昨年度の研究期間において、エレクトロポレーションの機械購入を断念した経緯より、それに変わる研究手法として、BrdUを用いた細胞標識を行っている。適切な妊娠時期にBrdUを投与し、適宜サンプルの採取を行っている。これらの組織標本に対する各種マーカー分子を用いた解析は今年度の主な研究になる点において、昨年度より標本採取ができていることは、今後の研究進捗に良い影響をもたらすと考えている。 また、経時的な神経発生パターンを検討するために、BrdUとEdUを用いた二重誕生日標識法を検討している。これにより、細胞移動速度などについてより明確に検討できると同時に、これら標識細胞に対して、分子マーカーの免疫染色を行うことによって、大きな時期的な変化から微細な時期的な変化まで幅広く脳を構成する細胞の発生運命を検討することができると考えている。 これらのことから、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで申請者は、主に母胎より影響を受けたn-3系多価不飽和脂肪酸欠乏動物の行動パターンを検討してきた。しかし、これまでは情動性に関わる部分がほとんどであり、記憶や空間認知能力、さらには社会性という脳機能については詳細に検討していない。今後は、行動学的な研究において、バーンズ迷路やモリス水迷路、社会性研究用スリーチャンバーなどを導入し、あらゆる側面から母体からの影響による脂肪酸欠乏の仔の脳発達における影響について検討していきたい。 また、行動学的な検討と平行して、形態学的な解析を精力的に進め、行動学的データと形態学的データの相関性などについて検討していきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
脳は多くの細胞により作られているが、細胞の構成はいくつかの分類に分けることができる。例えば、神経細胞とグリア細胞や、興奮性の投射ニューロンと抑制性の介在ニューロンなどである。また、細胞によっては、発生する時期なども決まっており、神経細胞は主に胎生期、グリア細胞は生後に発生する細胞も存在する。本研究では、主に免疫組織化学法を用いて、経時的に採取した脳サンプルの各部位に局在する細胞を同定し、n-3 PUFAs欠乏脳と正常脳の比較を行う。この研究によって、n-3 PUFAs欠乏脳に存在する神経細胞とグリア細胞の比率や、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンの比率などを詳細に解析する。必要に応じて、細胞の誕生日標識マーカーBrdUを投与し、各種抗体との二重免疫組織化学法を行うことによって、それぞれの細胞の発生運命に対するn-3 PUFAs欠乏の影響について検討する。最終的にはn-3 PUFAs欠乏脳の各種細胞の局在マップを作成し、n-3 PUFAs欠乏の脳の形態形成における影響について明らかにする。この研究に関しては、研究全般を山本達朗と山本綾子研究員の両名により遂行する。各種抗体などについては、現在研究室で用いられている抗体を用いるため、細胞局在マップ作成までの行程においては、問題なく進むと考えられるが、進まない場合は、他のメーカーの抗体を適宜選択し、明瞭な発現パターンが得られるまで十分に検討を行う。
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Research Products
(4 results)