2012 Fiscal Year Research-status Report
経口栄養食品と健康食品素材の混合による炎症性腸疾患に対する修飾作用
Project/Area Number |
24501008
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
千原 猛 藤田保健衛生大学, 藤田記念七栗研究所, 講師 (00217241)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 高温高圧処理ニンニク / デキストラン硫酸ナトリウム / 潰瘍性大腸炎 |
Research Abstract |
潰瘍性大腸炎は大腸癌のリスクファクターで、その予防・病状改善は大腸発癌の予防につながると考えられる。我々はこれまでに、連携研究者の東口らが腸管への臨床効果を報告している経口栄養食品GFO(G:グルタミン、F:水溶性ファイバー、O:オリゴ糖)と同等のGFO混合物でのデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発マウス潰瘍性大腸炎モデルでの検討において、大腸組織保護作用によると考えられる効果を報告してきた。その混合物に抗炎症作用等が期待される健康食品素材の添加はより有効的と考え、我々が作製した高温高圧処理ニンニク(HTPG)との混合を検討することにした。 そこで、本年はHTPGの同モデルに対する修飾作用を検討した。雌性C57BL/6Jマウスを1~4群に分け、飲水は1群に水、2~4群に2%DSS溶液を与えた。飼料は1と2群に基礎飼料、3と4群にはHTPGを高濃度、中濃度(高濃度の1/3)に基礎飼料に混合した混餌を与えた。実験開始7日後では、大腸萎縮度を示す大腸長、肥厚度(大腸重量と大腸長の比)とも中濃度の方が良好な結果であった。そこで3と4群の飼料を中濃度、低濃度(高濃度の1/15)混餌とし、実験開始6日後で再検討した。大腸長には変化が認められなかったが、肥厚度は1群に対し2群(P<0.01)、3群(P<0.05)が有意な高値に対し4群では有意差は見られなかった。白血球数は、1群に対し2群のみが有意に(P<0.05)高値であった。さらに好中球浸潤に関与するケモカイン、macrophage inflammatory protein(MIP)-2の大腸粘膜mRNA発現レベルも、1群に対し2群が有意に(P<0.01)上昇したのみで、これらの結果よりHTPG低濃度~中濃度混餌が有用である可能性が示唆された。 現在、炎症関連サイトカインの大腸粘膜mRNA発現および血漿中濃度の分析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はこれまでにデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発マウス潰瘍性大腸炎モデルで検討を行ってきた経口栄養食品GFO(G:グルタミン、F:水溶性ファイバー、O:オリゴ糖)と同等のGFO混合物に、抗炎症作用等が期待される健康食品素材を添加しての修飾作用を検討する予定であった。 その健康食品素材は、我々が作製した高温高圧処理ニンニク(high temperature- and pressure-treated garlic ; HTPG)であった。このHTPGはポリフェノール含有量が増量、抗酸化能が増強していることが特徴で、ラット大腸前がん病変形成を抑制することを我々は既に確認している。まず、GFO混合物と混合する前に、HTPGの投与濃度を決定する検討を行わなければならなかった。ラットの大腸前がん病変抑制結果より考え、基礎飼料への高濃度での混餌においての抑制効果を予測し、検討を重ねたが良好な結果は得られなかった。最終的には低濃度~中濃度の混餌で有用な結果が得られつつあるが、この検討に非常に時間を要した。そのため、GFO混合物にHTPGを添加しての検討は本年度内に実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、これまでにDSS誘発マウス潰瘍性大腸炎モデルにおいて大腸組織保護作用が示唆されているGFO(G:グルタミン、F:水溶性ファイバー、O:オリゴ糖)混合物と24年度に有用な混餌濃度(中濃度~低濃度)が明らかになった高温高圧処理ニンニク(HTPG)との混合混餌を用いて上記モデルでの検討を行う。 実験は次のように行う。雌性C57BL/6Jマウスを1~7群に分け、次のように飲水と飼料を与える。1~4群は2%DSS溶液飲水群とし、1群には基礎飼料、2群にはGFO混合物混餌、3群にはGFO+HTPG中濃度混餌、4群にはGFO+HTPG低濃度混餌を与える。5~7群は飲水を水とし、5群は1群、6群は2群、7群は3群と同様の飼料を与える。実験開始7日後に次の測定を実施する。①DSS投与期間中は体重測定、便性状、血便の状態観察を行い、潰瘍性大腸炎の活動指標であるDAI(disease activity index)スコアを算出し各群で比較する。②大腸の萎縮度、肥厚度の測定。③炎症関連サイトカイン、IL-1β、IL-6、GM-CSF(顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子)の血漿中濃度測定。④抑制効果マーカーとしての赤血球ポリアミン測定。⑤潰瘍性大腸炎発症に関与するマクロファージ炎症性タンパク質-2(MIP-2)、一酸化窒素合成酵素(iNOS)、プロスタノイド合成酵素(COX-2)、転写促進因子(NF-κβ)の大腸粘膜mRNA発現レベル測定。⑥病理組織標本より炎症状態を各群間で比較する。なお、抑制効果がみられない時には、GFO混合物、HTPGの混餌濃度を再検討する。 また、上記実験が早期に明確な抑制効果が得られた時には、大腸前がん病変、ムチン枯渇巣(mucin-depleted foci ; MDF)に対する修飾作用の検討をFemiaら(2009)の報告を参照に実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度の検討を実施するにあたり、下記の試薬等が必要となる見込みである。①マウス購入費、飼育維持費(飼料、床敷き)および潰瘍性大腸炎誘発試薬のデキストラン硫酸ナトリウム購入費。②血漿中の炎症関連サイトカイン濃度測定のためのEnzyme-Linked Immunosorbent Assay(ELISA)キット購入費。③潰瘍性大腸炎発症関連酵素等の大腸粘膜mRNA発現レベル測定でのRNA抽出キット購入、リアルタイムPCR用試薬購入およびプライマー合成費。④赤血球ポリアミン測定用試薬(高速液体クロマトグラフィーで分析)。⑤病理組織標本作製用試薬。
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Research Products
(2 results)