2012 Fiscal Year Research-status Report
障害の程度に応じたゲーム映像加工により誰もが参加可能となる運動療法ゲームシステム
Project/Area Number |
24501226
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
田中 一基 近畿大学, 工学部, 教授 (60351657)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | コンピュータビデオゲーム / エクサゲーム / シリアスゲーム / モーションキャプチャ / 障害者適応支援 |
Research Abstract |
運動療法のためのコンピュータビデオゲームとして,風船バレーボールのゲーム(2人用)を開発した.風船バレーボールとは,高齢者の療養施設などでポピュラーな集団ゲームであり,風船が床に落ちないよう手で打ち上げる競技である.本ゲームのシステムは,プレイヤのモーションキャプチャデータを入力とし,プレイヤ(2人)のアバタおよびボールのCG映像をモニタに出力する.プレイヤの運動能力の差を補う支援のため,モニタをプレイヤごとに設置し(2台),運動能力に応じて加工された映像(テーラーメイドゲーム映像)がそれぞれ提示される仕組みを実現した.具体的には,「ボールの大きさ」または「プレイヤ間の距離」が異なるゲーム映像が生成される.「プレイヤ間の距離」については,プレイヤの運動能力に見合う距離を最適化計算で求める手法を開発した. 次に,本システムの有効性を,「ボールの大きさ」と「プレイヤ間の距離」のそれぞれの加工について実験的に検証した.被験者を2グループに分け,一方のグループには,不自由な身体状況を与える装着具を付けてプレイすることを要請した.この装着具により,視野狭窄と関節運動の抑制が生じる.また実験は,映像の加工を行う場合と行わない場合(すなわち「ボールの大きさ」と「プレイヤ間の距離」を変えない場合)の2セッションを行った.結果は,映像の加工を行った場合は,行わなかった場合に比べて,いずれも不自由な身体状況のグループの得点が統計的有意に上がった. 以上により,体力の異なる者どうしが対等に競えるゲームを実現するテーラーメイドゲーム映像の考えを,国際学会で提案することができた.一般に,複数のプレイヤが競うビデオゲームでは,プレイヤが同じ状況を共有することが常識である.テーラーメイドゲーム映像はこれを打ち破るものであり,集団ゲームと各人の個別の運動療法の両立が可能となるゲーム設計要素として意義深い.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の目的は,2人用のゲームシステムを開発して簡易評価を行い,次年度以降の研究の見通しをたてることである. これに対し,(1) 2人用ゲームシステムを開発した,(2) 提案するテーラーメイドゲーム映像について,被験者実験によりその効果を統計的示すことができた.これは簡易評価以上の成果である,(3) (1)(2)により,平成25年度の課題に向けて準備が整っている,以上により,当初の計画以上の達成度と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度 適応支援手法を実用レベルで確立し,ネットワークゲーム化により3人以上が参加可能なシステムに拡張する.具体的には次の2つに取り組む.(1) テーラーメイドゲーム映像の生成手法の完成:テーラーメイドゲーム映像で生じる違和感を解決する手法を開発する.次にこの手法を被験者実験により評価する.学生に参加してもらい,不自由な身体状況を与える装着具を用いて実験を行う.(2) ネットワークゲーム化:競技相手の3Dモデル(アバタ)の簡素化などレンダリング速度向上,情報圧縮による通信速度向上,などに取り組み,3人以上のシステムの基盤を開発する.情報通信が専門の連携研究者(藤野貴之,近畿大学工学部)のアドバイスを受けて取り組む. 平成26年度 3人以上の適応支援手法の開発と実践・評価を行い,手法を体系化して研究のまとめを行う.具体的には以下の3つに取り組む.(1) 3人以上の適応支援手法の開発:ゲームの参加者が多数の場合のグルーピング法を開発する.グルーピングは,グループメンバに必要な映像加工の処理量の最小化などを検討する.オペレーションズリサーチが専門の連携研究者(片岡隆之,近畿大学工学部)のアドバイスを受けて取り組む.(2) 実践・評価:開発したシステムを,運動効果・モチベーション維持など多角的に評価する:連携研究者(金井秀作・大田尾浩,県立広島大学保健福祉学部)の援助により実施する.(3) 手法の体系化とまとめ:障害のタイプ・程度の観点から適応支援の手法を体系化し,研究をまとめる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)