2012 Fiscal Year Research-status Report
温暖化に伴う夏季天候の変容とヤマセ型冷夏の出現可能性に関する研究
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24501283
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
境田 清隆 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (10133927)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 信人 宮城大学, 食産業学部, 助教 (90422328)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ヤマセ |
Research Abstract |
研究代表者:東北地方の太平洋側と日本海側地点の気温偏差を用いて冷夏型の措定を行い、約120年間にわたる冷夏型出現傾向を調べた。その結果、今世紀に入っても第一種型冷夏は出現しているが第二種型冷夏はほとんど姿を消していることが明らかになった。また海面水温のデータを収集しデータベースを作成しているが、対象海域を拡大する必要を感じている。さらに平成24年度は、ヤマセ出現日の太平洋側地点と日本海側地点の対照性に着目し、ヤマセが奥羽山脈を越す過程を確かめるために、蔵王山で気温と湿度の観測を実施した。その結果、宮城県側で低温・湿潤であったヤマセは山形県側に吹き越す過程で高温・乾燥となるが、風上-風下における対照性は、気塊が水蒸気を多量に含むほど(季節が進行するにつれ)顕著となる傾向が指摘できた。 研究分担者:NCEP/NCAR再解析値の850hPa面における温位と相当温位のデータを用いて、客観的手法により日本付近の前線帯データを作成した。そしてそのデータを用いて前線頻度分布と夏季日本の気温偏差分布のパターンの関係を調査した。その結果、北冷西暑型の気温偏差分布年においては、東北日本と西南日本の間を東西に伸びる前線帯が明瞭化(前線頻度の増加)する傾向が指摘された。すなわち客観的手法による前線帯の分布と気温偏差パターンとの間の密接な関係を定量的に示すことができ、今後他の気温偏差分布型についても検討していきたいと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者において交付申請書に記載した冷夏型の措定や出現傾向の解析はほぼ予定通り、終了した。海面水温データのデータベース化についても概ね終了したが、対象海域を拡大する必要を感じている。また新たに蔵王山で気温観測を開始し、2012年度分は回収済みだが、この2012年の夏季はヤマセの出現が少なかったので、2013年度以降も観測を継続する予定である。そのデータ収集は次年度に持ち越している。 研究分担者においてはNCEP/NCAR再解析値を用いた客観的前線帯データの作成は予定通り終了した。気温偏差型との対応関係については検討方法にひと工夫が必要と考えている。「夏季」といっても梅雨季・盛夏季・秋雨季では前線帯の認定の閾値が異なることから、年による季節進行の相違をどのように解析方法に組み込むか、客観的検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究分担者が使用するNCEP/NCAR再解析値が850hPa高度であり、蔵王山頂の観測値と対照可能であることが判った。前線帯の北側の気団が大陸性か海洋性かによって水蒸気含有量に差があり、山越え気流の振る舞いに反映するので、ヤマセ・前線帯・山越え気流の3者の密接な連携を意識して研究を進めていきたい。また、梅雨季・盛夏季・秋雨季という夏季の季節進行が年によって大きく異なり、「7月中旬」等と機械的に時期を分けて解析することが妥当ではないと考えられる。夏季の気候変動が、こうした季節区分の時期的ズレによるものか、細分された季節の内容が変わってきているのか、という問題意識を持って作業に当たりたい。これまでの多分に主観的な季節区分ではなく、気団と前線帯を温位と相当温位を用いた客観的な指標で認定することで、季節区分も客観的に行える可能性が高まり、これを用いた気候変動研究への展開が見えてきた。こうした観点から、研究分担者との連携をさらに強めていきたいと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費としては、気象業務支援センターのデータ購入を考えている。 旅費としては、山形県・秋田県・岩手県の地方気象台に眠る(手書きの)観測データ、特に山岳観測所のデータの入手を考えている。また成果の上がったものから、地理学・気象学の学会発表を活発に行っていきたい。 謝金としては、データ収集および解析において学生院生への謝金の支出を考えている。 その他としては、8月の国際地理学会への参加登録費、研究成果投稿料への支出を考えている。 なお今年度の研究を効率的に推進したことに伴い生じた若干の未使用額は、平成25年度請求額と合わせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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