2013 Fiscal Year Research-status Report
リバースTR(橋渡し研究)としての腫瘍内免疫応答の解析とバイオマーカーの検索
Project/Area Number |
24501329
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
垣見 和宏 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (80273358)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上羽 悟史 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00447385)
阿部 淳 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50581831)
松下 博和 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80597782)
|
Keywords | 胃がん / 癌性腹膜炎 / γδT細胞 / 細胞傷害性T細胞 / CTL / 骨髄性抑制細胞 / MDSC |
Research Abstract |
①臨床試験で得られた検体の解析 胃がんによる癌性腹膜炎のため腹水が貯留している7名の患者に対して、末梢血中のγδT細胞をゾレドロン酸とIL-2を用いて選択的に培養増殖させ、得られたγδT細胞を腹腔内に投与し(試験名:腹水貯留胃癌に対するγδT細胞治療、臨床試験審査委員会:P201019-11Z、UMIN-CTR:UMIN000004130)その結果をCancer Med誌に報告した(Wada et al. Cancer Med 2014 Feb 7. doi: 10.1002/cam4.196)。投与したγδT細胞は免疫抑制分子Tim-3を強発現していた。Tim-3のリガンドであるガレクチンの血清中の濃度は、癌患者では健常者より上昇しており(3.3±1.4 ng/ml vs 0.8±0.4 ng/ml)、腹腔内のガレクチン濃度は更に高値(7.8±5.3 ng/ml)であった。癌性腹膜炎患者の腹腔内(腹水中)は、免疫抑制性の環境であり、ガレクチン/Tim-3を制御することで更なる抗腫瘍効果が得られる可能性が示唆された。 ②免疫細胞治療モデルマウスを用いた免疫動態の解析 B16メラノーマ細胞を皮下に接種した担癌マウスに対するCTLの抗腫瘍効果を解析するモデルにおいて、腫瘍内に浸潤したCTLにより腫瘍の増殖は抑制されるものの、同時に腫瘍内にはCD11b+Gr-1+の骨髄性抑制細胞(MDSC)が浸潤してきた。特にLy6G-Ly6C+ Monocytic MDSCが浸潤することを明らかにした。NO、ROS、Arginase等の抑制性分子を発現し、CTLの増殖を抑制するため、CTLの抗腫瘍効果を阻害していることを明らかにし、Int J Cancer. 2014;134(8):1810-22に報告した。MDSCの制御がCTL治療の抗腫瘍効果の増強につながると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、東大病院において実施しているTRで得られた患者検体と臨床情報をフィードバックした解析と、治療モデルマウスを用いた免疫動態の解析を機能的に統合し、免疫細胞治療に於ける症例選択と治療効果判定に重要なバイオマーカーを同定することが目的である。 まず、ヒトがん免疫治療の臨床試験を実施して患者の検体を採取し免疫モニタリングをおこなうことを重要であるが、本年度は、7例の胃がんによる癌性腹膜炎患者に対してγδT細胞の腹腔内投与を実施した。末梢血および腹水を採取して詳細な免疫動態解析を実施することができた。特にγδT細胞が腹腔内でがん細胞を認識して結合し、IFN-γやTNF-αの産生を確認したことは、γδT細胞の抗腫瘍効果を初めて直接証明した非常に意義深いものである。腹腔内の免疫抑制性分子であるガレクチンが大量に存在することが明らかになったことから、今後その制御法の開発が望まれる。 モデルマウスにおいても、CTL治療による腫瘍内での免疫応答の詳細な解析により、CTLは、強い抗腫瘍活性と持つとともに(アクセル)、免疫抑制性の細胞であるMDSCを大量に腫瘍内に呼び寄せる(ブレーキ)作用を持つことが明らかになった。抑制性T細胞(Treg)に加えて、MDSCの制御、あるいはMDSCが産生する抑制性の分子であるROS、NO、Arginase等の分子の制御により、CTLの持つ抗腫瘍効果を更にたかめることが可能であると期待される。また、MDSCはCCR2受容体を発現しており、CTLが産生するIFN-γにより腫瘍内に産生されるCCR2リガンドにより腫瘍内へ浸潤することから、CCR2およびそのリガンドも腫瘍内の免疫応答の制御分子となりうる。腫瘍内での免疫応答の解析により、免疫抑制性の環境を形成している分子を同定することができた。 以上のことから、本研究は概ね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在CTLA-4, PD-1, PD-L1分子を標的とした治療が、免疫制御作用により抗腫瘍効果が得られると注目され、臨床応用されているが、これらはすべてT細胞に発現する分子とそのリガンドを標的としている。我々の研究により、末梢血よりのより腫瘍局所に近い環境を解析できると考えられる癌性腹膜炎患者の腹水中では、制御性T細胞(Treg)やMDSC等の抑制性の細胞や、ガレクチン等の免疫抑制分子が存在することが明らかになった。マウスのCTL治療モデルでは、腫瘍内では、T細胞に加えて免疫抑制性の細胞、特にMDSCが腫瘍内に浸潤し免疫抑制性の環境を構成することを明らかになったが、今後、免疫制御の標的としては、T細胞上の分子としてTim-3を標的とした免疫制御法の開発や、CTL治療と腫瘍認識にやるIFN-γの産生に伴うMDSCの腫瘍内への浸潤を標的とした治療、MDSCそのものを標的とした治療、そしてMDSCが産生する分子を標的とする治療が考えられる。 γδT細胞治療では、Tim-3とガレクチンの免疫抑制が示唆されたが、その作用を抑制するための候補としてメトホルミンの作用を検討したい。予備的な検討では、メトホルミン存在下でγδT細胞を培養するとTim-3の発現を抑制する可能が得られており、γδT細胞の機能がTim-3の発現の有無により差が認められるか、更にガレクチンの存在下での機能を検討したい。 上記の免疫抑制の各ステップに作用する薬物を治療モデルマウスに投与し、抗腫瘍免疫応答の増強を試みる。分子生物学・細胞生物学・免疫組織化学的手法を統合的に用いて抗腫瘍免疫動態を解析し、治療効果を予測するバイオマーカーを検索する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度内の研究費は計画通りに使用し、次年度使用額の発生はないと思われたが、研究分担者の研究費の支出に775円の余剰金が発生していた。研究代表者が余剰金が発生していることを把握できたのが、既に会計年度を終了したあとであった。 平成26年度の研究費全般に含めて使用する。 分担研究者とその所属機関との連絡をより緊密に行い対応する。
|
-
[Journal Article] Vaccination with NY-ESO-1 overlapping peptides mixed with Picibanil OK-432 and montanide ISA-51 in patients with cancers expressing the NY-ESO-1 antigen.2014
Author(s)
Wada H, Isobe M, Kakimi K, Mizote Y, Eikawa S, Sato E, Takigawa N, Kiura K,Tsuji K, Iwatsuki K, Yamasaki M, Miyata H, Matsushita H, Udono H, Seto Y, Yamada K, Nishikawa H, Pan L, Venhaus R, Oka M, Doki Y, Nakayama E.
-
Journal Title
J Immunother
Volume: 37
Pages: 84-92
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-