2013 Fiscal Year Research-status Report
有明海(佐賀県海域)における鉄の濃度変動と赤潮発生の関連に関する研究
Project/Area Number |
24510016
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
西本 潤 県立広島大学, 生命環境学部, 准教授 (80253582)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松原 賢 佐賀県有明水産振興センター(ノリ研究担当及び資源研究担当), その他部局等, その他 (30601611)
田端 正明 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), その他 (40039285)
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Keywords | 溶存態鉄 / マンガン / XAFS / 底泥 / 硫黄 / 植物プランクトン / シャットネラ |
Research Abstract |
有明海の海水中の溶存鉄の濃度、全鉄の濃度、全マンガンの濃度、珪藻類の細胞密度、シャットネラの細胞密度、水温、塩分濃度、溶存無機窒素濃度、溶存無機リン濃度、溶存ケイ素濃度、溶存酸素濃度を平成24年度に引き続いて測定した。佐賀県気象台発表の降水量、全天日射量について調べた。平成24年の夏の結果では溶存鉄が減少した際に珪藻類が減り、全マンガンの濃度が上昇した際にシャットネラ類が増える傾向が見られた。ただ雨により植物プランクトンが流されることによって測定地点において植物プランクトンの細胞密度が減少する可能性が考えられたのでさらなる観測が必要と考えられた。平成25年は溶存鉄及び全マンガンに大きな変動がみられず植物プランクトン量との間に関係性が見られなかった。平成24年の夏において洪水が発生するほどの多量の雨が筑後川流域降り、有明海には木などが多量に流れ込んでいた。それに対して平成25年の夏は多量の雨は降らなかったことが関係している可能性がある。 底泥からの鉄とマンガンの溶出の実験は酸素を遮断した状態で実験を行った。ORPの値を下げ還元状態にするためには有機物の共存が必要であった。そのため腐植物質としてタンニン酸を加えた実験と、有機酸としてクエン酸を加えた実験をそれぞれ行った。ORPが下がると泥からのマンガンの溶出が見られたが鉄はORPが-200mV 程度になっても溶出はみられなかった。ただしクエン酸が存在するとORPが下がらなくても鉄の溶出が観測された。そのため鉄の溶出にはカルボキシル基を持つ化合物の共存が必要であると考えられた。 シンクロトロンを用いたXAFSにより硫黄の存在状態を測定した。還元的雰囲気の場所では硫化鉄と硫黄が、酸化的雰囲気の場所では硫黄と硫酸イオンの形で存在していた。有明海の西側においてより還元状態になっていることが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海水中のサンプルにおける溶存鉄や全マンガンの量と植物プランクトンの関係を調べたところ平成24年度のデータではそれらの間に関係性が見られた(平成25年度のデータでは溶存鉄や全マンガンの量が相対的に少なく関係性はみられていない)。また鉄は還元状態になると底泥から溶出してくると考えていたが、そういうデータはこれまでのところ得られておらず、海水中の有機物の影響で溶出してくる可能性のほうが高いことが示唆されている。底泥における金属の存在状態や海水中の有機物に関する情報を得ることが必要となってきているが、それに向けての実験は進みつつあり、順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
海水中の溶存鉄や全マンガン、植物プランクトンの量、栄養塩濃度などの調査は、気象条件によって得られる情報が大きく変動する可能性があるので、今年度も続けていく。さらに底泥中の金属の存在状態をシンクロトロンで、またそれらの金属の化学的な挙動に関する情報を得るため連続抽出法を行い、溶出のしやすさと金属の存在状態との関係性についての情報を得る。さらに蛍光光度計を使って海水中の有機物に関する情報も得て、有機物と底泥からの金属の溶出のしやすさの関係について調べていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
来年度シンクロトロンでの測定回数を増やせるようにするために残した。 硫黄だけでなくマンガンなどについても九州シンクロトロン光研究センターで測定し、底泥中の存在状態について研究を行う。
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