2012 Fiscal Year Research-status Report
溶存無機炭素の同位体組成による新たな流域診断指標の構築
Project/Area Number |
24510024
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
高津 文人 独立行政法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 主任研究員 (30514327)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 溶存無機炭素 / 炭素安定同位体比 / 放射線炭素濃度 / 起源解析 |
Research Abstract |
河川水中の溶存無機炭素(DIC)の起源は土壌への浸透過程で取り込まれる土壌呼吸由来の炭酸ガスと大気中の炭酸ガスが主たるソースであると考えられる。霞ヶ浦流域の小河川80地点で出水時(総雨量75mm程度)における河川水のサンプリングを行い、河川水中のDICの安定同位体比(δ13C)と濃度を測定した。その結果、DICの濃度は畑地で高く、森林で低くなったことから、施肥に伴う土壌間隙水のアルカリ度の上昇が示唆された。また、土壌呼吸由来の炭酸ガスと溶解平衡に達している場合には、H2CO3*のδ13Cは-26‰程度となるのに対し、大気中の炭酸ガスと平衡状態にある場合は-9‰付近の値をとなることから、H2CO3*の濃度とδ13CからDICの起源についての知見を得ることができる。小河川80地点の出水時のH2CO3*の濃度とδ13Cの結果は、水源が湿地や池など水の滞留時間の長くなる地点の一部で大気交換や光合成の影響がみられたが、それ以外の大部分の地点では、DIC形成時の土壌呼吸由来のCO2のδ13Cは-22.5‰程度と考えらた。C3植物遺体のδ13Cの平均は-27‰程度であり、それが分解され土壌中の腐植物質となると数‰高くなることが一般的である。またそれが分解され、土壌呼吸となると1から2‰程度高くなることから、植物遺体の堆積層下にある腐植層の土壌間隙水の流出が示唆された。流下過程で起きる大気平衡や光合成の影響が1割程度の地点でしか見られなかった理由としては、小河川で出水時の採水であったことが影響したと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次年度の研究費は主としてグラファイト化ラインくみ上げ時に必要となる細かいパーツ類とグラファイト試料をAMS測定用試料へ加工する機器類の購入および、非接触型酸素プローブを装着できる蛍光検出による溶存酸素系の購入に充てる予定である。グラファイト化ライン構築のための主たるパーツは購入済みである。非接触型溶存酸素系を導入することで、微生物呼吸活性のリアルタイムの変化とDICの同位体比の時間当たり変化量の関係を明らかにし、DICの安定同位体と放射性同位体による新たな流域診断指標の構築を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
多様な水系からのDICの同位体分析用の試料水を集めると同時に、グラファイト化ラインを完成させる。今年度と同様にDICの安定同位体解析を進め、最終年度にDICの放射性炭素濃度のデータと合わせることで、流域の炭素代謝に基づく、新しい流域診断指標の構築を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の一部はグラファイト化ラインくみ上げ時に必要となる細かいパーツ類とグラファイト試料をAMS測定用試料へ加工する機器類の購入に充てる。また、非接触型の溶存酸素計の購入も計画している。非接触型の溶存酸素計によりリアルタイムの微生物の呼吸活性を把握することができ、呼吸活性の変化量とDICの同位体比の変化量の関係を知ることで、DICの同位体比による新しい流域診断指標の構築を行う。
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Research Products
(1 results)