2012 Fiscal Year Research-status Report
省エネルギー・環境分野における中国企業の技術キャッチアップシステムと日本の対応
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24510053
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
堀井 伸浩 九州大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (10450503)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / 中国 / 技術 / エネルギー / 再生可能エネルギー / 省エネルギー / キャッチアップ / 社会システム |
Research Abstract |
本年度は以下の「現在までの達成度」の項目で詳しく述べる通り、日中関係の悪化の影響を受け、当初予定していた調査研究活動が十分には展開できなかった。年度途中から現地(中国)での調査活動については中止し、日中関係の改善を期して平成25年度に研究費の繰り越しを行う決断をした。 したがって平成24年度の研究活動は主として中国の技術開発システムに関する理論的な考察を進めるとともに、風力と原子力に関する文献をベースとした調査研究を実施してきた。中国の技術開発システムに関する理論的考察は、環境および省エネルギー技術に関する先行研究は見当たらないが、機械産業等に関して進められてきた先行研究の検討や中国語文献に依拠した制度的な実態把握に努めた。風力と原子力についても文献調査により、技術面のキャッチアップ過程とその中でサプライヤーネットワークが果たしてきた役割については概観することができた。特に風力の研究成果については、2013年6月に産業学会の共通論題(招待講演)と中国経済学会の分科会報告(要旨審査を通過済)にて発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は日中関係の極度の悪化によって、予定していたアンケート調査やフィールドワークの実施が影響を受けざるを得なかった。現地協力機関は努力をしてくれたものの、調査対象の企業側が日本と関連する調査に対しては協力できないとの返答が予備調査の時点で続出し、アンケートはおろか企業調査等のフィールドワークも実施不可能となった。やむを得ず、業界団体や学会などの会議への参加を通じて情報収集に努めたが、本研究の調査内容が企業の最新の技術開発状況やサプライヤーネットワーク等の詳細な情報であったため、個別企業の調査が出来ない中では自ずと調査の水準は満足いくものとならなかった。したがって年度途中ではあったが、反日暴動も深刻化した9月以降は実質的な調査を中止し(予算を無為に費消することを恐れたためでこの判断は正しかったと確信している)、主に理論的な考察を活動の中心とし、個別のケーススタディの産業分析については先行研究の検討を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた研究計画においては、平成24年度に風力と原子力の企業調査を行い、平成25年度は全く新たに省エネルギー(特に高効率石炭火力)の企業調査を行うことを計画していた。しかしながら上記に述べた通り、日中関係の全体的な深刻な悪化を受け、平成24年度の企業調査は中止とせざるを得なかった。現状でも日中関係の悪化は下げ止まった感はあるが、尖閣諸島では小競り合いが継続中でまだ先行きは見通せない厳しい状況である。踏み込んだ企業調査を外国で、しかも中国という独特の政体と日本との複雑な関係を持つ国で行う以上、本研究の進捗状況が日中関係の大きな環境条件に左右されるのはやむを得ないことと考える。 したがって平成25年度も依然として調査実施の上で多くの不確実性が存在するものの、現段階では平成24年度に実施できなかった風力と原子力の調査を行うと同時に、平成25年度に計画していた省エネルギーの調査を実施する計画である。時間的、また情勢の悪化で当初想定していたよりも情報入手の困難性も増したと考えられるため、やや敏感な原子力については企業調査を断念し、文献調査を主とする軌道修正も考慮している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に調査を中止したことによって繰り越した70万円弱の研究費については、申請書の計画通り、風力と原子力の企業調査に使用する予定である。 平成25年度に新たに支給される研究費については、これまた申請書の研究計画通り、省エネルギー(特に高効率石炭火力)の調査に用いることとする。
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