2015 Fiscal Year Annual Research Report
省エネルギー・環境分野における中国企業の技術キャッチアップシステムと日本の対応
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24510053
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
堀井 伸浩 九州大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (10450503)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中国 / 省エネルギー / 環境 / 再生可能エネルギー / キャッチアップ / 技術 / 産業政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
省エネルギー・環境分野における中国の急速なキャッチアップを可能にしたシステムについて、個別技術に関するケーススタディを通じて明らかにするという研究目的は概ね達成し、以下のような知見を得た。 まず政府の産業育成政策が重要な機能を果たしたという点である。とりわけ海外の技術導入段階において、風力では国家プロジェクトにおいて部品の国産化を促す現地調達率規制を導入、原子力では技術吸収の受け皿となる国策会社として国家核電技術有限公司を政府主導で設立したことなどが具体的事例として指摘できる。 一方、企業については、技術毎に状況は様々であるが、原子力や石炭化学、石炭高効率発電は政府との密接な関係を活用して国有企業が中心であり、風力と太陽光は民営企業が国有企業を抑えて上位を占めている。但し、民営企業と言っても政府との関係は重要で、特に地方政府とは密接な関係を構築している。また国家標準化管理委員会(加えてその傘下の標準化研究院)および各地にある設計院が実際のプラント建設段階で、技術面で政府と企業をつなぐ重要な役割を果たしていることを具体的に明らかにすることが出来た。 他にもケーススタディに裏打ちされた政府と企業の協働の具体的な実態を析出できたが、総括すれば中国のキャッチアップシステムでは政府が海外技術導入や新技術開発などで産業政策を実施して企業のリスクを低減していること、但しいずれの技術においても企業間の競争は激烈であり、それが中国の競争優位である価格競争力の向上につながっている点が重要である。政策と市場競争が並存している中国のシステムは独特であり、中国の巨大な市場規模がそれを可能にしている。 本研究はキャッチアップにおける産業政策の有効性を実証する一方、環境分野のように往々にして政策の役割が重視される場合にも市場競争が機能するよう制度設計するバランスの重要性を示唆している。
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