2012 Fiscal Year Research-status Report
新規抗卵菌物質を分子プローブとした卵菌代謝系の解析と応用への基盤研究
Project/Area Number |
24510309
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
今村 信孝 立命館大学, 薬学部, 教授 (10160061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 崇 立命館大学, 薬学部, 助教 (00408733)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生理活性物質 / 結合タンパク質 / 生合成遺伝子 |
Research Abstract |
計画通り、1、046-Eの標的分子の解明と卵菌類の生理・代謝系の解析として、(1)抗卵菌スペクトルの測定、(2)S.parasiticaへの影響評価と染色による結合部位の特定、(3)結合分子の単離を検討した。18SrDNAによる系統樹解析から、比較的近いミズカビであるAchlya rasemosa、比較的遠いジャガイモ疫病菌のPytophthora infestansを用いて検討した結果、046-Eは両者へ活性を示し、卵菌類全般に生育阻害を起こすと考えられた。また、046-EのS.parasitica胞子発芽と菌糸伸長抑制効果を検討したところ、発芽抑制効果が顕著なことが分かった。046-Eが蛍光を示すことから、胞子を046-E並びにDAPI染色し、共焦点蛍光顕微鏡観察した結果、核周辺の核膜上、あるいは核膜外近傍に046-Eが局在化していることを見出した。量が得やすい菌糸の無細胞抽出液に046-Eを加え、SDS-PAGEを蛍光観察して、046-E結合タンパク2種(18、12kDa付近)を単離した。もう一つの計画である2、生合成遺伝子の解析を含むミズカビ予防薬としての応用展開への基礎的データの取得として、(1)魚卵を用いたミズカビ感染予防効果、魚卵発育の測定、(2)生産菌TK08046の生合成遺伝子の解析を行った。メダカ有精卵を用い、046-Eの毒性、感染予防効果を検討した結果、25μg/mlまで有精卵、孵化後の稚魚への毒性は見られず、また、ミズカビ感染予防効果は0.39μg/mlで確認できたことから、優れたミズカビ予防薬となり得ることが確認できた。046-Eはアングサイクリン系化合物であり、飛躍的な発酵力価向上を目指して、生合成遺伝子の取得を検討した。アングサイクリン骨格を持つ化合物に特徴的な環化酵素遺伝子を持つコスミドを、046-E生産菌コスミドライブラリーから取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
90%以上。研究実績の概要に述べたように、今年度の計画については全ての項目で目標に近い成果、あるいは目標以上の成果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
046-Eが特異的かつ普遍的に卵菌に活性を示すこと、また、その結合タンパクが単離できたことから、25年度は結合タンパク質の解明をまず行う。これには、N末端アミノ酸を決める等の方法があるが、ペプチドマスフィンガープリント法も比較的安価に利用できるようになったので、この方法でタンパク質の同定が可能であれば、短時間でタンパク質を同定出来ると考えている。タンパク質同定後にはその機能をデータベースから推測する。また、応用展開への基礎的データ取得では、今年度の検討から、魚卵を用いたデータ取得が想定以上に複雜な要素が絡み合っていることが分かってきたので、046-Eによる魚卵処理の検討はメダカ卵に止め、25年度は046-Eの分解性など物性的なデータ取得を行うことにする。生合成遺伝子の解析を進め、生合成遺伝子全容の解明を行うとともに、シャトルベクターを用いて他のStreptomyces属に導入を検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
046-E が結合したS. parasitica由来のタンパク質をコードする遺伝子と高い相同性を示す遺伝子を全ゲノム配列決定がされているジャガイモ疫病菌P. infestansから探索し、保存性の高い配列を決定する。この保存性の高い配列を基にプライマーを設計し、24年度の検討で046-Eに感受性を示した卵菌類に対して、そのゲノムDNA、またはcDNAを用いてPCRを行い、標的分子に相当する遺伝子があるかどうかの確認を行う。この実施のため、RNA抽出キットや逆転写酵素、DNA polymerase等を購入する予定である。 046-E生合成遺伝子の解析は、046-E生合成遺伝子クラスターと考えられる領域を導入したStreptomyces属において046類を生産しているかどうかをHPLCやLC-MS分析し、確認する。この実施のため、HPLC等で使用するカラムや溶媒を購入する予定である。S.parasiticaに対して特異的な胞子発芽抑制を示す046-Aおよび046-Eを選択的に生産する株を作製することを目指し、046-E生産菌のデオキシ糖生合成遺伝子や糖転移酵素をコードする遺伝子の解析を行い、046-Aおよび046-Eの生合成に関する詳細なデータを得る予定である。この実施のため、放線菌を培養するための培地や遺伝子工学的手法を用いた実験で使用する試薬やキットを購入する予定である。
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