2012 Fiscal Year Research-status Report
低地泥炭湿原の群落の景観と種組成における地理的変異の把握とその生成機構の解明
Project/Area Number |
24510329
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sapporo City University |
Principal Investigator |
矢部 和夫 札幌市立大学, デザイン学部, 教授 (80290683)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 雅之 法政大学, 人間環境学部, 教授 (40442610)
西川 洋子 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, その他部局等, 研究主幹 (90442615)
島村 崇志 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, その他部局等, 主査 (90442631)
山口 高志 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, その他部局等, 研究主任 (90462316)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生物多様性保全,湿原保全 |
Research Abstract |
平成24年度は、札幌に近くアクセスのしやすい道央圏の勇払湿原群で研究を行い、調査・研究手法の確立をめざした。研究内容は以下のI~IIIの項目であった。 I既存資料の解析による湿生自然草原内の群落変異の把握。低地泥炭湿原に関する既存の群落種組成データを階層的に類型化し、群落類型の地理的変異の概要を把握する。既存資料の中から群落を特徴づける重要種群であるミズゴケ属の種記載が行われているデータだけを解析に用いた。道南から1湿原、道央から2湿原、道東から4湿原、道北から2湿原の種組成資料を収取し、データベースを作成した。これからTWINSPANによる解析を行う。 II群落類型と環境条件の関係解析。苫小牧勇払地方の群落多様性をほぼ網羅する安平川湿原等の5湿原で群落環境を調査した。TWINSPANによって、湿原群落はフェンに属する5つの群落およびボッグ1群落の6群落に分類された。植生調査に並行して、8月下旬にポーラスカップで泥炭間隙水を採取し分析した。CCAによる群落分布と水文環境の関係解析の結果、第一軸はボッグの種組成の特異性が抽出され、ボッグの水質は総窒素、有機態窒素、リン酸とK+の濃度が特に高い水質であった。ミズゴケハンモックからの採水であったが、周辺の農地からの養分負荷がボッグの泥炭水を汚染していた。第二軸はフェン内の展開となり、谷湿原のヤチスゲ-ムジナスゲ群落が他のフェンと分離された。ヤチスゲ-ムジナスゲ群落は他のフェンと比べて水位が高く、Na+やCl-の濃度が高く、SO42-が低かった。第三軸のフェン内の展開となり、オオアゼスゲ群落が他のフェンよりSO42-とMg2+の濃度やECが高いという結果が得られた。 III群落景観と環境条件の関係解析。勇払湿原群の画像データを取得し、現地の群落景観と対比させながらGISによる植生図解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
低地泥炭湿原群落の地理的変異を群落種組成と群落景観の二つのレベルから把握する。(I)既存の群落種組成資料から群落(フェンとボッグ)を階層的に類型化し、それらの地理的な分布から群落の地理的変異の概要を把握する。(II)群落類型と環境条件の関係解析を行い、群落類型の分布パターンの地理的変異が生じる原因を、抽出された重要な水文化学環境要素と気象要素の関係から推定する。(III)群落景観の地理的変異を把握するために、各湿原の群落類型の分布面積をGIS解析によって求める。次に、水文化学環境要素と気象要素の関係から、各類型の面積に地理的変異が生じる原因を推定する。 (I)現在までに利用可能な既存資料をほぼ収集し、電子データとしてデータベースの作成を終了した。今後は、フィールドワークの終了する10月以降から本格的な解析を行い、フェンとボッグの群落種組成やフェンーボッグ傾度の地理的変異について詳細に検討する予定である。 (II)2012年は勇払湿原群で実施して、水文化学環境がフェンとボッグの分布を規定している様子が統計解析によって確認できた。また、泥炭水採集や群落種組成調査の細かな操作技術の決定や、調査遂行に必要な時間や労力を掌握した。また、新谷購入した群落解析専用ソフト(PC-ORD6)の操作方法やNonmetric Multidimensional Scalingなど新しい解析の方法について習得できた。 (III)勇払湿原群のほぼ全部の湿原を対象にして、現地群落景観調査と並行してGISによる画像解析を行っている。現在進行中ではあるが、得られた結果は環境省が全国統一凡例で作成中の2次メッシュによる植生図と比較し、われわれの群落景観解析の妥当性について検証する。勇払地域の環境省植生図は2013年に公開予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度は(I)既存の群落種組成データの解析をフィールドワークの終了後10月ごろから本格的に再開する。(II)群落類型と環境条件の関係解析は、2012年の勇払湿原群での検討結果で得られた知見をもとに 2013年は霧多布湿原と十勝川河口湿原群の二か所で行う。北海道内にはアメダス気象観測点が高密度で設置されている。各調査湿原から最も近いアメダスの過去数10年分の気象データ(気温、降水量、日照時間等)から平均気温、季節別降水量、可能蒸発散量、余剰降水量などの気候要素を求める。(III)リモートセンシングとGISによる湿原の群落景観解析は、画像パターンと湿原群落景観の対応を現地確認しながら、勇払湿原の作業が終了後、霧多布湿原と十勝川河口湿原群についても現地景観調査を行いながら解析する。それぞれの群落類型による景観区分がどのような地理的変異を効率的に反映するか検討する。 2014年度は太平洋側のさらに2か所程度の湿原で2013年と同様の調査を行う。つぎに、太平洋岸の東西での低地泥炭湿原の群落の地理的変異が、種組成から景観までのどのレベルでみられるか検討し、それらの湿原生態系の地域性とその特徴を明らかにする。この結果得られた地域性に基づき、北海道生物多様性保全計画(2010)を戦略的に推進するための基礎資料とする。研究が当初計画どおりに進まない状況として、種組成レベルの地理的変異が抽出されない場合が想定される。この場合は、すでに景観レベルでの群落面積の地理的変異の存在が予察されているので、群落の種組成から景観までのどのレベルで地理的変異が発生するかを検証するというテーマに変更することで対応する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残金18,980円は見積もりより安くも納品したため発生した。残金は翌年の旅費に割り当てる。
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Research Products
(6 results)