2013 Fiscal Year Research-status Report
記憶の装置としての学校―現代台湾における植民地記憶の語りに関する社会学的研究
Project/Area Number |
24510343
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
林 初梅 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (20609573)
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Keywords | 台湾 / 日本統治時代 / 学校 / 集合的記憶 / 歴史 / 郷土 |
Research Abstract |
本研究は、台湾における植民地時代という「過去」の受容とその背後にある問題を、学校という場、校史室という具体的な施設を取り上げて、台湾社会の実態を実証的に解明していくことを目的としている。申請書に記載したように、とくに重点を置いて解明しようとしているのは、以下の三点である。A)学校創立記念行事運営の傾向及び植民地記憶化の実態を解明すること。B)校史室における展示品の選別作業のプロセスを解明すること。C)植民地記憶を持続させる要因を明らかにすること。平成25年度において研究代表者・林は引き続き、植民地時代に創設された学校を中心に調査を行ったが、台湾における植民地記憶化の実態とプロセスに重点を置いた。連携研究者・所澤は、日本語世代へのインタビュー及び学校の現行制度の調査を通して、植民地時代との連続性の問題を明らかにした。なお、社会への発信及び関連研究の交流を目的として、平成25年度は下記のように研究者を招聘して研究会を開催した。研究会の開催により、研究者間の意見交換が活発に行われ、議論は一層深まった。 ・第1回研究会(2013年11月30日、一橋大学東キャンパス国際研究館4階のAV1号室、司会:所澤潤(東京未来大学)) 講師:松永正義(一橋大学特任教授)テーマ:戦後台湾における日本と日本語 講師:陳培豊(中央研究院副研究員)テーマ:歌謡曲から見た台湾人の記憶―植民地統治期終息の前後― ・第2回研究会(2014年3月15日、早稲田大学1号館2階現代政治経済研究所会議室、司会:所澤潤(東京未来大学))講師:四方田犬彦(京都造形芸術大学大学院客員研究員)テーマ:台湾における日本映画の影響
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者・林は1990年代の郷土教育と植民地の記憶との関連性を解明するため「台湾に現れた三つの郷土教育―郷土探し、そして植民地時代の「遺緒」との出会い」という論文を作成した。図書として公刊されるのは次年度になるが、論文の中に述べられたことは、上記研究目的のC(植民地記憶を持続させる要因)に相応しい調査結果だといえよう。 連携研究者・所澤潤による研究成果は「台湾―6-3-3-4制上の独自モデルの追求」という論文であり、上記研究目的のC(植民地記憶を持続させる要因)を解明する内容である。そのほか、未発表の音声資料も多数採集しており、目下文字化に着手しているところである。 進捗状況は当初計画したとおり、概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、昨年度の研究成果を踏まえ、①引き続き台湾での調査を行うとともに、②国際研究集会を行う。 ①植民地時代に創設された学校を引き続き調査する予定である。しかし、植民地時代の遺構や文献史料はなぜ保存されるようになったのか、植民地記憶を持続させる要因を解明するため、平成26年度は特にこのような記憶化のプロセスの問題に重点を置き、調査を進めていきたいと考えている。 ②日台双方の研究協力者や専門家を招いて国際研究集会を開催することを計画している。学校という場に限らず、関連する研究の発表・討議を通して、より一層の成果が上がることが期待できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、最終年度大型の国際シンポジウムを開く予定だったが、より深い議論を求めるため、平成25年度から三ヶ月毎に関連研究者を集めて研究会を開催することとした。25年度第2回研究会においては、台湾から研究者を招聘する予定だったが、同人の都合により来日不可能となり、予定していた出張旅費が余剰となった。 第3回以降の研究会講師の出張旅費に充当することにしたいと考えている。
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Research Products
(3 results)