2015 Fiscal Year Annual Research Report
記憶の装置としての学校―現代台湾における植民地記憶の語りに関する社会学的研究
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24510343
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
林 初梅 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (20609573)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 台湾 / 日本統治時代 / 学校 / 記憶 / 郷土 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度において研究代表者・林初梅は引き続き植民地時代創設の学校を中心に調査を行い、旧台南一中同窓会・南中会の調査を進めた。また、成功大学歴史学科陳梅卿教授を招き、研究集会を行った。陳梅卿教授は、自身が制作したドキュメンタリーの内容と作成過程について「夢のなかの故郷:台南第一・第二高等女学校の卒業生たちの戦前と戦後」というテーマで発表した。本研究はその内容から大きな示唆を得た。 また、台湾協会(台湾引揚親睦団体)や台湾引揚者に関する研究調査も行った。植民地時代をめぐる台湾人の記憶の語りについて、日本人引揚者がどのように影響を与えたか、という従来見落とされている問題点の解明に努めた。研究成果の一部は論文「湾生日本人同窓会とその台湾母校―日本人引揚者の故郷の念と台湾人の郷土意識が織りなす学校記憶」にまとめられた。湾生日本人団体の集会と訪台活動を通して台湾における日本時代の記憶を再生産・共有させるメカニズムを解明したものである。一方、連携研究者・所澤潤は、湾生日本人と日本語世代台湾人のインタビューを行い、オーラルヒストリーを多数採集した。公開発表されたのは、鈴木れいこ、陳逸楽両氏のオーラルヒストリーである。 研究期間全体を通して開催した5回の公開研究会の成果をまとめたものとして、所澤潤・林初梅共編著『台湾のなかの日本記憶―戦後の「再会」による新たなイメージの構築』(三元社、2016年3月)を刊行した。同書は、終戦以前の台湾における「日本」が、いかにして現在の台湾人の記憶となったか、その経緯について、文学、歌謡、映画、看護婦、家屋、学校など様々な角度から探っている。
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Research Products
(8 results)