2013 Fiscal Year Research-status Report
バングラデシュ農村における「ジェンダーと開発」の展開と女性に対する暴力
Project/Area Number |
24510374
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
池田 恵子 静岡大学, 教育学部, 教授 (60324323)
|
Keywords | 女性に対する暴力 / ジェンダーと開発 / 女性組織 / バングラデシュ |
Research Abstract |
本研究は、バングラデシュ農村における女性に対する暴力の動向を、村落レベルにおけるグローバルな課題としてのGADの展開に位置付けて把握することを目的としている。地域社会を分析単位とし、社会組織や規範の変容と関連において女性に対する暴力の動向を理解する。 本年度は、現地調査を開始した。女性に対する暴力の課題に取り組むために結成され、研究に協力をいただいている女性団体のネットワーク組織(ドゥルバールネットワーク、およびGAD Alliance)の職員の助言を仰ぎ、2種類の調査(女性への暴力に対する活動を行う地域女性組織に関する調査、およびそのリーダー女性に関する調査)の質問票を確定した。そして、ネットワーク組織の支部を通じて、予備調査を行った。また調査の実施方法を説明した。「女性児童虐待抑制特別法廷」や地方分権化に伴って活性化が求められているユニオン(行政村)、郡レベルの女性の地位に関連する委員会の活動を支援するNGOのダッカ事務所において、活動のインタビューを行った。(2013年9月) また、バングラデシュにおける女性に関する暴力について、文献データベースを作成した。前年度に、暴力概念がバングラデシュにおいてどのように適用されているか先行研究から把握したが、その際に収集した文献と暴力概念の類型を用い、教育、農村開発・貧困緩和、リプロダクティブヘルス・ライツ、雇用・就労など、各セクターの開発政策における女性に対する暴力の動向を把握するためのデータベースを作った。この文献データベースを作成するために、アルバイトを雇用し謝金を支出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現地調査を開始することができたものの、当該年度はバングラデシュでは、ゼネストが頻発する状況であり、現地調査中も交通機関が頻繁にストップするために、外出できないことがたびたびあった。また、総選挙(2014年1月)が行われた影響で、調査協力を依頼している女性団体ネットワーク組織の職員も、選挙前後の治安の悪化を懸念し、調査のための外出を避けたいとのことであり、調査協力を依頼している女性組織を通した質問票を用いた調査は、開始できなかった。 研究代表者自身が平成25年度中に実施することを予定していた地域女性組織の活動に関する2回の調査(1回目は、伝統的な村裁判や仲裁の機能改善、2回目は「女性児童虐待抑制特別法廷」を活用する女性への法支援など)のうち、後者の活動に関する団体に関してのみ調査を進めることができた。 現地調査に上記のような支障があったため、国内で作業が可能な作業を行うこととした。文献データベースの作成を行い、長期的なGAD政策の展開と暴力概念の変化、暴力の発生の動向について分析できるようにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、治安状況を確認しながら、バングラデシュ現地での調査を継続する予定である。平成25年度に実施できなかった調査を2回に分けて行う予定である。まず、「女性児童虐待抑制特別法廷」を通した暴力の被害を受けた女性への支援について(1回目の調査)、そして伝統的な村裁判や仲裁の機能改善を通した支援について(2回目の調査)、現地調査を行い、調査結果を取りまとめる予定である。バングラデシュの治安状況は、総選挙が終了したので、回復に向かっており、今年度には昨年度のような混乱はないものと予想している。 また、国内での作業として、作成した文献データベースから、長期的な開発とジェンダー政策の展開と、女性に対する暴力の動向、また女性への暴力概念の変化、暴力に関する言説の変化などとの関係性を分析する予定である。 調査結果について、南アジア研究集会などで報告し、指揮者の助言を得たうえで、最終報告書を作成する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度、25年度とバングラデシュでは、独立戦争当時の戦犯裁判の実施に端を発した過激な社会運動の勃発、さらに総選挙の実施と、政治的に不安定であった。ゼネストの頻発により、調査が予定通り行えなかった。また、調査協力を依頼していた女性団体も、この情勢下において、「女性への暴力」という繊細な課題を扱う調査を細心の注意のもとで行う必要があったため、調査実施を控えた。そのため、調査の実施が遅れている。 総選挙の実施以降、バングラデシュの情勢は沈静化しており、次年度はこれまでの遅れを取り戻すために、予定よりも長期間にわたる現地調査を、現地調査補助員の雇用などによって人員を補強しながら行う予定である。また、平成25年度には上記の事情により実施が不可能であった、女性団体ネットワーク組織を通しての調査票を使用した調査を行う予定であり、調査の実施(データ収集)と結果の翻訳、報告書の作成、報告会の実施などに予算が必要となる。これまで実施できなかったこれらの調査を行う経費として、昨年度使用しなかった経費を充当する予定である。
|
Research Products
(3 results)