2013 Fiscal Year Research-status Report
ハイデッガー、西田、西谷の「場所論的思惟」の立場からする「技術知」の検討
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24520013
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
秋富 克哉 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (80263169)
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Keywords | 場所論 / 技術哲学 |
Research Abstract |
本研究が主題とする3名の思想家、すなわちマルティン・ハイデッガー、西田幾多郎、西谷啓治の技術思想について、いずれについても一定の成果を出すことができた。ハイデッガーについては、日本宗教学会誌『宗教研究』の特集号「科学・技術と宗教」に「技術時代に死すべき者たちとしてこの大地の上に住む」を発表し、また調査旅行として訪問したドイツ・ハノーファー哲学研究所で、招待発表として「原子力技術を考える ー ハイデッガーの技術論から出発して」を行った。このドイツ語原稿は、当研究所のHPに掲載されている。次に西田については、西田哲学会第11回年次大会シンポジウム「技術」にパネラーとして参加し、「純粋経験から行為的直観へ ー 技術が問われるところ」を報告するとともに、その原稿を会誌『西田哲学年報』第11号に寄稿した。最後に、西谷については、7月に大谷大学開催の「大拙忌」の招待講演を依頼され、「科学と宗教 ー 西谷啓治の立場から」の講演を行い、その原稿を大谷大学宗教学会会報19号に掲載した。さらに西谷については、当初計画以外に、国際英文雑誌"Journal of Japanese Philosophy"の第2号に"On the possibility of discussing technology from the standpoint of Nishitani Keiji’s religious philosophy"を寄稿し、掲載が決定された。年度当初に予定していた研究発表はすべて行うことができ、さらに調査旅行として上記のハノーファー哲学研究所と並んで、予定していたミュンヘン大学訪問とミュンヘン・ドイツ博物館図書館において文献調査を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究業績の概要」で述べたように、年度当初に予定していた研究発表をすべて実施し、それぞれに向けての準備作業を含め、申請書に記載した「研究の目的」についてはかなり進めることができたと考えている。特に、西谷啓治についての英語論文は予定に入っていなかったものであり、しかも英語で発表できたことは大きな意味をもった。そのかぎり成果発表としては「計画以上」であったと言えるが、逆にそのぶんハイデッガーの技術思想をめぐる課題として、ハイゼンベルクやユンガーの研究については十分に掘り下げられなかったこと、また西田と西谷との思想的関係についての考察もテキスト読解の点で課題を残すことから、上記の自己評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の達成と残された課題を踏まえ、ハイデッガーの技術論を「有のトポロギー」や後期現象学の立場から捉え直すとともに、ハイゼンベルクやユンガーとの関連で考察すること、また西田と西谷については両者のテクスト読解を通して「絶対無」と「空」をめぐる両者の思想的連関を場所論的立場から考察することを、中心課題とする。特に、ハイデッガーのユンガー論に取り組む過程で新たに課題として出て来た「トポロギー」と「トポグラフィー」の内実を明らかにしながら、西田や西谷の「無/空」の立場とも繋がりを得ることができないかどうか、考察していきたい。特に「トポグラフィー」については定まった訳語がなく、哲学的にもまだ十分に掘り下げられていない概念であると思うので、その射程を慎重に探っていくことを課題としたい。
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Research Products
(5 results)