2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520020
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
岡部 勉 熊本大学, 文学部, 教授 (50117339)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長友 敬一 熊本学園大学, 経済学部, 教授 (20352396)
東谷 孝一 熊本保健科学大学, 保健科学部, 准教授 (30274400)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 行為論 / 価値論 / 理性論 / ポール・グライス / アリストテレス / 合理性 / 国際情報交換・米国 |
Research Abstract |
当年度の目標は、第一に、ポール・グライスの行為と価値に関する考え方について十分な理解を得ることにあった。研究成果は、行為は出来事ではないとするグライスの主張の意味を、グライス晩年の価値論・理性論との関連を解明しつつ、行為論再構築の文脈に位置付けた論文「行為と出来事-行為論再考-」において公表した。 次に、先年オックスフォード大学出版局から出版された理性論に関するグライス晩年の講義録には誤まりが数多く含まれることが分かっており、この点を確認するためにカリフォルニア大学バークレー校に残されたグライスの遺稿資料を調査することを、第二の目標としていた。結果として、遺稿資料を所有するバークレー校バンクロフト図書館の多大な協力を得て、多数の誤りを確認することができた。 また、アリストテレス研究及び行為論・理性論の研究に関して、これまで長年に渡り連携をとってきたデーヴィッド・チャールズ教授(オックスフォード大学)、並びに、グライスの元同僚で価値論に関するグライス晩年の講義録を編纂したジュディス・ベーカー教授(トロント・ヨーク大学)に直接会うことができて、今後の研究協力について話し合う機会を持つことができた。 当年度内の出版へ向けて準備を進めてきた、グライス晩年の講義録を中心とする翻訳出版に関しては、出版社の編集担当者の都合で次年度に先送りすることになったが、翻訳原稿は年度内にすべてを完成させることができた。英語原文の誤まりを最終的に確定する作業が残っているが、その多くは既に確認済みである。 継続中のグライス研究会の当年度の成果は、グライス最晩年の価値論に関する(講義録とは)別のテキストの翻訳をほぼ完了させたことである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
論文「行為と出来事-行為論再考-」の公表及びグライス晩年の講義録に関する翻訳原稿の完成は当初の計画通りであった。 カリフォルニア大学バークレー校に残されたグライスの遺稿資料の調査結果果は、予想を上回る成果があった。遺稿資料を所有するバークレー校バンクロフト図書館の遺稿の整理状況が良好であったこと、また、担当者の協力支援が期待を上回るものであったことによる。グライス最晩年の未発表著作原稿(ほとんど完成された状態にある)について、全体の構成と内容の一部を確認できたことも、想定外の成果であった。 以上に加えて、米国滞在中のデーヴィッド・チャールズ教授及びトロントのジュディス・ベーカー教授と、直接今後の研究協力について話し合うことができたことも、想定外の成果であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、①昨年度実施して想定外の成果があった、カリフォルニア大学バークレー校バンクロフト図書館におけるグライスの遺稿資料の調査を継続して実施し、既に出版されている二つの講義録の英語原文に関して正誤表を確定することに加えて、グライス最晩年の未発表著作原稿の内容を確認するとともに、原稿の今後の取り扱いについて、特にその出版及び翻訳の可能性について、著作権保有者等の関係者と協議することを目標とする。また、②グライス晩年の講義録を中心とする翻訳出版に関しては、英語原文の正誤表を確定した上で、年内出版を目標として、解説の執筆、索引の作成等の作業を進める。更に、③本研究の成果を口頭発表するために、平成26年度秋に開催を予定している行為論に関するシンポジウムへ向けて、平成25年度内ないし26年度の早い時期に国内外の研究協力者との打ち合わせを実施する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の外国旅費・国内旅費の使途としては、研究代表者が、カリフォルニア大学バークレー校バンクロフト図書館においてグライスの遺稿資料を調査すること、国内及び国外の研究協力者との打ち合わせのために、首都圏の大学(日本大学)及び米国の大学(カリフォルニア大学バークレー校と、可能であれば、東海岸のいずれかの大学)を訪問すること、加えて、予算消化の状況次第では、英国の大学(オックスフォード大学)を訪問すること、その他、研究分担者が、首都圏ないし関西圏のいずれかの大学を訪問することを想定している。 旅費以外の使途としては、書籍及びパソコン周辺機器購入のための物品費、グライスの講義録翻訳出版へ向けた索引作成のための謝金等を主要なものと想定している。
|