2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24520020
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
岡部 勉 熊本大学, 文学部, 教授 (50117339)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長友 敬一 熊本学園大学, 経済学部, 教授 (20352396)
東谷 孝一 熊本保健科学大学, 保健科学部, 准教授 (30274400)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 形而上学 / 行為と出来事 / 価値論 / ポール・グライス / 構成主義 / 反自然主義 / ドナルド・デイヴィドソン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終年度に当たる今年度は、まず、ポール・グライス晩年の思索の成立過程を明らかにするために、カリフォルニア大学バークレー校のバンクロフト図書館から取り寄せた主要な遺稿の調査を本格的に実施した。その結果、グライスがオックスフォードからバークレーに移った直後から、最晩年の行為論「行為と出来事」(1986)に至るまでの道筋を、ある程度明らかにすることができた。その概要については、拙論「グライス晩年の形而上学的思索」に記載し、折を見て公表することとした。 次に、2013年11月に勁草書房から出版した、グライス晩年の主要著作の拙訳『理性と価値』の書評会を、西日本古代哲学会の主催で、2014年11月に、福岡大学セミナーハウスにおいて実施した。書評会に先立って、前記拙論「グライス晩年の形而上学的思索」の概略を口頭発表し、その中で、1)グライスの反自然主義的・構成主義的な行為論・価値論の考え方は、ドナルド・デイヴィドソンの自然主義的・科学主義的な考え方に対する反論として、次第に明確な形をとるようになったこと、2)大部分が1970年代前半の日付けがある、未発表の「道徳をめぐる考察 Reflections on Morals」という表題を持つ膨大な遺稿群があって、この遺稿群の形成過程に、グライスの形而上学的思索のその後の展開を示唆するヒントが隠されていると思われること、この二点を指摘した。 書評会における質疑応答においては、デイヴィドソンの立場に共感を寄せる参加者との間で、特に、行為と出来事の違い及び行為論における意志の位置付けをめぐって、ときに激しい、しかし極めて有意義な、意見のやりとりがあった。
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