2012 Fiscal Year Research-status Report
精神科医療に特有の倫理的諸問題および倫理教育のあり方に関する研究
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24520022
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
藤井 千代 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (00513178)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 雅文 東邦大学, 医学部, 教授 (80245589)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 精神科医療 / 臨床倫理 / 倫理教育 / 精神科医 |
Research Abstract |
本研究では、精神科医が精神科臨床の現場で遭遇する倫理的ジレンマ状況を明らかにし、それらの倫理的ジレンマへの対応が可能となるような精神科倫理教育プログラムおよび精神科臨床倫理検討会のあり方を検討することを目的としている。 平成24年度は、精神科倫理に関する国内外の文献を網羅的にレビューし、情報収集を行った。さらに、9名の精神科医へのインタビューを通じて精神科臨床における倫理的ジレンマの実態について検討した。 倫理的ジレンマとしては、①非自発的入院(医療保護入院および措置入院)を決定する際および入院中の自律尊重に関すること、②抗精神病薬の非告知投与に関すること、③守秘義務が対立した場合の対応、④精神疾患の早期介入の実施とその介入方法をめぐる問題、⑤未成年者への対応をめぐる問題、⑥精神科以外の医学的介入を行う際の自律尊重に関すること、⑦老年精神医学における問題、⑧利益相反に関すること、などに日常的に遭遇していることが示唆された。これらの倫理的ジレンマに適切に対処するためには患者本人の同意判断能力の程度の評価が不可欠となる場面が多く、倫理教育においては、同意判断能力評価のトレーニングを取り入れる必要性があると考えられた。 今年度はこれらの結果を踏まえて、医療倫理および臨床倫理の基礎知識、臨床倫理検討の方法論、臨床倫理検討演習のための模擬症例を含む精神科倫理教育プログラムを作成した。平成25年度は、教育プログラムにさらに改良を加え、その教育効果につき検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文献レビューに関しては、ほぼ順調に進展している。精神科医に対するインタビューは、当初大学病院等の総合病院精神科に勤務する医師、精神科単科病院に勤務する医師、クリニックに勤務する医師のそれぞれに対して実施する予定であったが、現在のところほとんどの対象者が精神科単科病院の勤務医であり、対象に偏りが生じている。これは大学病院、クリニック勤務へのインタビューのための日程調整が円滑に行えなかったことが主たる要因である。この状況を踏まえて、平成25年度はインタビューのための日程調整を早期から開始するよう努める必要がある。 教育資料および倫理的ジレンマ状況に関する模擬事例については概ね完成しており、平成25年度は教育プログラムの実施とインタビューを同時並行で行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、平成24年度に作成した模擬倫理事例および教育資料を完成させ、これらを用いて若手精神科医の臨床倫理に対する問題意識を評価するとともに、倫理教育プログラムの成果を検討する。また、大学病院およびクリニック勤務の精神科医に対する臨床倫理に関するインタビューを継続して行う。倫理教育プログラムに関する研究の推進方策は以下の通り。 1.東邦大学医療センター大森病院および関連病院に勤務する精神科臨床経験2年以下の精神科医約30名に対し、平成24年度に作成した模擬倫理事例を示し、①事例に倫理的ジレンマが含まれているか、②それはどのようなジレンマか、③そのジレンマに対してどのような対処方法をとるべきか、について口頭で回答を得る。 2.作成した教育資料を用いて若手精神科医に対する倫理教育および倫理検討会を実施する。教育終了後に前項と同様の質問を行い、教育前と比較するとともに、教育内容および講義方法に関するアンケートを実施する。また、倫理検討会における各グループ内の議論の過程および全体討議を振り返り、より効果的な検討会の実施方法について考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、インターネットに接続していないパソコンでのデータ処理、教育資料作成のためのパソコン購入費用を計上していたが、平成24年度は旧来のパソコンが使用に耐えたため購入を見送り、繰越金が発生した。平成25年度にはこの繰越金を使用し、当初予定していたパソコンおよび周辺機器を購入する予定である。
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