2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520038
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
麦谷 邦夫 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (90114678)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 玄珠録 / 王玄覧 / 三論学派 / 王斌 / BD04687号 |
Research Abstract |
本研究は、唐代の代表的な道教論書である、『玄珠録』『道体論』『三論元旨』等を解読し、その思想体系の中に取り込まれた仏教教理がどのようなものであったのか、また、六朝以来の道教固有の思想概念とどのように絡みあって、新たな思想的展開を見せていったのかを、思想史的観点から明らかにすることを目的とする。 本年度においては、主として『玄珠録』を分析の対象としてその思想内容の解明を行うとともに、詳細な訳注の作成に着手した。この作業を通じて以下のようなことが明かになった。 『玄珠録』は、1)初唐の蜀を中心とする地域仏教文化の独自性を背景に有していること、2)『玄珠録』に記録された道教教理思想には、それを講じた王玄覧個人の思想遍歴のあとが濃厚に反映されていること、3)六朝末から隋唐時期にかけて道教教理の形成に大きな影響を与えた三論学派の教理思想や論法の強い影響下にあること、4)それにもかかわらず、王玄覧が学んだ三論学派の論法の『玄珠録』における反映のしかたから見て、そこには六朝末から隋初唐時期の教理論争などで大きな影響力を持ったと思われる王斌の「八並」論法は全く反映されていないこと、5)このことと関連して、最近、中国人学者が提出した王玄覧が『玄珠録』以外に中国国家図書館蔵BD04687号敦煌文献を撰述したであろうという説が誤りであることなどが明かになった。また、訳注の作成過程を通じて、『玄珠録』の文体が他の道教論書とはかなり相違した独自のものであり、蜀の口語方言のあとを濃厚に残すものであることが知られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『玄珠録』および王玄覧の教理思想の解明はかなり進んだが、訳注作成作業はいまだ初歩的段階にあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書に記載した研究計画を変更する必要は基本的にはないので、それに従って研究を進める。ただし、『玄珠録』の訳注作成作業をより一層加速して行う。本年度は、若干の研究経費の剰余が生じたが、これは時間的制約から資料調査の一部を省略せざるをえなかったためである。この省略分については、次年度において調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、本年度において未実施であった資料調査の一部を行うために使用する。
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Research Products
(1 results)