2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520046
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kogakkan University |
Principal Investigator |
松下 道信 皇學館大学, 文学部, 准教授 (90454454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 忠彦 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (40126107)
加藤 千恵 立教大学, 現代心理学部, 准教授 (40530209)
山田 俊 熊本県立大学, 文学部, 教授 (30240021)
長谷部 英一 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 准教授 (00251380)
森 由利亜 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30247259)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 中国哲学 / 道教 / 道教史 |
Research Abstract |
本研究は、道教の成立とその後の歴史的な展開について、これまでの研究を実証的・批判的に検証し、新たな道教史の再構築の可能性を探ることを目的としている。その具体的な研究成果の一つとして任継愈主編『中国道教史』(増訂本、中国社会科学出版社、2001)の訳注作業を中心にすえている。 平成24年度は、代表者である松下が先行して始めていた同『中国道教史』の部分的な翻訳作業に関して1月に中国社会科学院を訪問した際、執筆陣から本研究計画全体に対して本研究計画の受理に先駆けて版権が授与された。これを受け、科研費の申請の受理後、順調に訳注作業を開始することができた。 具体的な作業としては、底本となる『中国道教史』(増訂本)だけでなく、1990年、上海人民出版より出版された初版本『中国道教史』および台湾で翌年出版された同版繁体字組みの桂冠図書公司版『中国道教史』上下二巻をすべて電子化(OCR)した。これは版本間の記述の異同や底本の誤記に対応するものである。あわせて作業の効率化を図るために『道蔵』所収本の所在を示す相互対照表を検索できるようデータ化を行うなど、訳注制作の体制を整備した。また横浜国立大学で開かれた第一回研究会では、『中国道教史』の授権および執筆陣の現況報告と訳注作業の分担が確認された他、皇學館大学で行われた第二回研究会では訳注の文体・体裁だけでなく、細かい語句の用法にいたるまで訳注の作成方針が検討・決定された。 またそれぞれが所属する道教学会・道教文化研究会などを中心に、シンポジウムなど関連する活動の場において研究代表・分担者は各自研究報告を行っており、その内のいくつかは論文として結実している。 このようにそれぞれの研究分野においても訳注作業を通じて得られた研究結果が還元されており、本研究計画を進めていく上で一定の知見を得ることができたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、道教史の再構築の可能性を提示することを目標とし、その基礎作業として任継愈主編『中国道教史』の精確な訳注作成を柱の一つにすえている。 平成24年度の当初の計画では、中国社会科学院を訪問することで『中国道教史』執筆陣と交流の場をもうけ、訳注作成に関する打ち合わせを行う予定であった。中でも主要な目的は訳注作成における版権の問題の解決であった。しかし、これについては研究責任者による事前の社会科学院訪問により解決され、またその際、同時に執筆者陣との翻訳に関する協議が行われ、研究計画の進展に大きく寄与することとなった。 また底本を含む各版本の電子化や関連情報のデータ化が行われ、訳注を進めていくにあたっての準備体制はある程度整えられた。これを受け、各担当者はそれぞれ順調に訳注作業を開始することができたと同時に、この訳注作業を通じて得られた知見はさらにそれぞれの研究領域へと還元され、論文や研究報告のかたちとなって結実することとなった。こうしたことから24年度の研究計画は一定の進展があったと認められる。 その一方で、当初の研究計画では、平成24年度中に訳注の作成と平行して研究例会において時代分野・領域ごとの問題点を検討する予定であった。しかし、平成24年度中にはそこまではいたらず、各自が下訳を作成している段階であり、また訳注稿についても全員による検討や修訂にまではいたっていない。また中国社会科学院訪問についても実現できなかったことから、版権の問題を除いては中国の研究者たちの道教研究に対する問題意識や最新の情報の共有、また中国の最新の研究状況の把握という点で当初の計画と較べ、若干の課題が残った。 したがって本研究の「現在までの達成度」は、「(3)やや遅れている」と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究が、任継愈主編『中国道教史』の訳注稿作成を中心として新たな道教史の再構築の可能性を提示することを目標とする点に変更はなく、基本的には今後も当初の計画に沿って研究を進めていく予定である。 具体的な方策としては、最終年度に行うシンポジウムを見据え、訳注稿作成を継続して進めていくのにあわせて、平成25年度からはそこに見られる各時代や領域の研究成果の検証と問題点の整理・検討の実施を計画している。ただしこれは訳注の進行状況にも左右されるので、時代順に行うのではなく、比較的作業が進んでいる領域から順次、実施していく予定である。この際、研究代表者の松下が勤務する皇學館大学、および分担者が集中する東京地区において分担者の勤務校で研究会を開催することを計画している。 また訳注稿作成にあたっては、そこに用いられている資料を網羅的に追跡調査する必要性があり、平成25年度以降も引き続き、関係資料・書籍の調査・収集・購入を行う。なお、この調査の中には道教文献をはじめとする関係資料を有する大学や、その他の施設における調査の可能性も含まれる。 その他、版権の問題は解決しているとはいえ、中国社会科学院訪問による『中国道教史』執筆陣との交流・協議が本年度中に実施できなかったことをふまえ、中国の研究者たちの道教研究の現況や最新情報の収集などを進める必要からも、その実現に向けて中国側と折衝を行う予定である。 上記の方策をふまえ、最終年度に開催を予定しているシンポジウムおよび『中国道教史』訳注の完成へとつなげる計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「次年度使用額(B-A)」で差額が生じた主要な原因は、研究代表者である松下により先行して任継愈主編『中国道教史』の版権を獲得することができたため、本年度、改めて中国社会科学院を訪問することを控えたことによるものである。 ただし当初、計画されていた中国社会科学院訪問による『中国道教史』執筆陣との交流は、版権の問題以外にも、中国の研究者との協議を通じ、中国の道教研究の情報収集や道教史に対する中国人研究者の問題意識の調査などの実施を目的としている。これは道教史の再構築を企図するにあたり、日本と中国の道教研究における差異や視点の違い、それぞれの研究手法の持つ限界といったさまざまな問題点を浮き上がらせるという可能性を持ち、重要な意義を有すると考えられる。本研究の目的は『中国道教史』の訳注作業を中心として道教史の再構築の可能性を提示することにあり、そうした本研究の目的からいっても『中国道教史』執筆陣との交流・協議をすすめる必要性は依然として減じていない。 こうしたことから平成25年度には改めて上記の計画目標を遂行できるよう中国社会科学院や『中国道教史』の執筆者陣との折衝を行う。ただし、これについては相手側の都合もあることから、実現に向けた可能な形を模索した上で『中国道教史』執筆者陣との交流・協議の場を設けることを目指す。 以上、「次年度使用額(B-A)」で生じた差額は平成25年度の助成金とあわせて、上記の中国人研究者との交流・協議に関係する費用、また当初の計画に基づく訳注作成および研究会開催の関係費用に当てる予定である。具体的には、平成24年度分の社会科学院訪問費用をそれぞれ計上しているほか、訳注作成および研究会開催の関係費用は当初の計画通りの額を計上している。
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Research Products
(15 results)
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[Book] 汲古書院2013
Author(s)
山田俊
Total Pages
278
Publisher
「朱子語類」訳注 巻百二十五 老氏[荘列 附]
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[Book] 八木書店2012
Author(s)
高橋忠彦・高橋久子・古辞書研究会編
Total Pages
344
Publisher
尊経閣文庫本 桂川地蔵記 影印・訳注・索引
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