2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24520074
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Research Institution | University of KinDAI Himeji |
Principal Investigator |
和田 幸司 近大姫路大学, 教育学部, 教授 (40572607)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 浄土真宗 / 近世被差別民 / 皮多村 / 部落寺院 / 信仰 / 身分上昇 |
Outline of Annual Research Achievements |
渡辺村真宗寺院の身分上昇志向とその葛藤を明らかにした。近世における渡辺村門徒の身分上昇志向は「類村類寺」とする皮多村・部落寺院間での突出した地位確保(身分内上昇)であった。この身分上昇を実現するためには、可視的な身分標識が必要であった。宗教的儀式において〈集団〉を代表する住持の衣体や着座位置は実効的な〈集団〉の身分を顕現するものである。よって、渡辺村門徒は「浅黄唐草緞子五条袈裟」「色衣」などの特別な法衣の御免により、部落寺院間での特別な地位を得た。しかし、渡辺村独自の住持の衣体が「類村」(同身分集団間)によって追随されると、さらに身分が明確となる別格の着座位置を望む。このような身分上昇志向の背景には、一般寺院の僧階から身分外とされた部落寺院の教団内の位置づけ、ひいては、近世社会での位置づけが存在したことを指摘した。また、渡辺村の身分上昇は皮多村・部落寺院間での突出した地位確保から明治維新期の身分間上昇志向へと推移したことを指摘した。 次に、渡辺村門徒からの懇志や労働といった「御用」と西本願寺からの宗教的下付物・身分的表象物の「御免」との関係は、相互に利益と承認を与え合う互恵的な関係があったことを明らかにした。この互恵的関係は,本寺(西本願寺)にとっては宗教的権威としての支配構造であることは言うまでもないが,政務遂行上の重要な経済的・物質的基盤でもあった。末寺(渡辺村真宗寺院)にとっては西本願寺教団内での地位の公定を図るという側面があった。この公定は常に揺れ動き、渡辺村と西本願寺の間での微妙なバランス関係が存在したことを指摘した。
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Research Products
(3 results)