2014 Fiscal Year Research-status Report
近現代日本の民間精神療法に関する宗教史的考究 身体と社会の観点から
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24520075
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Research Institution | Maizuru National College of Technology |
Principal Investigator |
吉永 進一 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90271600)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 直子 早稲田大学, 付置研究所, その他 (10608433)
塚田 穂高 國學院大學, その他部局等, 助教 (40585395)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 精神療法 / 霊術 / 太霊道 / レイキヒーリング / スピリチュアル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は二度の研究会を開催、学会でのパネルディスカッション、単行本、冊子、英語論集、一般向け講演を行った。第1回研究会は、8月24日、25日に岐阜で調査を兼ねて開催し、研究会では宗教学会に向けての予備的パネルを実施、調査では岐阜県内の太霊道本部跡地などの精神療法関係の史跡を訪問した。、神国教本部、桑原俊郎関連の寺院を訪問した。9月14日には同志社大学で開催された日本宗教学会第73回学術大会においてパネル「近代日本の修養・精神療法・新宗教における身体論と国家論」を開催。研究代表者がコメンテータ・司会を務め、野村英登、栗田英彦、塚田穂高、永岡崇の発表があり、精神療法などに見られる国家論の系譜を江戸期儒教から第二次大戦前まで辿り、身体論との関連について一定の見通しを得ることができた。平成27年3月13日には東京大学本郷キャンパスにて「霊妙なエネルギーたち――科学史と宗教社会学の視点から」と題する研究会を開催、平野直子より臼井霊気療法に関する発表、中尾麻伊香よりラジウムとスピリチュアリズムの精神史に関する発表が行われ、精妙なる流体概念についての、医学史、科学史、社会史などの方面からの議論を重ねることができた。本年度は、二度の研究会で、政治思想や科学と精神療法との関連についての学際的な議論によって、広い視野からのアプローチを進めた。研究代表、吉永進一は、岐阜県博物館における特別展「奇なるものへの挑戦」を監修し、8月24日に「催眠術から霊術へ」と題する講演を行った。これによって、太霊道などの精神療法運動について、一般に向けて研究成果の一部を伝えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、理論的な面での収穫が二つあった。ひとつは、宗教学会におけるパネルにおいて国家、政治と修養、精神療法、新宗教の関係について議論を行った。その結果、井上哲次郎が陽明学の身体技法を排除して、近代的な道徳実践を強調したこと、そうした国民道徳における「行」の不在が、その後の佐藤通次のような行とつながった身体=国家論の興隆を招いたのであり、三井甲之がお手当て療治と国家論を結びつけたのもこの系譜に位置すること、そのような知識人宗教としての修養と対立するように見える大本教の鎮魂帰神技法でさえ身体性を統御し抑圧する性格もあったことなど、近世から近代にかけての心身技法にまつわる政治的思想の連続と断絶についての知見を得ることができた。第二には、レイキヒーリングと科学史におけるラジウム言説を照合することによって、宗教史と科学史、医学史の交差する領域が明らかになったことである。民間精神療法はその宇宙観の根本にある流体概念に科学的外貌を与える場合があったことは逆に、岡田虎二郎や三井甲之のように理論的説明を拒否する心身技法の意味を照射することになろう。論文では吉永による精神療法についての論文Birth of Japanese Mind Cureを含む英語論文集Religion and psychotherapy in modern Japan (Routledge, 2015)を出版できたことで、海外との研究交流をさらに進める足掛かりを得た。資料面では、太霊道のデジタルデータ公刊がいささか遅れており、民間精神療法についての新資料を得ることもできなかったが、すでに入手した分についての整理を鋭意行っているので最終の報告書発行までには公刊できよう。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、国内外での研究会を予定している。国内では、9月に2014年度宗教学会パネルを拡大したシンポジウム開催、12月に民間精神療法を含む心身技法の近代化に関する国際ワークショップを予定している。国外では、4月にカリフォルニア大サンタバーバラ校でのシンポジウム、8月にドイツ、エアフルトで開催される国際宗教学宗教史学会で、日本、アメリカ、カナダの研究者によるreiki healingと心身技法をテーマにしたパネルを予定している。これによって日本の民間精神療法が近代社会におけるグローバルな思想と技法の交流の中で発生し、アメリカを経ていかにreiki healingという世界的な運動になったのかを検証できよう。また、今後、心身技法の近代化、国際化というテーマについての国際研究を進めていく上でのネットワーク作りも期待できる。資料面では、デジタル化された太霊道資料の目録化を行う。最終的にはデジタルデータつきの報告書の作成を予定している。
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Causes of Carryover |
2015年度国際学会出席旅費を残すため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度国際宗教学宗教史学会への研究分担者2名の参加旅費と研究協力者の旅費支援。
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Research Products
(11 results)