2014 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀日欧米比較による「日本美術史」形成史の研究
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24520103
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
鈴木 廣之 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (00132704)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日本美術史 / フェノロサ / アーネスト・サトウ / ウィリアム・アンダーソン / アンリ・チェルヌスキー / エミール・ギメ / チャールズ・フリーア |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度(2014)は、他の欧米との比較のためドイツ語圏における草創期の日本美術収集についてベルリン東アジア美術館、ウィーンの応用美術博物館で実地調査を、次いで未調査だったフィラデルフィア美術館とフリーア美術館でアーネスト・フェノロサ(1853~1908)関連資料の調査を実施した。また、成果公表のため冊子体の研究成果報告書を作成して国内外の関連諸機関の研究者に送付した。 本研究では、当初の計画どおり在米のフェノロサ資料の網羅的調査を実施するとともに、フランスの日本美術収集家エミール・ギメ(1836~1918)らの関連資料の現地調査、および英国外交官で初期ジャパノロジストであるアーネスト・サトウ(1843~1929)が旅行を試みた奈良を中心とする地域の現地調査を行い、多くの知見を得た。とくに、英国の収集家ウィリアム・アンダーソン(1842~1900)とサトウとが関わった大英博物館所蔵の法隆寺金堂壁画九号壁「弥勒浄土」模写(桜井香雲筆)の制作年代を示す新資料の発見など、両者の協業による美術史研究を解明する具体的な成果をあげることができた。 以上、明治前半期(1870~80年代)における滞日欧米人の活動に注目することを特色とする本研究では、彼らの収集、研究活動が日本美術史の形成過程に果たした一定の役割を明らかにすることができた。また、明治期に受容された「美術」概念を土台にした「日本美術史」の形成過程において、その揺籃期ともいえる明治前半期の重要性を認識し、「日本美術史」形成過程の実態解明に見とおしをつけることができた。これによって1900年の官製『Histoire du l’art du Japon』(稿本日本帝国美術略史)を発展的に継承した日本美術史の体系の淵源を明らかにし、今後の日本美術史の枠組の批判的継承とグローバル化に応じる議論の土台を提供することが期待される。
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Research Products
(7 results)