2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520110
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
要 真理子 大阪大学, コミュニケーションデザイン・センター, 招へい准教授 (40420426)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大久保 恭子 関西外国語大学, 国際言語学部, 教授 (70293991)
前田 茂 京都精華大学, 人文学部, 准教授 (80368042)
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Keywords | 英国 / 児童美術教育 / 自然観 / プリミティヴィズム / モダニズム / 社会進化論 / 創造性 / モダンアート |
Research Abstract |
本年度は前年度に引き続き資料収集、現地調査を中心に活動を行った。具体的には、研究代表者がおよそ4ヶ月間、英国に滞在し、ノリッジ(イースト・アングリア大学)を拠点としてイースト・アングリア大学附属図書館、コートールド研究所附属図書館で、国内では入手不可能な先行研究を含む関連するアーカイブズ資料の閲覧および手書きによる転記、複写等を行った。また、分担者・前田茂とともに、7月にはポーランド・クラクフで開催された第19回国際美学会議、8月には英国・ブライトンで開催された第15回モダニズム学会に参加し、国際美学会では口頭発表を行った。9月には、イースト・アングリア大学で代表者と分担者・前田は共同で招待講演を依頼され、モダニズムに見出せる自然観の特徴について講義した。研究課題に関する議論の場を海外で、わけても英国で設けることができたことは、本課題にとって大いに意義のあることである。 その一方で、研究分担者・大久保恭子は、夏にロンドンとパリにて調査を行い、世紀転換期のプリミティヴ概念をロンドンとパリの芸術的様相と言説を基に分析に着手し、とりわけ19世紀後半からの世界博覧会の開催や民族学博物館の開設という社会現象を取り上げ、それらを取り巻くプリミティヴ概念の変容と当時の児童教育概念のリンクを考察した。この論考は、近く刊行される『西洋近代の都市と芸術』シリーズ(竹林舎)の『ロンドン』に所収される予定である。 代表者と分担者は、国内の小規模な研究会(10月21日、3月29日に報告会)だけでなく、海外滞在時にも意見交換する機会(7月23、24日、8月18日、9月4日)をもち、相互の進捗状況を報告しつつ資料整理、情報共有に務めた。年度後半は、収集した資料の読解に専念し、現在も継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究目的がおおむね達成できた要因としては、研究代表者が年度前半およそ4ヶ月間、英国に滞在したことにより、現地での資料調査が捗ったこと、海外の研究機関所属の研究者と交流する機会を得て示唆に富む助言を頻繁に得られたことが挙げられる。加えて、代表者が英国滞在中はSkype、Facetime等の電子ツールを用いつつ、研究従事者3名が前年度に増して情報交換を密に行ったことで、進捗状況を相互に把握し効率よく分担課題を推進することができた。具体的な達成状況に関しては、分担者・大久保が自然観と「プリミティヴ」概念に関する調査内容の一部を今年度出版予定の書籍に寄稿した。その一方で、分担者・前田が美術教育の実践的テキスト『イメージと意味の本』の翻訳書を出版した。また、平成25年9月に代表者と分担者・前田が近代における自然観の変容とその特徴について、イースト・アングリア大学で講演を行った。この講演内容を基礎として新たな知見が加えられ、平成26年7月に開催されるアヴェイロ大学での口頭発表(要・前田)が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成26年度は、収集資料の読解を行うとともに、研究従事者間でこれまで獲得した知見の交換と研究成果の公開に重点を置く。具体的には、研究代表者が7月にアヴェイロ大学(ポルトガル)で行われる第9回国際デザイン学・デザイン史会議に参加し、分担者前田との共著論文の口頭発表を行う。本会議は、平成24年度に代表者と前田が参加した同大学主催の児童描画教育に関する国際会議に関連するものである。また、10月に大阪大学(あるいは京都精華大学)において、児童美術教育と自然観の変容に関する公開研究会を実施する。本研究会には、研究従事者3名と海外からゲスト1名が参加する予定であるが、さらに国内研究者1名の招へいを検討している。 研究調査に関しては、研究代表者が、夏期にInstitute of Education, London University (IOE)、University of Leeds、冬期にニューヨーク近代美術館(MoMA)等のアーカイブで補足調査を行う。短期間で遂行するために、可能であれば、他2名の研究従事者も調査に同行し作業を分担する。そのうえで、資料読解を通じて、代表者は、英国19世紀後半から20世紀初頭の美術批評と当時の美術教育思想の制度的・人的・思想的連関を、分担者・前田は、英国19世紀の教育思想全体における美術(創作)の位置づけ(英国とヨーロッパ諸国、米国との影響関係も含む)を明らかにする。その一方で、分担者・大久保は、前年度からの課題である19世紀後半の児童美術と原始美術との類似性に言及した文献・資料を検証し、現代の美術教育思想との比較を試みる。一連の研究成果の公開は、前述の学会・研究会等の発表や招へい講演のみならず、将来的には冊子体の論文集の出版を視野に入れ、現在関係者の間で協議中である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の未使用額(218,864円)は、平成25年度に予定されていた研究会を研究課題従事者3名に制限した小規模なものに留めたこと、研究代表者の海外調査に関わる費用を可能な限り抑えたこと、さらには、一部研究機関での調査が最終年度へと延期されたために生じたことによる。 これらの未使用額は、平成26年10月に開催を予定している公開研究会のための必要経費、ならびに、最終年度の研究代表者の海外調査費用の一部に繰り込む予定である。
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Research Products
(11 results)