2012 Fiscal Year Research-status Report
1900年前後のベルリンにおける日本伝統音楽の受容の研究
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24520158
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
泉 健 和歌山大学, 教育学部, 教授 (80107995)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ベルリン / “Ost=Asien” / 川上貞奴 / 異文化交流 / 受容 / 玉井喜作 / パリ / シェーンベルク |
Research Abstract |
平成24年度の研究成果として、論文「ベルリンの川上貞奴(1901年)」『和歌山大学教育学部紀要 人文科学』(第63集,2013年2月刊,pp.69-84.単著)を発表した。 本研究の目的は19世紀末から20世紀初頭のベルリンで発行されたドイツ語の月刊雑誌“Ost=Asien”の中の論文を読み解き、当時のベルリンにおける日本伝統音楽の受容の様相とベルリン在住の日本人の西洋音楽受容の様相を解明していこうとするものである。 平成24年度は、まずこの雑誌の中から日本の伝統音楽と日本の演劇に関する論文を調査し、その中から特に川上貞奴一座のベルリンとパリでの公演に焦点を絞り、それらを論じた記事や論文を順次翻訳していった。また“Ost=Asien”の毎号の雑報欄にも、多くの関連する記事を見つけることができた。 その結果、それらを集約して上記の論文「ベルリンの川上貞奴(1901年)」を書くことができた。この論文の中では一座のパリ公演(1900年)とベルリン公演(1901年)の様子を詳しく解明することができた。特にパリとベルリンにおける彼らの高い評価と、帰国後の日本における低い評価の相違の背後にある歴史的状況、演劇史的状況を詳しく分析し、パリとベルリンにおける高い評価の理由を解明できたことは意義のあることと思われる。 またこの研究をしていく過程で、川上貞奴と作曲家シェーンベルク,A.が、1901年12月に同じブンテ劇場で公演していたことがわかった。これは西洋音楽史の研究においても意義深いことと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は上記のように、19世紀末から20世紀初頭のベルリンで発行されたドイツ語の月刊雑誌“Ost=Asien”の中の論文を読み解き、当時のベルリンにおける日本伝統音楽の受容の様相とベルリン在住の日本人の西洋音楽受容の様相を解明していこうとするものである。 平成24年度は、まずこの雑誌の中から日本の伝統音楽と日本の演劇に関する論文を調査し、それは完了した。そしてその中から特に川上貞奴一座のベルリンとパリでの公演に焦点を絞り、その研究成果を上記のように「ベルリンの川上貞奴(1901年)」として発表することができたので、おおむね順調に研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のような経緯を経て、“Ost=Asien”の中から集めた日本の伝統音楽と日本の演劇に関する論文の中から、今後は当時西ヨーロッパで評判であったオペレッタ「GEISYA」に関係する諸論文やエッセイを翻訳していき、それらをもとにして、当時そのオペレッタが西欧でもてはやされた状況をたどり、その背景などを考察していきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
529円は、前年度(H24)の予算額200,000円から、実際に使用した199,471円を引いた残額である。 次年度の研究費は、本研究の目的、すなわち、19世紀末から20世紀初頭のベルリンにおける日本伝統音楽の受容の様相とベルリン在住の日本人の西洋音楽受容の様相を解明していくために必要な書籍や、それに関連するCDやDVDなどを購入することに使用する予定である。
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Research Products
(1 results)