2013 Fiscal Year Research-status Report
1900年前後のベルリンにおける日本伝統音楽の受容の研究
Project/Area Number |
24520158
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
泉 健 和歌山大学, 教育学部, 教授 (80107995)
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Keywords | ベルリン / “Ost=Asien” / 烏森芸者 / 藤代禎助 / オペレッタ / ゲイシャ / グラマツキー,A. / 異文化受容 |
Research Abstract |
平成25年度の研究成果として、論文「藤代禎助「オペレッタ;ゲイシャ」(1901年)とベルリンの烏森芸者」『和歌山大学教育学部紀要 人文科学』(第64集,2014年2月刊,pp.65-80.単著)を発表した。 本研究の目的は19世紀末から20世紀初頭のベルリンで発行されたドイツ語の月刊雑誌“Ost=Asien”の中の論文を読み解き、当時のベルリンにおける日本伝統音楽の受容の様相とベルリン在住の日本人の西洋音楽受容の様相を解明していこうとするものである。 平成25年度は、この雑誌の中から日本の伝統音楽と日本の演劇に関する論文を調査し、その中から烏森芸者のパリとベルリンでの公演に焦点を絞り、特にベルリンにおいて一行がオペレッタ「ゲイシャ」の公演に参加したことを論じた記事を順次翻訳していった。また“Ost=Asien”に掲載された藤代禎助のオペレッタ「ゲイシャ」に対する批評を翻訳することにより、当時ベルリンにいた日本人が、その公演をどのように受容したかを明らかにした。 その結果、それらを集約して上記の論文「藤代禎助「オペレッタ;ゲイシャ」(1901年)とベルリンの烏森芸者」を書くことができた。この論文の中では一座のベルリン公演(1901年)の様子を詳しく解明することができた。またベルリンでの公演はドイツ人には好評裏の内に迎えられたが、藤代禎助の批評を読むと、当時ベルリンに居た日本人には日本の風俗習慣が非常に誤解されている点が目障りとなっていたことがわかる。 またこの研究をしていく過程で、グラマツキー,A.の「日本の演劇『寺子屋』と『朝顔』」も翻訳し、当時縮緬本という形で、日本の歌舞伎がドイツ語圏に紹介されていたこともわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は上記のように、19世紀末から20世紀初頭のベルリンで発行されたドイツ語の月刊雑誌“Ost=Asien”の中の論文を読み解き、当時のベルリンにおける日本伝統音楽の受容の様相とベルリン在住の日本人の西洋音楽受容の様相を解明していこうとするも のである。 平成24年度には、ずこの雑誌の中から日本の伝統音楽と日本の演劇に関する論文を調査した。そして平成24年度にはその中から特に川上貞奴一座のパリとベルリンでの公演に焦点を絞り、その研究成果を「ベルリンの川上貞奴(1901年)」として発表することができた。そして平成25年度には、上記のように烏森芸者のベルリン公演に焦点を絞り、ベルリンでのドイツ人による受容と、日本人藤代禎助の受容の相違点を明らかにし、その研究成果を「藤代禎助「オペレッタ;ゲイシャ」(1901年)とベルリンの烏森芸者」として公刊することができた。 以上のような経緯から、本研究はおおむね順調に研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
“Ost=Asien”の中から集めた日本の伝統音楽と日本の演劇に関する論文の中から、上記のような経緯を経て、川上貞奴一座と烏森芸者一行の足跡及び公演の状況は分析することができた。今後はそれ以外の日本の伝統音楽と日本の演劇に関する論文などにも目を通し、それらを総合して、19世紀から20世紀の世紀転換期のベルリンにおける日本の伝統音楽と日本の演劇に関する受容の様相をまとめていきたい。 すなわちドイツ人がそれらをどのように受容していったかということと、当時ベルリンに居た日本の留学生達が、同じくそれらをどのように受容していったかという両面を、可能な限り多くの資料に目を通してまとめていきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
科研費の研究計画調書に記載した設備備品、消耗品費の利用計画に沿って、適切に当該年度の予算を使用していったが、最後に69円が余り、この値段で購入できる適切な設備備品、消耗品が無かったため、この残額が生じた。 科研費の研究計画調書に記載した設備備品、消耗品費の利用計画に沿って、昨年度の残額69円と今年度の予算を合計した額を、研究計画に沿って適切に使用していく予定である。
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